始動のステータスカード ※







「よく来た…オレはこのリールトンの街の“冒険者ギルド”ギルドマスターのシュリア・アンデルセンという者だ。」



ソファーに座るギルドマスターは、こちらを見据えながら、自己紹介で挨拶をしてくる。



「私は、ヤヤ村から来たライアという者です。…後ろの4人は≪分体≫で出した分身体達です」



「ほぉ…ホントに4人も≪分体≫を出せるってのかい?」



ギルドマスターは≪分体≫がきちんと動いているのが不思議なのか、疑るような目線で分身体達を検分する。



「「「「「一応、全員の声を合わせたりできますが…これで信用してもらったりできますか?」」」」」



「うわ!!…ホントに分身体か…なんか怖えぇな」



5人全員が、いきなり同じ声で、同じ言葉を一斉に話し始める様が、ギルドマスターには≪分体≫だとは理解はするが、異様に見えたらしい。



「…まぁあの“囮”がこれほど使えるってんなら、色々便利そうではあるが、冒険者になるってのは難しいんじゃねーか?」



「?なぜでしょう?」



「なぜって…あんたの言ってる、分身体に魔物を狩らせて、自分自身は安全な所に居てってのは、“経験値”が入らねぇってのは知ってるだろ?

…それだけでもレベルが上がらなくなるから、頭打ちになっちまうし、何よりステータスカードの魔物討伐情報ってのは、体に蓄積された、魔物の経験値を調べて、表示してるんだ。」



ギルドマスターの話はステータスカードに関しての仕組みで、経験値がたまる=魔物の討伐がわかるようになる。


といった話で、世で言う≪分体≫の経験値が入らないなら、魔物討伐依頼なども受けても、討伐証明が出来ないという事らしい。



「だから、もし、あんたが冒険者になるってんなら、魔物を一緒に倒さねぇとダメになっちまうんだ」



「なるほど…ステータスカードはそういう、仕組みだったんですね。

……すいません。ちょっと確認したいことがあるのですが、ステータスカードの個人登録をしたら、今まで倒してきた魔物の討伐履歴も出てきたりします?」



「ん?あぁ、今までに倒した魔物の経験値も調べるからな?」




ライアは、自分の想像した通りであれば、大丈夫そうだと考え、ギルドマスターたちに、≪経験回収≫と≪分体≫で出来た事と、今までの事を話す。



「…なので、多分ですけど、私のステータスカードには、魔物の討伐履歴が載っていそうなので、ステータスカードの個人登録をしてみてもいいでしょうか?お代もちゃんとお払いしますので」



「……おい、ステータスカードもってこい!」



「はい」



ギルドマスターは受付さんにステータスカードを取ってくるように指示を出し、すぐこちらに目をキラキラさせながら見つめて来る。




「たしか、ライアって言ったよな?…ライア、お前本体は魔物狩りに行ってる間は何をしてるつもりなんだ?」




「え?はい、一応、村でも、色んなスキルを取得してたり、してたので、もっと取れるスキルを探したり、取得のために訓練をしたりするつもりでしたけど…」



基本的には村長が色々教えてくれていたが、この街には図書館などがあるらしく、そこでスキルの取得方法がわかるはず、とライア考えていた。



「ならライア、このギルドの受付やってみないか?」



「受付…ですか?」



今の話しの流れ的に、受付というのはあまり繋がりがあるようには感じられない。




「あぁ…すまんすまん、実は最近なんだが、うちの受付嬢が1人寿退社しちまってな…その代わりを探してたんだ」



「…はぁ」



「でだ…ここであんたを誘う訳なんだが…オレは冒険者ギルドのマスターをやっているだけに、スキルに関しては結構知ってる方なわけだ」




「!…もしかしてスキルの事を教えてくれる代わりに、受付をやってくれと?」



冒険者たちのトップであるこのギルドマスターなら、確実に色々なスキルを知れる立場だとはおもうし、それであればこちらにとっても利がありそうだ。



「戦闘用のスキルもわかるが、実はというと、オレはこれでも元貴族だ、貴族時代に教わってたスキルもあるが…知りたくないか??」



「これからはよろしくお願いいたします」



「ハハハハ!あぁ!よろしくな!」



ギルドマスターの名前は“シュリア・アンデルセン”と苗字らしきものがあったため、何だろうと思ったが、貴族には苗字があるっぽいようだ。



「……でも、受付ってそんなに人気のない職業なんですか?」



ガチャ


「…いえ、そんなことはありませんよ?…受付をやるには冒険者同士の争いを仲裁したり、女性であれば、無理矢理のお誘いなどを自力で解決できる人じゃないと、務まらないんですよ」



ギルドマスターに質問をしたが、ちょうどステータスカードを持って来た受付さんが受付の現状を説明してくれる。



「あぁ、さっきの話がホントであれば、力は申し分ないだろうし…何より面白そうなやつは囲っておきたいだろ?」



「…後半はギルドマスターの趣味みたいなものなので、気にしないでください…」



「はぁ…」



どうやら、面白い人認定がされたのはわかった。



「ひとまず、こちらがステータスカードです」



「ありがとうございます。たしか血を付ければ、登録できるんでしたよね?」



「はい…こちらの針をお使いください」



受付さんに、カードと、血を出すための針を受け取り、ステータスカードの個人登録をする。




――プツッ


「……」




―――――フォン






^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


 名前:ライア

 年齢:15

レベル:49

 種族:人間

クラス:村人


 体力:15000/15000

 魔力:32000/32000


攻撃力:79

防御力:52

素早さ:97

知識力:102

器用さ:243


スキル


≪分体≫21

≪経験回収≫21

≪格闘技≫22


【▽】



称号




討伐歴【▽累計】


ゴブリン    【42106】

オーク     【3620】

ツインハンドベア【214】 

オーガ     【21】

ワイバーン   【12】



登録者






^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^





「おぉぉ…色々変わりましたね…」



ステータスカードは今まで見ていたものとはかなり変わった表記がされている。



(あれ?スキルが減って、下に何か出てる…)




^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


スキル


≪分体≫21

≪経験回収≫21

≪家事≫15

≪格闘技≫22

≪潜伏≫16

≪分割思考≫8

≪剣術≫10

≪ステップ≫15

≪農業≫17

≪解体≫9

≪細工≫5

≪変装≫16

≪裁縫≫8

≪自己回復≫6

≪索敵≫12

≪魔力操作≫14

≪変声≫10

≪槍術≫7

≪投擲≫9

≪状態異常耐性≫1


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^






(なるほど、スキルが多かったりする場合は見やすいように、隠しててくれるのか…)



「どうだった?討伐履歴はあるか?」



「えっと…はい、ありますね…数の正確性はわかりませんが、多分あってると思います」



ゴブリンは10年位、毎日狩っていたので、正確な数などはわからないが、ワイバーンの群れを見つけて、合計12匹位倒したので、あっていると思う。



「最初は“累計”ってなってるはずだが、そこを押せば、月間って選べるから、そうした方がわかるだろ?」



「……あ、出来ました。…数はあってますね」



ツインハンドベアーが月間だと2匹で、この間2匹の番か何かを討伐していたので、こちらも大丈夫そうであった。



「なら、ライアの≪分体≫と≪経験回収≫のスキルの実用性が証明されたわけだ…」



「これで、分身体に冒険者業をさせてもいいですか?」



「あぁ!むしろこっちからお願いするさ!…これからは面白くなりそうじゃねーか!」



ギルドマスターは、ライアの加入で、何か楽し気にそう言う。



「ライアに受付もやってくれれば、書類仕事も減るってもんだしな!新たな受付嬢に歓迎会でもするか!」



どうやら、受付の減少で増えた書類仕事の軽減が嬉しかったらしい。




「あ、すいません…先に言っておけばよかったですね。

私、男なんです」




「「うぇえ!?」」




(おおぉ、受付さんも凄い顔をさせてしまった…)






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る