始動のダンジョン5





ゴーレムを倒してから、アインス達は第3層に戻って来ていた。



「すまないな、俺達だと、夜の野営で、ゴーレムが来てしまったら対処が出来なくなってしまうからな」



「いえ、こちらは大変助かってますので」



今は、4層にほど近い、3層の野営が出来る広場で野営地の設置をしている。



ゼル達は、夜の見張りで、オークやオーガまでが出て来ても対処できるが、4層の魔物が出てきてしまっては無理だと、この3層に野営地兼、仮拠点を作り、4層の魔物を倒していこう。という事になった。



「ごめんなさいね?私たちがもっと奥に行ける冒険者だったら良かったのだけれど…」



「いえ、元々、どんな感じか見る為のダンジョン攻略ですし、第4層に潜れる冒険者もほとんどいないんですよね?」



ミリアナは少し申し訳なさそうに言うが、ゼル達の行ける第3層も結構上位の冒険者じゃないとやって行けないらしいし、ライア的には十分だった。



「そうね、第4層に入ってる冒険者って言ったら、今、王都に行っちゃったガントって冒険者パーティが入ってたわね。

それに受付にいるセルスさんも冒険者だった時も、第4層まで行った事があるらしいよ?」



「え?…セルスさんって冒険者だったんですか?」



なんと、あの受付のボスであるセルスが元冒険者で、第4層入りしてるベテラン冒険者だったらしい。



「セルスさんって結構若い方だと思いましたけど、そんな過去が…」



「って言っても、俺たちが冒険者になった2年前にはもう受付だったから、俺たちが聞いたのも、噂話ではあるんだけどね」



受付での、あのギルドマスターのサボりを感知する、あの鋭さも、冒険者時代に鍛えた感覚なのだろうか?



「…よし、拠点はこんなものでいいだろう…アインス君!今日はこのまま4層で探索でいいかい?」



「はい、そうしていただけると助かります」



ゼル達一行は、まだ時間があると、4層の浅い所を探索してみようと、第4層に向かって歩いて行く。



「そういえば、なんだかんだ歩いてきましたけど、ダンジョンに出るって言うミスリルって、まだ見ていないですよね?」



「ん?あぁミスリルか…あれは見つけても、取れる場合が少ないからなぁ」



「ん?そうなんですか?」



ライア的には、ダンジョンの壁などにたまに生えていると言ったら変かもしれないが、そういったイメージをしていたのだが、どうも違うらしい。



「ミスリルって言うのは、ダンジョン内の地面なんかを流れる魔力がダンジョンの中で具現化した鉱石なんだが、ちょっと厄介な性質があってな」



「それは…?」



ダンジョンに魔力が流れているというのも初耳だったが、ひとまず話を聞く。




「ミスリルは採取されるまで、ダンジョンの魔力を吸って、周りに放出する性質があってな…魔物を集めてしまうんだ」



「…あぁそうゆう事ですか…それは厄介ですね」



ミスリルはいわば、魔物を集める花という事らしく、仮に見つけても周りには魔物の大群がおり、採取できることは少ないのだという。



「ちなみに、ミスリルに集まってできた魔物たちの群れを“スポット”と俺たちは呼んでいる」



「スポットですか…」



スポットライトに集まる虫たちみたいなイメージでつけたのだろうか?



「まぁでも、ミスリルが出来る事もまれだし、仮に出来ていても、アインス達の≪索敵≫なら発見は容易だろうし、アインス達ならミスリルを取れるかもだしね」



「そうですね、機会があれば取りたいですし…

魔物が沢山集まってるところを探せばいいだけですもんね」










―――――――――――――

――――――――――

―――――――





「これは…スポットでいいんですかね?40体位魔物が集まっていますが…」



「…間違いなくそれはスポットだね…むしろちょっと多いよ…あはは」



そんな話をしつつ、歩いて行くと、噂話をするとフラグになると言ったものなのか、何体かの魔物を倒しながら進んでいくと“スポット”と呼ばれる魔物の群れを発見する。



「ブラックウルフ25に…ゴーレム12…15かな?なんか変な形が居たけど…」




「うーん…俺達だったらすぐに引き返すんだが、アインス達はどうする?」




ゼルはアインスに聞いてくるが、元々やりたいとは言っているし、今までの事もあるので、ゼルは行くのだろうな、と思いつつ確認しているようだ。



「…はい!行ってきます!」



「あはは!わかった、頑張って来てくれ」




アインスはそうゼルに告げると、分身体全員でスポットに向かって走り出す。



「「「わおぉぉぉん!!!」」」



手前に居たブラックウルフたちが、アインスの接近を感知し、声をあげる。



「“アースバレット”!!」



―――ドドドドドガァ!



「「「きゃうん!?」」」



開幕一発目は、今まで見せてこなかった魔法の“アースバレット”大き目の石がショットガンのように敵に向かって放たれ、一気に10体ほどのブラックウルフを片付ける。



「「がぁぁぁ!!」」



「そぉい!!」


――ザクン!!



「こっちもぉ!」


―――ズシャ!!



ドライとフィーアはまだレベルの低い槍を巧みに使いながら、ブラックウルフ達を倒していく。



「ほんじゃぁ俺は、デカぶつだぁぁ…ナァァ!!!」


―――ドゴォォン!!



「……!?」



ツヴァイは他の3人にブラックウルフを任せ、ゴーレムを倒していく事にして、手前のゴーレムの核を一撃で破壊していく。



「…ん?あれは…アイアンゴーレムか??」



そのタイミングで、ツヴァイの視線の先に、少しだけ形の違うゴーレムがおり、先ほど話していたアイアンゴーレムだと認識した。



「なるほど…さっきの変な反応はこいつらね…いいじゃん!強そう!!」



ツヴァイは周りのゴーレムをついでとばかりに破壊しながら、アイアンゴーレムまで向かって行く。





「ぜりゃあ!あともうちょい!!」


―――ドゴォォン!!





「…ゴーレムがあんな簡単に倒せるようになるにはどうしたらいいのかしら?」



「小さいころから効率よく、スキルを使って鍛えるんだろうな…しかし、俺には無理そうだな。あはは!」



「俺はもうなんかライアちゃんが楽しそうならもういいと思ってるっすね!」



少し離れてみていたゼル達は、アインス達の凄さを目の当たりにして、そう話し込んでいた。








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