始動のギルド
「そんな…そんな…うそっすよ!!!そんなの嘘に決まってるっす!!!!!」
…ゼル達4人に自身のスキル≪分体≫の事や、自身の事を話していく。
「………ッ」
タリスは地面に崩れながら、嘆き、ミリアナは顔を背けながら肩を震わせている。
「そんな…ライアちゃん…」
ラルフさんは長年、商売を通して、接していたライアがそうだったなんてと驚いている。
「ウソっス…そんなのウソっスよね?ライアちゃん!」
タリスは希望を求めて、実はウソでしたと、言ってほしいのか再度質問をする。
「……えっと…すいません、俺“男”なんですけど…」
「嘘っすぅぅぅぅぅぅッッ!!!!!」
「あははははははは!!タリスあんた…男の子に一目ぼr…ぶふぅ!!」
「タリス…なんか…ドンマイだな…」
ライアはスキルの事含め、≪分体≫の事や、スキルを隠す為に自分を偽っていた事を話したのだが…
どうやら、タリスはパーティ―内で、ライア本体に“一目ぼれしちまったっす”と話していたらしく、タリスは嘆き、ミリアナは爆笑し、ゼルはタリスに同情していた。
「ライアちゃんが男の子だったなんて、全く思わなかったなぁ…しかし≪分体≫のおかげでヤヤ村に行っても、ライアちゃんは居るんだよね?」
「そうですね、村には3人、分身体を置いてきてるので、魔石とかは取ってくると思います。頻度は落ちるかもですが…」
「いやいや、むしろいつもが多すぎたくらいだったから、そこは大丈夫だよ。…しかしあの大量の魔石の謎もこれでわかったよ」
ラルフは驚きはするが、特に扱いは変わらないのか、ライアちゃん呼びのまま、村での魔石の売買について聞いてくる。
「それじゃぁアインs…ライアちゃ…ライア…君?」
「すいません、好きに呼んでいただいて大丈夫です」
ゼルはアインス呼びも、ちゃん付けも違うのだと思い、君付けをするが、違和感がすごいらしく、変な顔をするので、呼び方は任せる。
「それじゃぁライアちゃん、なんかうちのタリスがごめんね?スキルの事はわかったよ。話してくれてありがとう。
…しかし、なぜ今、話そうと?」
ゼルは結果的に、見たまんまのライアちゃん呼びが良いようで、ちゃん付けだ。
ライアはゼルの質問に自分の思った事をそのまま伝える。
「…そう思ってくれて、こちらは嬉しいが、基本的にスキルを隠すのは間違ってはいないから、黙っててくれても良かったんだがな、ありがとう…若干一名は知らないほうが良かったかもしれないが」
そう言いながら、清々しい男泣きをするタリスを見る。
(なんか…すまんね…タリスさん…)
それから、タリスとミリアナが落ち着くまで、門の入り口広場で話し、別れることにする。
「ライアちゃん!俺、ライアちゃんが女の子だって可能性…あきらめないっすから!!」
「あははは…もう、お腹が壊れるかと思った…
ライアちゃーん!ギルドで会ったら飲みましょう!絶対ね!」
「ハハハ…まぁこれからは同じ冒険者同士だ、何かあったら頼ってくれ!」
「ありがとうございましたぁー!」
広場で冒険者たち3人と別れの挨拶を交わし、ラルフさんは軽く会釈をして、「またヤヤ村で」と言って馬車は去っていく。
「よし、俺も出発しようかな」
ライアはゼル達に聞いた、冒険者ギルドの場所に向かってみることにする。
―――ガヤガヤ…
「活気がすごいねぇ…」
街の中を進んでいくと、道の左右は出店や、普通のお店が開いて、人の動きが活発だ。
「お、かわいい嬢ちゃん!見てかないかい?」
「ん?」
キョロキョロと街の様子を見ながら歩いていると、お上りさんだと思われたのか、何やらココナッツみたいな物を売っている出店の主人に、声を掛けられる。
「よかったら、歩きながら飲めるジュースはいらないかい?」
「…これってなんの…実なんですか?」
どう見てもココナッツっぽいが、一応実でない可能性もあったので、言葉に詰まる。
「これはココの実っていう、中に白っぽい身が入ってて、その中に美味しいジュースが入ってる木の実さ!」
(ココナッツじゃん…)
どうやら、名前が違うだけで同じモノっぽい。
「…おじさん、一つだけもらっていい?」
「おう!毎度!」
おじさんからココナッツらしきものを貰い、それを飲みながら、ギルドに向かう。
(ウマ……)
それから5分程歩いて行くと、大きい建物があり、その建物の看板に“冒険者ギルド”と書かれている場所を見つける。
「ここか…」
ライアは冒険者ギルドの前に立ち大きな建物を見上げる。
(ゼルさん達の話では、入り口から入って、すぐ右手は飲み屋兼、食事処で、左手が解体場。
そして、正面にある階段を上がった先が受付だったよね…)
ライアは冒険者ギルドの前で、それなりに緊張をしている事を自覚しながら、ギルドに入ってい行く。
(おぉぉ…ここが“冒険者ギルド”ファンタジーっぽい!)
ギルドに入ると、少なくない数の人が食事や、酒を飲んでいた。
「そっか、今お昼だもんね…」
ここに着いたのがお昼ごろだったので、人は結構多いようで、お昼だと認識したら、お腹が減ってくる。
(受付が終わったら、ここで食事を取ってみてもいいかも…なんか、異世界物のお約束ってないのかな?男の視線は結構感じてる気がするけど…)
もしかしたら絡まれるかも?と少し期待したが、ゼル達のような冒険者ばっかりであったならそれは薄そうだと、思い返し、2階に上がって行く。
2階に上がると、受付は空いていて、5つ窓口があったが、今は1人しかいないようだ。
「あの、すいません」
「はい、どういたしました?」
1人だけいるのは優しそうな男性の受付で、登録しに来たことを話す。
「えっと、冒険者登録しに来たんですけど」
「はい、かしこまりました…5人全員でしょうか?、でしたらステータスカード発行で大銀貨2枚となりますが」
ステータスカード代で5人分が大銀貨2枚であれば、一枚銀貨4枚…村長に聞いた値段と変わりはないらしい。
「えっと…ステータスカードは一枚で、こっちの4人の冒険者登録ってできたりしますか?」
「そちらの4人が全員ステータスカードを所持するのであれば登録は可能ですよ?冒険者ギルドでは、魔物の討伐をステータスカードで確認していますので」
どうやら、個人登録のステータスカードの有無で冒険者が出来るかどうかが変わるのも、聞いていた通りのようだ。
だとしたら、スキルの事を話さない訳にはいかないので、受付の男性に4人は≪分体≫だという事と、分身体に魔物退治をさせることを説明する。
「……すこし、お待ちいただいてよろしいですか?」
受付の男性はそう言って、奥に消えていったので、しばらく待つことにする。
そしたら、5分ほどで、受付が戻ってくる。
「すみません、さすがに私の独断で決めかねましたので、ギルド長にお会いしていただいてよろしいですか?」
(お?これはあれだろうか…ギルド長が強さを見る的なやつか?)
話の中身的にあり得ない話だが、似たような状況にライアは少し期待をしてしまう。
「あ、はい」
「では、こちらの応接室にてギルド長がお待ちです」
ライアは、男性の後を付いて行き、応接室らしき部屋に通される。
(戦いは…なしっぽいね)
ライアはほんの少しの落胆を感じながら、受付さんの後について部屋に入る。
「失礼します。ギルド長、お客様をお連れしました。」
「失礼します」
「おう、来たか…」
部屋に入ると、如何にも男らしい喋り方だが、確かに女性の声がする。
声の方を見るとソファーに座った、緑色の髪を肩程に伸ばしたギルド長らしき、女性が居た。
「よく来た…オレはこのリールトンの街の“冒険者ギルド”ギルドマスターのシュリア・アンデルセンという者だ。」
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