始動、錬金術工房!
「…おとこ?……どこからどう見ても女性にしか見えないのですが…」
「こんななりをしていますが、一応男性になります」
リネットに、ライアは男性だと10分ほど説得するが、半信半疑のまなざしを受けてしまう。
「…まぁそれは、色々と見せてもらう訳にもいかないので、そうゆう事にしておくのです」
…もしかしたら、何か大事な理由などがあり、男性と言わなければならないのかも?とか思われているのかもしれない。
それから、お茶が冷めてしまっていたので、お茶を入れ替えつつ、小休止してから、話の続きを話し始める。
「…さて、なにか色々と別な件で話し込んでしまったのです…どこまで話しましたか?」
「特殊属性は話したから、後は無属性の説明じゃねぇか?」
属性は基本の4属性とその混合属性、特殊属性と最後の無属性があるらしく、最後の無属性の説明をリネットにしてもらう。
「あぁそうでした…無属性というのは、簡単に言ってしまえば、魔力を変換させずに、運用する技術になるのです」
「…技術ですか?…それってどんなことが出来るのですか?」
一応、子供のころから、身体強化や俗に言う無属性の存在を考えて、色々試してみたりはしていたが、成果などはなかった。
「無属性は魔石の中に入ってる魔物の属性魔力を引き出して、魔道具にしたり、他人に魔力を渡したり、極めて行けば自分の意思を魔力に込めて、人や魔物に伝える事も出来るのです」
最初のは≪錬金術≫に必須の技能なのだろう…だが、人に魔力を渡したり、意思を伝える…“念話”みたいなものだろうか?そんな事も出来るのかと感心する。
「自分の意思を伝えるのはどういった物なんですか?」
「基本的には、人に聞かれたくない事を人に伝えたり、魔物に使う場合は魔物を使役するために使うことが主ですね」
「この街にはいないが、馬車の馬の代わりに魔物を使った馬車なんかもあるしな」
なるほど、話を聞いて行くと、遠くの人物と連絡が出来る“念話”のようではないが、モンスターテイマーのようなことが出来る感じの方が、合っていそうである。
(と、いうか遠くの人物に連絡するならステータスカードの登録者リストからできるし、使い道はなかったかな?)
※一応、村に居た時に説明があった、ステータスカードの連絡機能です。
「とまぁそんな感じのことが出来るのが無属性というわけです」
「勉強になりました。ありがとうございます」
リネットは長い長い説明が終わったと、残りのお茶を飲み切って、一息つく。
「それで、私はリネットさんから≪錬金術≫を教えてもらう場合はどこで勉強するのでしょう?」
「それはこいつの研究所にライア本人が行ってもらう事になってる。…分身体3人は受付を頼むがな!ハハハ」
ギルドマスターはそう言って、分身体3人に仕事を任せて、スキル取得に向かっていいと、暗に伝えて来る。
「…そうですか、ならギルド長の監視がセルスさんになるんですかね?」
「ハハハ―――はっ!!」
ギルドマスターは笑っていた顔が、凍り付いたように固まってしまったので、リネットさんとこれからを話し合う。
「ライアはこの後、自由に動けるのです?」
「えっと…私本体は基本ギルド長の監視とお茶入れしかしていないので、大丈夫ですよ」
ギルド長がギルドを離れることに許可を出しているから、受付にいるセルスに伝えれば、ギルド関連は大丈夫である。
「なら、このまま研究所に案内するのです」
「わかりました…ギルド長?行ってきますね?≪分体≫」
先ほどのセルスが監視になると言われて、フリーズしていたギルドマスターに一言告げてから、監視用の分身体を生み出し、部屋を出ていく。
「……ハ!!分身体を増やせば、監視役もライアのままでいいじゃねーか!?ビビらせやがったなライアぁ!」
(リネットさんにスキルは教えて、性別を言っていなかった罰のつもりで言ったが、効果てきめんだったな…)
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――――――――
――――――
アハト達を通じてセルスに連絡をして、ギルドを出発したリネットとライア2人は、街の中心の方に向かって歩いて行くと、徐々に街並みが高級志向になって来たのか、立派な建物が増えていく。
そんな、街並みを見ながらさらに歩いて行くと、リネットがレンガで出来た大き目の建物の前で止まる。
「さ!ここがボクの城、“リネット錬金術工房”なのです!」
「おぉ~」
リネット錬金術工房は看板こそ出しているが、お店と言った風貌ではなく、どちらかと言えば、レンガ調の倉庫に近い形の大きな工房だった。
―――カランカラン…
「…お邪魔します…」
「遠慮せずに入るのですよ…今は誰も居ないので、寂しいのですが」
工房に入ると、目の前には2階に上がる階段があって、色々な部屋のドアが見える、大きな吹き抜けになっている玄関になっていた。
「…この工房は他にも人が居るんですか?」
「ん?そうですね…ボクの使用人たち以外だったら、2人ほど錬金術師が居るのですけど、最近は傷薬ばっかりなので、みんな自宅で作っているのですよ」
この工房に所属しているのは、錬金術師が2人とリネットの使用人が手伝いだったりでいるくらいで、ほとんどリネット専用なのだそうだ。
「さぁこっちの部屋について来るのです」
リネットは玄関を進み、奥の部屋に進み、一つの部屋に入る。
「ここが、錬金術を扱ったり、色々と実験をする“実験室”になるのです!」
「おぉぉう……」
実験室に入ると、リネットは如何にも「どうだ」と言った顔でドヤ顔をしてくるが、錬金術の“レ”の字も知らないライアには、デカいツボや、何かの部品か何かが、散らかっているようにしか見えない。
「…ここの掃除とかって使用人の人に任せてるんですか?」
「ん?ここは爆発する危険な物も置いてあるので、知識のある人以外は立ち入り禁止にしているのですよ!」
なるほど、玄関から、この部屋までの廊下などはとても綺麗に掃除されていたから、微妙に違和感だったが、それならこの部屋の
「今日から、ここでライアの錬金術師の勉強をしてもらうのです!」
「…よろしくお願いします。リネットさん」
ライアはいい笑顔のリネットに、これから始まる錬金術の勉強生活を思いながら、定型文を返す。
(色々わかるようになってきたら、この部屋の掃除もやるべきだろうなぁ…)
ライアの小さな目標も出来たようだ。
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