始動のダンジョン4






アインス達は順調にダンジョンを攻略していき、第3層に入ってから、5日が経っていた。



「…と、これでいいな」



「こっちも解体が終わったわよ」



ゼル達は、倒した3体のオークを解体し、食料の肉と、魔石だけをはぎ取り、ダンジョン攻略を再開する。



「それにしても、干し肉ばっかり食べてたから余計に思うのかもしれないけれど、ダンジョン産のオーク肉は美味しいわよね」



「そうっすね…第1層とか第2層では食べれる魔物じゃないから、第3層まで行けなかった頃は、かなりきつかったっすもんね」



ダンジョン攻略を始めてから、ゼル達の食事は干し肉と日持ちのする、山菜のスープばかりで、かなりひもじい思いをしている。



ゼル達は、最初に第1層や第2層を順に攻略していったという事なので、最初のころは、ダンジョンにいる間はずっと質素飯だったらしい。




(んーここら辺は保存食は干し肉とかしかないんだよなぁ…そればっかりは少し可哀想だよなぁ…)



ライアは前世の記憶で、色々な保存食などを知っており、それを知っているがゆえに、ゼル達の食事事情に同情をしてしまう。




「ほらほら、あんまり話し込んでないで、遅れるなよ?」



「「はぁーい」」









それから1時間ほど進んだ時であった。



「ん?」



「どうした?」



≪索敵≫に反応があったのだが、ライアは不審な反応をして、ゼルが何かあったのかと質問をする。




「…これは、どうやら、もう第4層に入ってますね…オークでもオーガでもない魔物が居ます」



「もうか?…思ったよりかなり早かったな…」



ゼル達が知っているのは第3層の入り口付近までで、ここから何処までが第3層なのかはわかっていなかった。



それに、ゼル達いわく、1,2層はかなり長いが、第3層から短くなっていき、第4層はさらに短い、という話だ。



「第4層に潜る冒険者はかなりの実力者じゃないと、簡単に死んでしまうから、あまり情報とかは無いが、出る魔物は“ゴーレム”と“ブラックウルフ”という魔物なのはわかっているが」



「で、あれば名前的にこいつはゴーレムですかね?3メートル位の人型が2体…来ます!」



―――ぐごごごごぉ…


「……」



「こいつがゴーレム…って動く岩じゃないっすか、これってどうやって倒すんっすか?!」



ゼル達の前に大きな岩が引っ付き、人型に辛うじて見える化け物が現れ、タリスは剣も矢も通じないと感じ叫ぶ。



―――ぐごごご!


「……」



その後ろからもゴーレムが現れ、こちらを敵視しているのか、2体ともこちらに向かって、歩いてくる。



「ちょっと、殴って来てみます!」



「…え?…殴り?」



―――ダッ!



ゼルに一言伝えてから、≪格闘技≫担当のツヴァイでゴーレムに特攻を仕掛ける。



「いやいや!岩だよ!?殴ったってどうしようもないでしょ!?」



「…いや、もしかしたらっすけど、殴って来るって言ったんで、囮をするって意味じゃないっすか?」



「そ、そうなの??」



なにやらミリアナとタリスは何か話していたが、初めて見る魔物なので、少し集中していたライアは聞いてはいなかった。



ががごぉ…



「……!」


―――ぶぅぅん!!



ツヴァイの接近を警戒してか、最初のゴーレムが近くにあった岩を持ち上げ、ツヴァイ目掛けて飛ばしてくる。



「≪ステップ≫!」



どがぁぁん!!



 

「きゃ!!」「!?」「くっ!」



ツヴァイに向けられた岩の投擲を躱すと、岩の落ちた衝撃に、ゼル達は怯む。



「ははは!中々にすごい衝撃だ!けど!!!」



―――ダンッ!!




「威力はすごいけど…大振り過ぎだ…ねぇぇぇ!!!」



―――どがぁぁん!!



ツヴァイはゴーレムの前で右足に力を入れ、地面を蹴り飛ばすように飛び上がり、ゴーレムの胴体に拳をぶち込める。




「……!!」



「お?これは…」



ゴーレムの胴体を吹き飛ばすが、ゴーレムが倒れることはなかったが、どうにもゴーレムの核っぽいものが砕いた腹部に見える。



「おぉりゃぁ!」


―――バキッ!



「!!!」



砕いた腹の中に居たツヴァイはその核を蹴り砕くと、ゴーレムの命が絶えたのか、体全体が崩れていく。



「おっと…と!」



―――ぶぅん!!


「……!!」



崩れるゴーレムから脱出すると、もう一体のゴーレムが、崩れるゴーレムごと、ツヴァイを殴りつけようと大きな腕を振り下ろしてくる。



「あっぶなぁ…アニメみたいに空中回避とか、出来るもんだね!はは」



ツヴァイは、崩れるゴーレムの破片を足場に、もう一体のゴーレムの攻撃を空中回避して見せる。



「さて…殴りでも倒せるみたいだし、このまま倒しちゃう?…まぁ剣とかで切り付けて、刃こぼれとかしちゃうのも嫌だけど、一回くらいは剣も試してみようか…」



「……!!」


―――ぶぅん!




「おっと…こっちばかり見てていいのかい?」



――ーダッ!


「ゼリャァ!!」


――ザンッ!



「…!?」



ツヴァイにヘイトを向けていたゴーレムは、後ろから近づいていたアインスの斬撃を避ける事も出来ず、右足の関節を切り離される。



「…ん~…比較的、切り飛ばせそうな関節を切ったけど、刃こぼれしてるね…」



(今の≪剣術≫のレベルだったら、倒せるだろうけど、剣を何本も消費しちゃうな…)




ライアの≪剣術≫のレベルはまだ10であるので、剣の扱いがまだよくない為か、少しだけ刃こぼれをしてしまう。



一応、≪剣術≫スキルの詳細を説明しておくと、≪剣術≫は剣の扱いがうまくなっていき、威力も上がるものだ。



では、なぜレベルが10で、アインスはゴーレムの足を切断できたかと言えば、簡単に言えばステータスのごり押しと、体を扱う事がうまくなる≪格闘技≫の併用だったりする。



「ゴーレムはしばらくツヴァイで倒していこうか…なっと!!」



ボゴン!!!


「……」



片足を失い、立てずにいたゴーレムの核があるであろう場所にツヴァイが拳を振り下ろし、核を潰す。




「んーゴーレムはツヴァイで、後の魔物は他で倒そうか……ゼルさーん!終わりましたよー?」



アインスは後方に離れていたゼルに討伐完了を伝える。



「あ、あぁ…結構余裕だったみたいだね?」



「ホントに…殴り倒しちゃったけど?」



「んー…さすがライアさん!!」



ゼル達は若干の驚きと諦めの感情を感じさせる表情をしながらこちらに近づいてくる。


タリスは何か違う感じになってはいるが…






「こいつは…魔石とか残っているのか?」



「あ、そういえば核っぽいのは壊しちゃいましたけど…魔石はあるのかな?」



ゼル達はゴーレムの魔石はあるのか、探してみると、砕いた核の中に、魔石はあった。



「ゴーレムからは魔石しか採れなさそうですね」



「…このダンジョンのゴーレムはわからないが、稀に鉄だけで出来た、アイアンゴーレムや水晶で出来た、クリスタルゴーレムなんて上位種もいるらしいから、そいつらが居たら鉱石も取れるんだけどね」



アイアンゴーレム(鉄)やクリスタル…いたらどちらも堅そうではあるが、その前に。



「こんなに巨大な鉄の塊…持って帰れます?」



「ははは!そうだね…ここでは持って帰れなさそうだ」



ゼルは「たしかに!」といった感じで、上位種が出ても、持って帰れないならば意味はないと笑う。




「まぁ仮に出たら俺は戦ってみたいですけどね…」



「…なんだか、ツヴァイ君なら殴り飛ばせそうだね」



ゼルは困ったようにそう言った。









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