改革、錬金術講座






「そういえば、私の母親がもうすぐ出産なので、近いうちに一度村に戻ろうと考えてるんですよ」



ライアは、分身体と一緒に、傷薬を作成しながら、村へ帰村することをリネットに伝えとこうと、話しかける。



「え…もしかして、工房にはボクだけ生活ですか…?実験室がまた寝れ無くなるんですか…?」



「いえ、分身体は置いて行きますので、ただ単に私本体が居なくなるだけですが…。実験室で寝る気満々じゃないですか…」



リネットは、実験室に入り浸る生活が無くなるのかと恐怖した顔をしていたが、分身体が居てくれることを知り、安堵のため息を漏らす。



「アハハ…。しかし、ご兄弟が生まれるのですね?しばらくは、そちらで過ごすのですか?」



リネットは、話を逸らしたいのか、生まれてくる子の話題に挿げ替える。



「一応、母親が子供を産んで、少しくらいは滞在する予定ですが、そんなに長い帰村にはならないと思いますよ?」



「そうなのですか?両親は大丈夫なのですか?」


子供が生まれて、家事を手伝ったり、家の事がしばらくは忙しそうな物なのに。そんなニュアンスで驚かれているが、問題はない。



「えぇ、村にはすでに、3人の分身体が居ますし、家事や畑の手伝いは足りているんです…今現在も普通に、かぁさんと喋っていますし」



「え、ではなぜ帰村を…?」



リネットはごくまっとうな疑問を聞いてくるが、ライアの答えは2つだけだ。



「一番最初に兄弟に触れるのは本体の方が良いじゃないですか?…それと、元々、かぁさんが帰って来いと言って、約束をしていたので」



「なるほど…家族思いなのですね!」



ライアにとっては、2度目の両親ではあるが、この世界に来てからの全幅の信頼を置ける2人なので、出来るだけ、親孝行はするつもりだ。



そんなライアとリネットの話は、しばらく続き、気が付けば、お昼を回り、必要数の傷薬が出来た。




「…500っと…大丈夫だね…それじゃ先生、先にギルドに届けてきますね」



「お疲れ様なのです!戻ってきたら、魔道具の事、教えるのです!」



「楽しみにしています!行ってきます」



ライアは、カゴを10個ほど、分身体と一緒に運びながら、冒険者ギルドに向かおうと、工房を後にする。







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納品の件は冒険者ギルドにいる分身体を通じて、話は通していたので、受付に着くとすでに、セルスが準備していてくれた。




「…はい、500本の傷薬の納品完了ですね…3000本も作っていただいて、感謝しかありませんね…」



「いえ、こちらとしては、資金が大量に入ったので、結果的によかったですよ」



セルスは申し訳なさそうにするが、報酬はきちんともらっているので、こちらに文句はない。



それどころか、傷薬は一つで銀貨1枚で下ろしているので、実はなんと“金貨”3枚も貰っていたりするので、ライアはご満悦である。



(2週間かからない位で日本円換算で3000万円…精神的に疲れるって言っても、これはぼろ儲けだね)



ライアは今現在、冒険者ギルドの受付嬢のお給金と、冒険者業の報奨金やらで、結構なお金持ちではあった。



「ライアさんは≪錬金術≫を取得されましたが、これからも≪錬金術≫関連で、工房に通い続けるので?」



セルスや他の受付達には、傷薬を作る為に≪錬金術≫を学びに、工房へ行っている。


としか伝えては居なかったので、セルスはライアの今後の動きをどうするのか、疑問になったようだ。



「一応、魔道具の事も勉強して、色々出来ることを増やす予定で、しばらくは工房に通う予定です。

…すいません、ギルドの方をほっておいてる形になってしまい」



「いえいえ!こちらとしては、アハトさん達が居てくれて、大変助かっていますから、こちらの心配はしなくて大丈夫ですよ。

私は個人的に、ライアさんがこの先、偉業を成す方だと、勝手に思っていますので、ライアさんはご自分の信じる道を進んで欲しいんですよ」



セルスは、それは勘違いだと、否定の言葉をこぼしながら、ライアの事をそう評する。



「え、いや…そんな偉業だなんてできませんよ?私は」



「いいんです、こちらが勝手に思っているんですから…それに、≪分体≫と≪経験回収≫の件だけでも、十分偉業だと思っていますしね」




今までは≪分体≫の生み出す分身体には、経験値が取得できないという欠点があると思われていた

常識をライアは変えているので、ライアは何とも言えない顔をする。



そんなライアを見てからセルスは、にっこりと笑顔のままライアを送り出す。



「ほら、工房ではリネットさんが待っているのでしょう?頑張ってきてください」



「あ、その…ありがとうございます?」



ライアは何とも言い負かされた気分になりながらも、確かにリネットが待っているか、と思い、そのまま工房に向け、ギルドを出発する。








「ただいま戻りました!」



「おかえりなのです!早速やって行きましょう!」



工房に着くと、待っていました!と言わんばかりのリネットに気圧されながら、実験室の自分の席を確保する。



「では、少しだけ魔道具製法の復習をしますね?」



魔道具知識は≪錬金術≫を取得する際に、基本的な事は勉強済みではある。



・魔道具作成に必要なのは魔石、魔力を通す素材、≪錬金術≫スキルの3つだけだ。


・魔道具の形や成型なんかは他所の≪細工≫や≪鍛冶≫持ちに外注してもいい。



それを


1:魔道具の使用目的にあった魔石を選ぶ。


2:その使用目的にあった魔力伝導率の素材を選ぶ。


3:その選んだ魔石と素材を加工できるだけのレベルの≪錬金術≫で加工する。


4:出来た魔道具本体を壊れないように、外枠や箱を≪細工≫や≪鍛冶≫などの技術スキルで作成する。



の手順で完成させるのが、魔道具製作の基本だ。




「こうやって魔道具は出来るのです…まぁ、そこから素材の質を高めるために≪錬金術≫を使ったり、複数の魔石を使うといった応用はあるのですが、基本はこの4手順なのです」




リネットは黒板を使いながら、今までの復習をしていく。




「はい!質問です!使用用途ごとに魔石を選ぶとはありますが、魔石に違いとかあるのですか?」



「いい質問ですライアさん!実は魔物というのは、そのほとんどが特殊属性持ちなのです」



「え?そうなんですか?」



リネットの話では、ゴブリンやオークなどの数種類の魔物は、普通に特に属性も何もない魔石なのだが、他の種類のモンスターには、ある程度、種類ごとに決まった特殊属性を持っているらしい。



「例えば、バイパーの魔石だと“毒属性”だったり、ゴーレムの魔石であれば“軽量属性”なんてのもあります。」



なんと、ダンジョンで倒しまくっている魔物たちの魔石も特殊属性で、魔道具に使えるらしい。



「まぁとにかく、作ってみて効果を見てみましょう!

…まずはダンジョンで取れる、バイパーの毒属性の魔石から作れる、魔道具を作るのです!」




「はい!先生」







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