改革、エルフの兄妹
「こんなところに、誰だろう?…冒険者?」
分身体達は、反応のある所に向かって行くと、妙な感覚を≪索敵≫がとらえる。
「……これ、子供か?
…子供が2人、ワイバーンの住処だった渓谷の傍で座り込んでる…」
どうやら、子供くらいの大きさを2つ感知して、子供が2人いることはわかったのだが、余計になぜ、ここにいるのか?という疑問が濃くなるが、それも見に行けばわかるだろうと、歩みを早める。
――――ガサガサ…
「ひぅ!?」
「ん?…ごめん驚かせ…あれ…?」
ライアが森を抜け、草むらを抜けると、怪我をしているのか、1人は地面に倒れこんでおり、もう1人はその倒れている子の傍でこちらを見て驚いている。
(…この間、知ったばかりなんだけど…フラグっていうのかな?こんなに早く“エルフ”に会えるなんて…)
その子供たち2人は緑色の髪をしていて、耳が普通の人間とは思えないほど、尖り伸びていて、ラルフに聞いたエルフ族がそこに居た。
「…にんげん!……にぃちゃんをころさないで!」
「…!プエリ……逃げて…」
子供たちは、こちらを人間と認識するや否や警戒の色を強める。
「まってまって!、こっちに敵対の意思はないから!
…そっちの子は怪我してるんでしょ?大丈夫なの?」
「…敵対をしないって言うなら、僕たちにかまわずどこかに行ってくれ!怪我も別にしていない!」
プエリと呼ばれた子が、「おそわない?」みたいな顔をしているが、にぃちゃんと呼ばれた男の子は、人間は信用できないと、はっきりと拒絶する。
(怪我をしてないなんて、どう見ても噓なのはわかるけど、向こう側からしたら命奪ってくるかもしれない人間が現れたんだ…パニックになってるんだろう)
「…わかったよ!それなら、一応怪我をするかもしれないから、この傷薬をここに置いて行くから、よかったら使ってよ!…それじゃぁね!」
この場で、無理に治療しようものなら、死ぬ気で抵抗されてしまう可能性もあったので、冷静になった後に傷薬を使ってくれればいいなと考え、一応持たせておいた傷薬をその場に置いて、この場を去ろうとする。
「……まって!」
「ん?」
「プエリ!?やめろ!いいんだ!」
プエリは背中を見せ、ココから去ろうとするライアを呼び止める。
「にぃちゃん…ケガだけじゃなくて、どくもうけてるの……おねがいにんげんさん!にぃちゃんをたすけて!!」
「いいんだプエリ!僕は大丈夫だから!人間の手を借りなくても大丈夫なんだ!」
「わたしは…にんげんさんにだまされるかもしれなくても、にぃちゃんがしんじゃうほうが、いやだもん!!」
エルフの兄妹は、兄が死ぬのは嫌だから、頼れそうな人間に僅かの希望をみてお願いしてくる妹に対し、兄は人間を一切信じず、妹が無事でさえあればいい、といった話で言い争いになる。
(…めっちゃいい兄妹じゃん…って、毒!?)
見た感じ4,5歳の子供たちが自分より兄妹の心配をしている様にジーンと来ているライアだったが、兄の症状を思い出し慌てる。
「話し合ってる途中でごめんね2人とも、さすがに毒だったら、今すぐどうにかできる物はないから、村に連れて行かないといけない」
「…にぃちゃんを、たすけてくれる…?」
「おい!人間さっさとこの場から去れ!」
兄は人間が信用できない何かがあったのかもしれないが、さすがに見殺しにするのはライアとしてもしたくは無かった為、妹に応える。
「…あまり確証の無い事は言いたくはないけど、村には毒消しの薬草なんかの常備はしっかりしているから、少なくともここよりは絶対死ぬ可能性は低いはずだよ?」
毒の症状などは、兄を見る限り、それほど強くはないのかもしれないが、万が一がある為、絶対とは言わなかった。
(こんな小さな子を安心させるために、嘘でも絶対たすけるって言えばよかったのかもしれないけど…兄を思って、俺を引き留めれるくらいだ…変に嘘は付かない方が良い)
「…にぃちゃんをたすけてください!」
ライアの言葉を聞いたプエリは、目に涙を貯めながら、こちらに頭を下げ、兄の事をライアに任せて来る。
「プエリ!俺はそんな人間信じられない!お前だけでも逃げてくれ!」
兄は、涙を堪えながら懇願する姿を見ても、妹に逃げろと叫んでいる。
「…なぁ…君はこの子の兄なんだろ?」
「……なんだいきなり…そうだったらなんだ!」
ライアは兄の発言を聞き、どうしても黙っていられなくなり兄に語り掛ける。
「確かに、人間は信用できないのかもしれないし、妹の安全を守る為には人間を頼らない方が良いのかもしれない…でもな?お前の妹がここまでして、俺を頼ってるんだ…それだけお前に死んでほしくないんだろ?少しは妹の気持ちも汲んでやれよ!」
「な、なに説教まがいな事、言い出してんだ!俺は別にプエリの事を思って言ってるんだ!」
「お前が死んだあとの妹は、この森に1人になるんだろ?それはいいのか?」
「うぐっ…」
兄は冷静さを失っているようだが、現状はしっかりと理解しているのか、図星を刺され、たじろぐ。
「…それに、別に妹を捕まえるだけなら、怪我をしているお前しかいないんだ。今すぐにでも出来るよ。
…俺を頼って頭を下げて来る、あの子の為にも、俺はお前の命を助けようとしてるんだ」
「………」
元々兄妹たちの事は助けるつもりではあったし、最悪、縄で縛って、動けなくしてから連れていく事も考えたが、村に着いた後の事を考えて、兄には少しでいいから、こちらを信用する心を持ってほしかった。
「俺は君ら2人の敵じゃない…少なくとも、兄の怪我が癒えて、故郷に戻るまでの間は必ず守ると約束するよ」
「……妹に何かしたら、意地でも許さないからな…」
兄は渋々と言った表情をしつつも、手を借りることを了承してくれた。
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