改革、エルフの兄妹2







「それじゃ、まずはこの傷薬を飲んで、傷を治してから、村に急ごう」



「……傷薬を飲むのか?……んぐっ」



ライアは兄の傷を治すため、先ほどの傷薬を渡すと、傷薬を飲むというのが珍しいのか、心配そうな顔をしつつ、言われた通りに飲んでくれる。




「……え?…傷が…治った?」



「にぃちゃんのキズがきえたよ!!」



≪錬金術≫で作った傷薬の効果は一目瞭然で、腕にあった赤黒くなっていた傷跡が綺麗に塞がる。




「よし、それじゃ後は毒だね…2人とも俺が負ぶって行くから、背中に乗ってくれるか?」



2人が傷薬に驚いているのを見て、少しは信用してくれるかな?と考えながら、2人を背負って村まで急ぐ。



「………」



「ん?……」



村に向かう際に、兄を背に背負うと、ずっと張っていた気が緩んだのか、すぐに兄が気絶する。



(これは…急いだ方が良いみたいだね…体も熱で暑いし、背負うとわかるけど、汗の量も尋常じゃない…ずっと俺を警戒して、気張ってたんだな…)



ライアはそう認識し、村へ向かう足を出来るだけ早めた。











――――――――――――

――――――――――

―――――――










「よし…ひとまず、これで毒はなくなるだろう…後は、この子の体力が回復すれば、もう大丈夫だ!」



「ありがとう、とぉさん、助かったよ!」



村に着いて、カインに軽く事情を話しつつ、あまり他の人に知られない方が良いと思って、エルフたちを急いで家に運び込んだ。



そして、仕事中だった、とぉさんとかぁさんには、エルフ達を連れてくる前に事情は話していたので、治療を手伝ってくれた。



「なに…とぉさんはエルフとかは良くはわからんが、こんな小さい子供なんだ、助けるに決まっているだろ?」



「そっか…ちなみにとぉさんはエルフって知ってた?」



ライア自身、ついこの間知ったばかりであったが、とぉさんの認識としてはどのような物なのかと、ふと気になる。



「ん~…エルフって言葉は聞いたことはあるが、何かは知らなかったな?」



どうやら、とぉさんも何も知らないレベルらしいので、田舎の村の住人とかのレベルだと、みんな知らない位なのかもしれない。




「あの…にぃちゃんのこと…ありがとう…ございます」



「えっと、プエリちゃん…でいいんだよね?」



「はい」



兄の治療をすぐ傍で、静かに見守っていたプエリが、治療が終わり、助かったのだと安心し、とぉさんとライアにお礼を言ってくる。



「ひとまず、お礼は受けとっておくよ、それと別に、敬語で話さなくてもいいよ?」



プエリは年は4歳にほどに見える小さい子だ。

敬語で頑張って話してくれているが、これから色々と聞きたいこともあるし、あまり堅苦しく話していたら疲れるだろうと、ライアはそう話す。




「えっと、うん…」



「よかった…それじゃ、先に自己紹介をしようかな?…俺の名前はライア、このヤヤ村で生まれて、最近はリールトンの街で錬金術師をしてるんだ。

今は、少し用事があって、村に帰って来てるけど」



「俺はゴートン!ライアの父親だ」



森の中でも、ここに来る最中も色々と話す事も出来なかったので、改めて自己紹介をする。



「わたしは、プエリ、そっちのわたしのにぃちゃんがクストっていうの」



兄が“クスト”妹が“プエリ”と兄妹の名前がきちんとわかった所で、話を進める。



「ありがとう、プエリちゃん…まず、聞いておきたいのが、2人は多分“神樹の森”のエルフだよね?どうしてあんな所にいたの?」



まず、ラルフに聞いた話だと、エルフはまず、自分たちが守る神樹の傍を離れたがらないらしいし、プエリたちがあそこにいたのが、不思議だった。



「えっと、わたしとにぃちゃんは…その…」



「あ、言いたく無かったりしたら、話さなくてもいいからね?」



プエリは言いずらそうにしているのを見て、あまり深く聞き込んだらダメかと思い、プエリに無理矢理聞き出すつもりはない事を告げる。



「…ううん。ちゃんという…じつはわたし…“忌み子”なの…」



「忌み子?」



イントネーション的には、忌み子で合っていると思うが、なぜ忌み子なのだろうかと疑問が出る。



「…わたしは、神樹さまを、もやしちゃうからって…」



「…それって、どういう事?」



プエリは少しだけ悲しそうな顔をしながら、神樹を燃やしてしまうと言ったが、それが忌み子に関係しているのだろうか?



「……そこからは、僕が話す…」



「にぃちゃん!!」



プエリから事情を聞いているのを、少し聞こえていたのか、目を覚ましたクストが話しかけて来る。



「目が覚めたのかい?」



「もう少し休んでいた方が良いんじゃないかな?」



とぉさんとライアは、まだ体力が回復していないだろうとそう発言するが、クストは「喋るだけならできる」と、妹を抱きしめながら、こちらに話してくる。



「…妹の事に関してや、今までの事は僕が話す。

…でもその前に…治療をしてくれて…その…ありがとうございました…」



「ふふ…いえいえどういたしまして。

名前はプエリちゃんから名前は聞いたけど、クストって呼んでいいかな?」



クストは、警戒していたが、治療をしてくれて、妹も無事であったことから、認識を改めたのか、素直にお礼を言ってくる。




「はい、クストでいいです」



「わかったよ…プエリちゃんにはさっき言ったけど、俺はライアだよ!敬語とかはいらないから、普通に喋ってくれていいからね?」



「俺はライアの父親で、ゴートンって名前だ!俺も敬語なんていらないからな」



「ライアさんに…ゴートンさん…わかり…わかった」



クストと改めて自己紹介を済ませ、先ほどの続きをクストは話し始める。




「僕とプエリは…村を追放されたんだ…」








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