改革、魔道具







「ではまずは、バイパーの魔石を使うのですが、その魔石の属性の知り方…“属性診断”をお教えするのです」



「そういえば、特殊属性であるなら、簡単にわかる物じゃないですよね…どうするんですか?」



バイパーは蛇の魔物なので“毒”と言われれば、何となく理解はできるが、毒属性を知らなければ、わかる物ではないだろう。



「魔石の属性の知り方ですが、こちらの魔石に魔力をほんの少しだけ籠めながら、≪錬金術≫で魔石の魔力が外に出るイメージで操作してみて欲しいのです」



リネットは、用意しているバイパーの魔石とは別の魔石を取り出し、その魔石に試してみるように言われる。



「……魔力が出るイメージだけでいいんですか?」



「はいです…込める魔力も少なくしてですね」



ライアは、リネットの注意を聞きながら、魔石を机の上に置いて、人差し指を魔石に近づけていく。



「………」ピト



何気に、何が出るのか分からない恐怖は感じるが、言われた通りにイメージして、魔石に魔力を送り操作してみる。



―――ピィィ…


「…え!?…なんですか、この音…?」



「ふふふ…この魔石は“音属性”の魔石で、今みたいな音が鳴るといった反応をするのです」



「……なるほど…」


リネットはライアの驚く様がおかしかったのか、笑いをこぼしながら、説明してくれる。



「この音属性の魔石は属性を調べるのに危険もないですし、結果もわかりやすかったので、これを使いましたが、このバイパーの魔石のように“毒”と言った、人体に危険な結果を生み出す属性もあるので、属性診断をする際には、魔力を込め過ぎないように気を付けるのです」



「…込める魔力の量が多かったら、大きい反応になるという事ですか?」



「その通りです」



仮に、バイパーの魔石に大量の魔力を込めて確かめようとしたら、毒がドバーっと出て来るのかと想像し、ほんの少し、バイパーの魔石に触るのが怖くなってしまう。



「といっても、バイパーくらいの魔物の魔石では、どれほど魔力を入れても、致死量の毒性が出る訳ではないので、安心して大丈夫なのですよ?」



リネットは、渋い顔をしていたライアの心の中を察して、そうフォローをしてくれる。



「そうなのですね。安心しました…」



「はいなのです。…では属性診断で魔石の属性がわかった所からの魔道具の作成に進んでいくのです」



「はい!」



そこから、リネットの教えを聞き、≪錬金術≫で魔石を細い棒状に加工しつつ、魔石の発動条件などを決めていく。



「発動条件って、あれですか?キッチンとかの火の魔石を使ったコンロで言う、ボタンを押したら火が付く。みたいな事ですか?」



「おぉ…もしかして、コンロの魔道具の仕組みを想像してたのですか?しかしそれは“素材”の方を加工する際に付けるイメージなのです。

今回使う素材は、ホーンラビットの角を使うので、魔石に付けるイメージは“込められた魔力を毒に変換し、ホーンラビットの角に付与する”と言ったイメージをするのですよ」



「なるほど…魔石と素材でつけるイメージが違うんですね」



リネットに言われた通りに魔石の形を整えながら、発動イメージを≪錬金術≫で付与をしていく。



「…もし、魔石に魔力を込めて、毒を発動させるイメージをしたら、そのままの魔石を魔物に食べさせたり、体にさしたりしたら効果が出るのですか?」



「いえ、魔石の属性効果は≪錬金術≫で直接操作をするか、魔力を通す素材で魔力の出口を作らなければ、魔道具としては機能しないのですよ」



前世の知識で当てはめるなら、魔石は言ってしまえば、ガソリン魔力電気毒属性に変える発電機であり、素材がその変換されたエネルギーを使って動く、機械やコードの扱いらしい。



(多分、俺が言ったのは発電機を起動させながら、敵にぶつけるみたいなもんか…あれ?結構強力そうだな?なら違う???)



ライアは少し混乱しながらも、手を進めていく。



魔石の加工が終わり、素材の加工に入るべく、ホーンラビットの角を用意する。



「では、この角をレイピアのように細長い刺突武器状に≪錬金術≫で伸ばしながら“生き物の体内に入ったら毒魔法発動”とイメージしていくのです」



「…はい…」



ライアは集中しながら、リネットの言う形にしつつ、イメージ付与も加えていく。



角の根元には加工した魔石を埋め込むので、その溝も付けていく。



「……ふぃぃ…出来ましたぁ…」



「中々に早いですね!形も完ぺきなのです」



出来た魔石と素材を組み合わせ、レイピア型の魔道具が出来上がる。



「このままだと、敵にさした瞬間に自分の手も毒に侵されてしまうので、持ち手を作りましょう…それに、むき出しで歩いていて、人にささってもあれなので、鞘も作るのですね」



「あ、そうですよね」



ライアはむき出しのレイピアを見て、その通りだなと思い、簡単なつくりなので、実験室にあった木材を使い、≪細工≫で簡易の持ち手と鞘を作り上げる。




「今度こそ完成ですねー!」



「はいです!」



魔道具を作ろうと話して、作り始めてから5時間ほど経ち、外はすでに暗く、実験室には明かりがともされている。



「結構時間が掛かったように感じましたけど、一つの武器を作ったと考えれば、結構早かったですね」



「まぁ≪錬金術≫は加工のプロフェショナルなのですよ!…まぁ武器の強度は素材の耐久力任せなので、脆いのですけど」




武器や防具を、ヤヤ村では≪鍛冶≫のスキルで、3日もあればどちらも作ってくれていたが、さすがに5時間で1つの武器を作るのは早いと感じたが、それなりに代償はあるらしい。




「それでは先生、今日はもう遅いんで帰りますね」



「また明日です」




ライアは作成した魔道具武器をそのままもらい、夜も遅いとさすらいの宿に帰る。



「…魔道具で武器が作れるのなんて知らなかったなぁ…」



ライアは今日教えてもらった事を考えながら歩いて行く。



(いつか、自分専用の武器とか作ってみたいし…もっと色々教えてもらおう)








―――――――――――――

――――――――――

―――――――






「ご馳走様でした…っと」



家に着いたライアは、最近はきちんと自炊をしており、魔道具の冷蔵庫の中にあった食材で食事を済ませ、布団に座る。



「んぅ~!!…よし、明日からは傷薬製作はないんだし、今日はちょっと多めに探してみようかな」



ライアはこの3か月間、忙しくない日や暇を見つけては特殊属性があるかを気長に探していた。



(まぁあるかもわからない物だから、普通に調べなかった日も多いんだけどね…)



これまでの間に、ファンタジー物のメジャーな空間属性や重力、時間、身体強化などから、適当にこんな能力があればいいな?と、契約属性、従魔属性、斬属性、念力、亜空間などetc…



自分にもあればいいな?くらいのつもりで試していたので、特に辛くはないのだが、無さそうかも?とがっかりした感情が出て来る。



「……んー…“爆破”!…出ないかぁ…出ても危なかったけど…」



そんな調子でライアは色々試していき、今日もやめようかと考えていた。





「…分体…“増幅”!……出ないなぁ……“幻”!…ん?」



何か一瞬魔力が空気に干渉して、何か靄のような物がかすかに見える。



「お…?もしかして?もしかする?……幻…“幻影”!!」



今度は少し希望を乗せて、リネットが目の前にいるイメージで魔法を発動させようとしてみると。




―――スゥ…


「………」



「………出ちゃった…」



魔法を発動させると、目の前には、先ほどまで一緒に居たリネット瓜二つの幻影が映し出されている。



「おぉぉぉ!俺にも特殊属性があったんだ!…探すのやめなくてよかったぁ…」



ライアは自身に特殊属性があった事を喜び、布団に倒れこむ。




「…って、でもこれって“幻属性”?なんだよな…

…ただでさえ≪分体≫で数が増えて≪変装≫で姿を変えてるのに、さらに幻魔法で倍とか?…はははは!」



≪分体≫で増え、≪変装≫で偽り、そこへさらに幻属性による幻影。



「神がいるとか、いないとか考える事もしなかったけど…これはどうも運命的に思えちゃうなぁ…」




ライアはあまりの都合のよさに訝しむが、その顔は満面の笑顔である。




「やっぱりファンタジーは楽しいな…」



ライアはニヤニヤと楽し気な顔のまま、布団の上で寝転がりつつ、幻魔法の使い方を考える。












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