始動の優しさ







「…おはようございます」



「おはようライアちゃん…もうそろそろ、みんなを起こす予定だから、先に顔を洗ってきたら?」



「そうします」





―――朝になり、見張りをしていた、ミリアナに声を掛けつつ、顔を洗いに行き、目を覚ます。



ライアはこれまで、野営や、家以外の所では寝た事が無かった為、朝起きた際に若干、状況を把握できなかったが、それくらいしか問題はなく、出発の準備を始める。



「それじゃぁ出発しようか!」



全員起きてから、すぐに軽食をとり、早めに街に向けて出発する。



昨日、捕まえた盗賊を街まで連れていく際に、馬車に置いておくスペースは無かったので、縄につないで、歩かせることにした為、早めに出る事になった。



(馬車のスピードを落とすって言っても、早歩き位のスピードを街まで…あぁはなりたくないね…)



馬車が出発してから、止まると首が締まってしまう縄におびえながら、盗賊たちは歩きずらそうについてくる。



「…ラルフさん、街まではあと、どれくらいなんですか?」



「んー…このスピードなら4時間くらいかな?もしかしたら5時間を超えて、お昼時になってしまうかもだが」



どうやら盗賊への罰は十分らしい。






―――――――――――

――――――――

―――――






「…お、見えてきたね」



野営地を出発してから、トコトコと馬車を進ませること、5時間ほどで、街の城壁らしきものが見えてきた。



(おぉぉ!デカい!!…村は木の外壁だったけど…やっぱり大きい街は石造りの外壁なんだ…)



遠目に見える外壁は、高さ10~15メートルほどの高さで、見える範囲はずっと外壁で囲まれており、街のデカさに驚く。




そんな街の外側に興奮していると、街の入り口である門に着く。



「止まれー…後ろで縛られてる奴らは盗賊か何かか?」



門番らしき人に、馬車の後ろにつながれた人たちを確認して、それなりに驚くことなく、状況を聞いてくる。



「はい、ここから3時間ほど道沿いに行ったところで野営中に襲われましたので、捕えて参りました」



「よし、ならまず馬車の代表はあんたかい?ステータスカードは?」



「持っていますので確認してください」



ラルフさんが門番の人が持ってきた、魔道具らしきものにステータスをかざす。



「…あれ、何やってるんですか?」



「あれは、身分証明と自身の潔白を証明するために調べてもらっているんだよ」



馬車の中でゼルに聞いてみると、どうやらステータスカードの【称号】の部分に、人を殺すと【人殺し】のステータスがつくらしい。



盗賊をやっているのは、どこかで人を殺してしまい、街中に入れなくなったような者が多いらしい。



しかし、【人殺し】の称号をある者を殺してしまっても、【人殺し】の称号は付かないとの事だ。



「それに、もし、仮に事故で人を殺してしまった場合は、故意ではない、とわかったら、あの機械で称号を消すことも出来るしね」



「あ、そうなんですね…」



そんな話をゼル先生に教授してもらっていると、盗賊の方のステータス確認も出来て、盗賊の方は10人全員に【人殺し】の称号があったらしく、こちらの言い分が正しい事が証明された。





「こちらが10人分の賞金です」



「はい、確かに」



盗賊たちは5時間も歩かされ、死にそうな顔をしたまま、門の中に連れていかれ、門番の人からラルフさんが賞金を貰うことが出来た。



「それじゃぁこれはアインス君達に渡すよ?」



「はい、それでお願いします」



「え?いやいや、ちゃんと分けましょうよ!」



ラルフは、ゼルと示し合わせたかのように、アインスへ賞金が入った袋を渡してくる。



「これは昨日のうちに話して、決めていた事なんだ…

すまんなアインス君、僕たちはおそらく、君たちが居なければ死んでいただろうしね」



「そうね、このお金は私たちは貰えないわ。

…それでも貰いたくないって言うなら、今度冒険者ギルドで会ったらお酒の一杯でもおごってくれると私は嬉しいかも♪」



「ミリアナさん…それってタカってないっすか?

…まぁそれに、みんなはこれから冒険者になるんすから、最初はお金が掛かるもんす。賞金を使って頑張って欲しいっす」



ゼル達は誰一人、賞金はアインス達の物と譲らないようだ。



(この世界の冒険者ってみんなこんな良い人ばっかなのかな……)



ゼル達は、死ぬと思いながらも、昨日今日会った子供と、契約していたラルフさんを逃がそうとしていたし、世間の事を知らず、色々な事を聞くと、全部教えてくれた。



(…こんな人たちにあんまり隠し事はしないんでもいいんじゃないかな?)



ライアは村でも両親と門番のカイン、村長くらいにしか、スキルを話していない。



スキルの詳細に関しては、両親にしか教えていなかった。



この世界では、基本的にはスキルを隠すのが常識だと思い、あまり深く考えずに隠していて、申し訳ない気持ちになる。



(そうだね…これから全員に隠すんじゃなくて、初対面の人には隠すくらいでいいのかも?)



「えっと…すいません実は皆さんに黙ってたことがあるんです。」



ライアは、アインスを通さず、ライア自身でゼル達に話す。



「え…ど、どうしたの?」



「実は…僕たち5人全員、同一人物なんです!!」




ライアは申し訳なさげに、ゼル達4人に自身の秘密を話す事にした。





そのライアの告白にゼル達4人は




「「「「ん?」」」」



全員が全員、何を言っているのか分からない顔をして、首をかしげる。







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