改革、亜人の歴史
「プエリは、卵割るの上手ねぇ~」
「えへへ~」
キッチンではかぁさんとプエリが料理の準備をしており。
「ゴートンさん、野菜を運び終わった。次は何をしたらいい?」
「おぉ早かったな!他の事はもう終わったから、少し待っていてくれ!片付けをしたら、家に帰って昼飯にしよう」
畑仕事を体力が戻ってから、すぐに家の事を手伝いたいと言ったクストが手伝いをしている。
クスト達と出会い、一緒に住むようになってから、3日が経っており、プエリは家の家事を、クストは畑仕事を手伝うようになっていた。
「クストはホントに体は大丈夫なの?病み上がりで具合が悪くなったりしてない?」
「大丈夫だよライアさん。今の所、体調が悪いとかも無いし、何もしないで休んでるのも嫌だったから」
畑にいるゼクスからクストの体調を心配し、声を掛けるが今の所、元気そうである。
「おーい!クストー!家に戻るぞー!」
「はーい!…えっと…ここにいるライアさんは、ご飯を食べないで働くんでしたよね?…大丈夫なんですか?」
ゼクス達分身体の事は、色々教えたのだが、そもそもエルフ達にスキルという概念があまり浸透していないらしく、どういう物かよくわかっていないらしい。
「本体のライアがご飯を食べてるから、それは大丈夫だよ!…ほら、とぉさんが待ってるから行ってきな?」
クストを見送りながら、この2日間で分かったエルフの事情を色々と思い出す。
―――― 一昨日前
『という訳で、エルフの立ち位置とか、エルフの事を国ではどう捉えているのか詳しく知りたくて』
『エルフですか…中々に珍しい事態ですね』
クストたちを保護した次の日に、国での扱いや、まだ亜人種狩りなどが行われているのか、どうかの情報が知りたくて、貴族の事情も色々知っているし、ワイバーンの魔石の件で、色々と秘密を明かしているリネットに相談してみた。
『エルフ…亜人種が魔物として扱われずに“亜人”と人間のくくりになったのは、実はまだ100年前ほどなのですよ』
『…そんなに最近だったんですか?』
話を聞くと100年前に1人の人間がドワーフと友好を結び、それを機に亜人種たちが人間に近い種族なのではないか?と言われるようになり、亜人狩りが禁止されたらしい。
『その人間のおかげだったんですね?』
『その人間は最初、ドワーフを奴隷として買っていて、ちょうど奴隷解放運動の時期だったのです。
奴隷時代からも話が合う友人だったらしいので、ついでに“亜人種たちにも自由を”と唱えたら、現状のように亜人種と言われるようになったのです』
『そうなんですね……すいません、奴隷解放運動ってなんですか?』
リネットは「これは学院で学ぶことだから、ライアは知らなかったのですね?」と奴隷解放運動の話を聞かせてくれた。
リネットの話では、昔は奴隷制度ももっと非道で、亜人種や顔の良い娘などを不正に捕え、奴隷にしていたらしく、とても治安の悪い国だったらしい。
『昔はステータスカードがまだ出来ていなかった時代なので、称号の【人殺し】で悪人なのかどうかの判別も出来なかったわけですから』
『なるほど…』
そんな状態の国を変えたのがステータスカードの発明で、悪人の発見と無実の奴隷たちの判別が出来るようになったらしい。
『それからの奴隷は犯罪奴隷と借金奴隷の二通りのみに出来た事から、その改革を“奴隷解放運動”と歴史では言われているのです。』
と、エルフの立場をリネットに教えて貰ったりした。
『そういえば、クストはスキルに関して知らない様子でしたけど、亜人種はスキルを持たないんですか?』
『さすがに、エルフの事情は分からないですが、ステータスカードを発明するまで、我々人間もスキルの事は“たまに変な力が使える力”と、あやふやな物だったらしいので、魔法が使えるのが当たり前な亜人種は知らないのではないのですかね?
…ステータスカードもまだ人間とドワーフしか所持していないはずです』
との事で、クストたちはスキルなどを知らないで、体内にある魔石を行使した魔法しか知らないみたいだ。
リネットには色々聞いて感謝を伝えつつ、そのうちリールトンの街に連れていく機会があったりしたら、紹介すると言って、話が終わった。
「ふぅぅ…クストたちのスキルを知る為には、落ち着いたら、村長のとこに連れていくしかないかな?」
一応ヤヤ村で、エルフの事を知っているのは両親とカイン、後は直接は会っていないが、村長にも伝えている為、今度顔見せがてら、ステータスカードを見せてもらおう。と考えるライアであった。
――――― 回想終わり
「おいしぃー」
「今日はプエリも頑張ってお手伝いしたのよ?たくさん食べてね?」
「…いただきます」
今は、畑から戻って来たクストととぉさん達と一緒に、5人で昼食を取っている。
「お昼からは、クストの体調が良いのなら、村長の所に顔見せして来ようと思うけど、クストとプエリちゃんも大丈夫そう?」
「うん!」「大丈夫」
プエリはあの大泣きをしてから、つきものが落ちたのか、子供らしい笑顔と言動が増え、元気いっぱいに返事をする。
クストも、もうあまり人間を警戒していないのか、素直に返事をする。
後からそのことを聞いてみたら、「村で、人間は悪い生き物って教わって生きてきたけど、実際は違ったし、どっちかというと、村の連中の方が僕らを苦しめたんだ。色々考えは変わるよ」と、人間=ライア達の構図と、プエリを迫害した村のエルフに対しての怒りが出てきたらしい。
「それじゃご飯を食べたら、村長の所に行こうか」
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