始動のダンジョン3
――――――アインスside
「ほっ!」
―――ザリッ!
「ギィー!!?」
アインスは、第2層に入ってから現れる、ビックバットを≪ステップ≫を使用しながら、素早く近づき、切り伏せる。
アインス達ダンジョン攻略組は、ダンジョンに入ってから2週間ほど歩いてきて、今は第2層と呼ばれるエリアに居た。
「結局、私達が加勢することなく、第2層を最後まで行けたわね…」
「このまま行けば、第3層どころか、第4層にも簡単に行けそうっす…」
ミリアナ達は、この2週間で慣れてしまったアインス達の戦闘を見て、そう評する。
「というか、この戦闘力で、まだ魔法があるって言うんだから、4層も案外簡単に攻略できちゃうのかもね…?」
ここまでの戦闘では、アインス達は魔法を使用せず、アインスは剣、ツヴァイは殴り、他2名は槍で魔物を倒していた。
「それにアインス達はまだ本気を出していないんだろうね。
今の所、ほとんどの敵を、順番に1人が倒して行っている…一応みんなはライア1人が動かしているんだから、4人同時に戦ったら、4人の連携はすさまじいだろうしね…」
基本、これまでの魔物はアインス、ツヴァイ、ドライ、フィーアを順番に1人1人魔物と戦わせており、余裕から来るものだろうと、ゼル達は考えている。
「この調子なら、俺たちが援護に入ることはなさそうっすね」
「まぁ元々、私達より強いのは思ってたことだものね、予想よりすごかったけど…」
それから、しばらく歩いて、今日の野営ポイントに到着し、野営を始める。
「…明日からは第3層と言われるエリアに入って行くが…俺達もそこまでしか行った事が無くてな、そこからは野営できる場所とかもあまり知らないんだ」
「それじゃ明日からは、野営出来る所を探しながらの探索になるんですか?」
「そういう事だ」
ゼルは明日からの予定に、野営場所の捜索も考えながらの探索もあることを注意する。
「これまでの戦いから、あまり心配はしていないが、第3層からは俺達も苦戦するからアインス達が危険がありそうと判断した所で、ダンジョンは引き返す…いいかな?」
「はい、それで大丈夫です」
ゼルは“それじゃ今日はもう終わりにしようか”とダンジョンに入ってから、毎日恒例の小会議を終わらせ、就寝することにする。
――――翌日
「ぶぎゃぁぁぁぁ!!」
前から突進してくるオークを正面から対峙するツヴァイが、突進の勢いをそのまま返すように、オークの腹と顔に2連撃を叩き込む。
「ゼリャァ!!」
――ドスドスッ!!
「ぐぶ…ぶぎぃ!!」
ドスン…!
突進するエネルギーを腹と顔に受けた拳だけで止まってしまう威力に、オークはそのまま地面に倒れる。
「ふぅ…オークは外のより、若干重い感じがしましたね?」
「いやいや、そうはならないでしょ…ツヴァイの体の何倍の大きさよ」
ミリアナは多分知らないであろうが、物理学的に2メートル越えに200キロオークの突進を、140センチ少し超えたぐらいの小柄なツヴァイの拳で止まる現象が違和感であるらしい。
(俺も不思議だね…さすがファンタジー!)
「それに…オークが5匹も居たのに、あっさり倒してしまうんだね…」
ゼルの言う通り、実はオークは5匹の群れだった。
他の4匹は、アインスが2匹を切り伏せ、残りの2匹は双子に首を一突きされて絶命されている。
「…やはり、昨日の心配は不要だったようだ。はは」
ゼルは困った顔で笑っており、何とも言えないようだ。
「とまぁ、ここでも安全そうなんだ、じっくり野営地を探しながら、奥に進んでいくとしよう」
「了解です」
そこからは昨日までと一緒で、オークやオーガと言った魔物が現れるとアインス達が討伐し、たまにゼル達が魔物を倒したりするという流れが出来る。
――――――――――――
―――――――――
―――――――
「そっちに行ったっすよ!」
「任せろ!」
「ぐあぁぁぁぁ!!」
今はゼル達がオーガ2体と戦闘をしていて、アインス達は一応に備えつつ、それを見学している。
「ぐああああ!!!」
オーガが大きな腕を振り上げながら、ゼルに向かって振り下ろす。
―――ブゥン!!
「――ふっ!」
それを躱しながら、オーガの正面からオーガことを威嚇するように正面から睨む。
「ぐぅぅぅ……がぁ!?」
―――ビュン!
「毒矢よ!」
ゼルが正面から注意を向かせながら、少し離れた位置からオーガを狙い、毒矢を入れることに成功するミリアナ。
「ぐがぁぁぁぁ!!!」
「させない…よっ!!」
―――ズシャ!!
オーガがミリアナに怒りを向け、ゼルに背を向けて走り出そうとするが、その隙をついてゼルはオーガの足を切りつける。
「ぐがぁぁぁぁ!!!!」
足の筋を切られたのか、起き上がる事も出来ずに痛みに叫ぶオーガはそのまま毒矢で弱って行く。
「よし、こっちはもう大丈夫だ!ミリアナ!頼む!…タリス!スイッチだ!」
「待ちかねたっすよぉ!」
「ぐがぁがぁあ!!」
動けなくしたオーガをミリアナに警戒させつつ、1人もう一匹のオーガをひきつけ、逃げ回っているタリスと場所を交換する。
(おぉぉ…これがあのスイッチですか…!!)
ライアは本格的な戦いを見て、場違いにも少し興奮していたが、ゼル達の戦いももう掃討戦であった。
「ぐがぁぁああ!!」
―――ぶぅん!ぶぅん!!
「狙いが…お粗末…だね!!」
―――ザシュ!!
「ぐがぁぁぁ!!!」
残ったオーガは仲間がやられた怒りなのか、両腕を振りかぶりながらガムシャラにゼルへと攻撃をするが、全て避けられ、そのまま腹を切られる。
「背中があいてるっすよってね!!」
―――ザクッ!!
「がぁぁ…あぁ…」
ドスン!!
ゼルに斬られた傷をかばって、腕を前に回していたところを、囮の必要が無くなったタリスが背中を短剣で一撃、そのままオーガは倒れる。
「ふぅ…いつもだったら、もっと緊張感があるんだが…アインス達が居ると思うと、心に余裕ができるな…」
「そうね…私もあまり、気負わずに弓を引けたわ、ありがとね…っと!」
―――ザク…
「……」
ミリアナは毒で弱っていたオーガに止めを刺しながら、ゼルの言葉に賛同する。
「俺はいつもどうり、自分の仕事を完璧にやりましたっすよ?」
「…あんたは良い恰好したいだけでしょ?それに、オーガを引き付けてる時に、一回だけオーガの攻撃に当たりそうになって焦ってたじゃない」
「そ、そ、そんなことないっすよ!?見間違いじゃないっすか!?」
実はライアもそれを見て、咄嗟に助けた方が良いかと心配してしまったのは秘密である。
「まぁタリスのポカはあまり触れずに、魔石なんかを取ったら、先に進もうか」
「いや、してないっすよゼル!?」
「あはははぁ!」
ライアは、仲が良いなぁと思いながら、ゼル達とダンジョンを進んでいく。
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