改革、異変?








―――――ギルドマスター監視用分身体side




「お疲れ様ですギルド長」



「……つっかれたぁ…」



新しい保存食が出来た時に、一番保存食を欲しがるのは、誰か…それは冒険者である。



冒険者は、ダンジョンに何か月と潜りもするし、色んな街を旅して、様々な場所で野営もする。



そんな冒険者に保存食を買ってもらえるように、冒険者ギルドで、保存食の販売をお願いしようと、リネットと話し合って決まったので、その話をギルドマスターに伝え、許可を貰ったのだが…







「…書類…多いですね」



「多いどころじゃねぇよ…なんだってこんなに仕事が重なってるんだよ…」




実は、今の冒険者ギルドは、この4か月間で経験したこともないくらい忙しくなっていた。



「…街道に魔物の出現が多すぎるんだよ…なんだってこんなに多いんだ?繁殖期か?」



「討伐依頼がこの1か月で倍以上には増えてますからねぇ…」



魔物の繁殖期は街道に魔物が良く出てくるのかは知らないが、ここ最近の魔物の出現による討伐依頼の書類と新しい保存食の販売許可の書類などが、見事にブッキングしてしまい、ギルドマスターはここ最近はずっと疲れた顔をしている。





「あ”ぁ”ぁ”ぁぁ……保存食の件…ライアに言われた通り、後に回してもらえばよかったかも…」



「受付で、すごい量の魔物の報告が上がっていたので、後に回してもいいとは伝えたじゃないですか?」



「…あの保存食を食えば、すぐにでも許可を出したかったんだよ…。

オレもダンジョンに潜ったこともあるし、王都からここまでの間の旅は1か月はかかるからな…その間の食料なんかでも、あったら助かると思ったんだよ」



ギルドマスターはダンジョンで冒険者たちが質素な食事をしているのを知っている為、早く普及させてあげたかったらしい。



ギルドマスターは、疲れた顔をしながらそう言いながらも、すぐに仕事に取り掛かった事にあまり後悔をしているようには見えなかった。






「しかし、なんでこんなに魔物が出て来るんだろうな?」



「…一応、色んな冒険者の方が討伐報告に来た際に、色々と見て変に感じた事はないか聞いてみているのですが…」



「なにもない…か…」



調べてくれた冒険者も、依頼のついでに何かないか見て来てくれる程度なので、何かわかることがあったのかもしれないが、正式な調査依頼ではない為、世間話が主だ。



冒険者達も最近は討伐依頼が多いのは感じているが、依頼があること自体は冒険者にとっては仕事があるのと同義なので、それほど気にしてはいないみたいだ。




「うーん…さすがに調査依頼を出すか…?

何か異常があって、後手に回るのも嫌だしな…」



「う~ん…あ…」



そこでライアは、最近聞いていた一つの異常を思い出す。



(確か…クスト達の神樹の森で予想外の群れに遭遇したって言ってたよね…?)



ライアは丁度1か月前に出会ったエルフの兄妹から聞いた話を思い出し、魔物がこんなに現れているのが、神樹の森方面から来た魔物なのでは?と考える。



(時期的には丁度だけど、確証はないな…)



この考えは、クスト達を襲った魔物の群れが異常の一部と仮定した話だ。

実際にはたまたま、大きい群れに襲撃されたのかもしれない。



「なんだ?いきなり考え込んで」



「すいませんギルド長…少しだけ気になっている場所があるので、調査依頼となる前に、アインス達で確かめて来てもいいですか?」



たまたまか異常か、何とも言えない所ではあったが、何も原因を探す糸口が無いので、見つかれば儲けものの精神で、ギルドマスターに提案する。



「それは、こっちも仕事として処理しなくて助かるが…ちなみにどこを調べようって言うんだ?」



「神樹の森周辺です」



ギルドマスターには、特にクスト達の事を話してはいなかったので、色々とクスト達の事を説明するのは時間が掛かったが、ライアがなぜ神樹の森が気になるのかは伝えた。






「…ふむ…なんか知らんうちに、おめぇがエルフと住んでるのは良いんだが…なんでリネットには先に話してて、オレには内緒にしてんだコラ」



ギルドマスターは、ほんの少しのジェラシーなのか、面白そうな事を黙っていて、怒っているのか分からないが、ライアにガンを飛ばしてくる。



「えぇと…最初はエルフの立場とかわからなくて、責任のあるギルド長より、自分のしたいことしているリネットさんに聞いた方が安全かなって思って聞きましたけど…

黙っていたのは単純に話す機会が無かったのと、言うのを忘れてましたね」



「てめぇこのやろぅ」




事実、仕事で忙しいギルドマスターに話す機会は少なかったし、ヤヤ村ではクスト達の事や幻魔法の練習、工房ではリネットと魔道具の発明に忙しく、話さなきゃという気持ちが一切生まれず、そのまま忘れていた。




「……はぁ…まぁ事情は分かった…ひとまず神樹の森方面の調査はライアのアインス組に任せる…何かあったらすぐ知らせてくれ」




「了解です!…というか神樹の森って勝手に入っていいんですか?神樹に近づいたらエルフ達にキレられると聞いたんですが」



ラルフの話だと神樹を守っているエルフは神経質で、神樹に害がありそうな魔物などを狩りまくり、周辺の森の魔物を激減させるほどだと聞いた。




「あぁ…一応、神樹に近づいて行くとバリバリに警戒したエルフが出迎えて来るが、言う事を聞いて道を引き返せば、特に襲われたりはしないはずだ。

…100年前の事で、交流は無いが人間と敵対もする気はないから、こちらから攻撃しない限りは特に問題なく周辺の調査を行えるはずだ」



「…そうだったんですね?わかりました」



神樹の森に行く為の許可証みたいなのは無いらしく、襲われることもないようなので、ライアはギルドマスターに返事を返す。



「ひとまず、明日の朝にでも神樹の森に向かってみますね?」



「頼んだ」










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