始動、先生の登場
――――ライアside
「どうぞ、お茶です」
「どうもです」
「よし、ライアも紹介するから椅子に座れ」
場所はギルドの応接室にて、ギルドマスターとフードを被った、“先生”にお茶を持って行き、ライアはギルドマスターに言われるままに空いている席に同席する。
「そんじゃ早速だが、こいつが前に言った≪錬金術≫の先生だ」
「……改めまして、貴方の先生をすることになった“リネット・リールトン”…領主“アイゼル・ロー・リールトン”の三女なのです」
「…え…?領主の??」
フードを被った人物は、どうやら予想の斜め上以上に高い立場の人間らしい。
「そうなのです。領主の娘ですね」
「……えっと、私の先生をするというのは…?」
「はい、ボクが先生ですね」
(いや!!そうじゃなくて、貴族、それも領主の娘が、平民に関わってても、いいのか?)
どうにも自分の認識にずれがあるのかもしれないが、リネットとの会話が理解できずに、ライアは混乱するばかり。
「ハハハ!すまんなライア、リネットは≪錬金術≫の事では一人前の研究バカなんだが、世情やらコミュニケーション能力には期待しないでくれ!」
「む、ボクはなぜいきなり、罵倒されなければいけないのです??」
ギルドマスターに話を聞くと、リネットとやらは、特に領主を継ぐわけでも、政略結婚をしなければいけない領地状況でもないらしく、自由の立場らしい。
そんな境遇だからなのか、リネットは好きな事を好きにやろうと才能もあって≪錬金術≫を極めていき、この国でも上位の錬金術師なのだそう。
「だから、緊張とかしなくていいぞ?こいつは≪錬金術≫の研究が出来なくなったり、自分の作った魔道具を壊したりしない限り、本気で怒らん」
「…シュリアの壊した送風機の事は恨むのです…」
「だからそれはすまんかったって…ちゃんと代わりの魔石も取って来ただろ?」
どうやら、2人は結構、親しい間柄のようだ。(怒る事は実体験からか…)
「…えっと、私はライアです…でも、ならなおさら、なんで私に≪錬金術≫を教えてくれるんですか?私に教えている時間とかは研究の時間とかも減りそうですけど?」
「それは、あなたに≪錬金術≫を教えたら、ボクが傷薬を作らなくてもよくなるって聞いたです。
…ボクもまだ話でしか聞いていませんが、ライアさんは≪分体≫で沢山増えれるのですよね?」
リネットはギルドマスターからライアのスキルの事は聞いているらしく、それを利用すれば、傷薬を自分が供給しなくてもよくなり、結果的には研究の時間が増える。といった思惑らしい。
「ライアで構いません。…なるほど、すでに傷薬の製作で時間は無くなっていたんですね…」
「あぁ…それでオレがイライラしてるリネットに、ライアの事を教えたってわけだな!」
ギルドマスターは事の経緯を教えてくれて、それにリネットは頷いて、話を進める。
「ライアは≪魔力操作≫をもう持っていると聞いてるのです。それであれば、魔石の扱い方や属性の事を勉強する事で≪錬金術≫取得の訓練になるです。」
「魔道具で使う魔石はわかるのですが、属性も関係しているんですか?」
「はい、魔道具を作るのにも、傷薬や他の薬なんかの作成でも、属性は関係してくるのです。」
リネットの説明では、魔石というのは、魔物それぞれが持っている魔力を生み出し、蓄える器官で、魔物それぞれで、魔石の持つ属性があるらしい。
「ちなみにですが、ライアは魔力に属性はいくつあると聞いています?」
「えっと、私は火、水、土、風の4つと聞いてましたね」
ヤヤ村の村長からはその4つの属性に関しては教えてもらっていたので、その4つが使えるかの実験をしたりしたのはよく覚えている。
「それは基本の4属性で、実は他にも属性はあるのですよ?」
「え!?ほんとですか?私にもまだ使える属性が増えたりするんですか??」
思わずライアは興奮して、腰を少し浮かせて聞いてしまうが、リネットは落ち着いたまま、話を続ける。
「まぁ増えるかもしれないですが、あまり期待はしないでください。
基本の4属性以外に複合属性、特殊属性、そして錬金術や他の技術でも使う無属性があるのですよ」
「複合属性…それってもしかして、水と土で泥、みたいな感じですか?」
「ん?そうですね。もしかしてもう使えてましたです?」
どうやら、ライアは複合属性に関しては、幼少期に自身で開発できていたようだ。
「そうですね、私は土、水が得意でしたので…火も一応使えますが」
「それは良かったのです。風以外は錬金術で使えると便利な属性なので丁度良かったです」
錬金術には鍋に水を貯め、火をつけ、出来た傷薬なんかを、頑張れば土でガラスのビンを作れるらしい。
(土からビンを作るのは、かなりスキルレベルが上がらないと出来なさそうだけど…)
ちなみに後で聞いたが、風はあまり使われない属性なのか聞いてみると、海で船を動かしたり、空を飛ぶものもいるらしく、むしろ応用力は一番なので、そんなことはないらしい。
「それじゃ、特殊属性とはどんな属性なんですか?」
「特殊属性は特殊スキルと一緒で、その人が生まれ持った属性の事ですね…まぁ他の属性も後天的に取得できないので、微妙にスキルで例えるのは間違っている気はしているのですが…」
特殊スキルは4属性以外に、個人の資質で持つ、変わった属性で、発見されたものだと大きな音を生み出す“音属性”や木の成長を促したり、草花を操った“樹属性”などがあったらしい。
「その属性の有無を調べる方法とかってあるんですか?」
「いえ、特殊スキルに関しては絶対数が少なくてですね。調べる魔道具の開発もまだなのです…
なので基本は、自分の魔力を4属性以外に変換できないかなと、試していく事しか現状調べることが出来ないのです」
「そうですか…一応あったらすごい楽しそうなので、しばらくは試してみます!」
自分だけの属性、自分だけの魔法と聞いて、憧れない男の子は居ない!とウキウキしながらリネットの話を聞くライア。
「フフフ…ライアはまるで男の子みたいな反応をするんですね?なんだか、おもしろいのです」
「!!?」
―――バッ!!!
―――サッ!
「…」
リネットの反応を聞いた瞬間にギルドマスターの方へ顔を向けるが、さすがギルドマスター…凄まじい反応で、窓の外に視線を逸らす。
【なんでスキルの事なんかは言ってあるのに、男って先に言ってないんですか!?】
【いや、すまん…ライアが男って感覚が無かったから、言うの忘れてた…】
【あぁ…それは…こっちもすいません】
※視線のみでのギルドマスターとライアの会話↑
まぁ別に、今から伝えればいいのだろうが、ライア的には本物の貴族で、これから先生になってもらう人物だ。まず間違いなく驚かれるので、少しだけ説明が憂鬱な気持ちだった。
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