~閑話、とある門番と鍛冶屋の小話~





―――――森の門番、カイン



俺はカイン、村と魔物の出る森を隔ててる、門の門番をしている。



門番の仕事は、森に入る人の確認と、小さい子供が間違って森に入ってしまわないように、監視する役目だ。



一応、森から魔物があふれて、攻めてきたりした時なんかにも、すぐ気づけるように居る目的もあるが、俺が門番の仕事に着いてからは、そんな事は一度も起きていない。



…とまぁそんな感じで、あまりやる事の無い門番の仕事なのだが、少し前から面白い子が森に出かけるようになっていた。



「カインさん!こんにちわー!」



「あぁおはよう、ライア…今日は1人だけで森に行くのかい?」



その子は、5歳の時にもらった≪分体≫という、普通であれば使いこなすのが難しいスキルを貰いながらも、器用に2~3人を操作してしまえてる、ライア君という男の子だ。



「うん!今は畑の仕事が忙しいから、そっちに回してるんだ!」



子供特融のあどけない笑顔で元気に話す姿は、最近の癒しである。



しかし、いつもは2人が森に入っているのは知っているが、畑の手伝いもしていると聞いているので、分身体は何人いるのか、疑問におもってしまう。



「そうか…ちなみにライアは分身体を何人出せるか、聞いてもいいかい?いや、別に言わなくてもいいんだが、気になってね」



「えっと、この間レベルが上がって、7人出せるようになったよ!」



「そうかナn…7??…それはすごいね…全員きちんと動かせるのかい??」



はっきり言って、自分だったら1人だけでも操る自信はないが、現にいつも分身体2人が動いているのは見ていたから、すごいとは思っていたが、精々ライア本人を含めて、3人が最高だと思っていた。



「えっと、ずっと使ってると≪分割思考≫ってスキルが取れるんだけど、それのおかげで全員動かせるね!」



≪分割思考≫というのはカインは聞いたことはなかったが、どちらにしてもライアは一度に、7人の分身体を操れるという事なので、それはすごい事だ。



「はぁぁ…あの“囮”のスキルを、ここまで化けさせるなんて…

ライアは絶対にすごい人になれるな!あははは」





それからライアを森に見送り、門で出迎える日々をしばらく続いていた。







―――――――――――――――

――――――――――

―――――――





「ツインハンドベアー!?」



今日は4人の分身体を見送って、帰ってきたら、森の奥にたまに出る“ツインハンドベアー”という魔物を狩って、戻って来た。



「…はぁぁ…ライア君はすごいってわかってたけど、まさか10歳未満の子がそんな魔物を狩っちゃうとは思えないよね…」



「ハハハ…狩れちゃいました!」



こんなあどけなくも、男の子にも女の子にも見えてしまうような子が大人でも倒せないほうが多い魔物を狩って来たんだ、驚かずにはいられないが、“ライアならありえるか”とも思ってしまう。



それから、ライアは熊肉のおすそ分けをしてもらって、そこで別れる。




「うーん…予想より、早くに大物になっちゃうかもな?」



ライアの将来をほんの少し考え、どんな風になるのかを想像しながら、ライアの居なくなった先を見つめる。





―――数時間後…




「あ、カインさん!今度はオーク狩って来たんで、またおすそ分けしますね!」



「……朝、ツインハンドベアーを狩って来たばかりなのにかい…??」



この子はすでに大物なのだと考えなおしたカインであった。









―――――鍛冶屋の親父





最近、俺の鍛冶屋にちょくちょく現れるようになった子供がいる。



―――ガチャ


「こんにちわー!またツインハンドベアーの皮なんですけど…」



「あぁ…状態はいつも通り、使えるものだな、買取でいいか?」



この子はゴートンところのライアという名前らしく、森に入りゴブリンのみならず、オークやツインハンドベアーを討伐してくる、かなり変わった子だ。



「買取でお願いします!よかった…オーク肉とかは在庫にいっぱい過ぎて、買取拒否されちゃってたんで、この皮もそろそろダメかなって思っちゃって…」



どうやら、肉屋に買取を拒まれるほど、オークを狩っているらしい。



(そりゃぁこの村は200人くらいしかいないんだ。

毎日、納品していたら、そりゃぁ消費しきれんだろうな)



ライアは森で色々な魔物の素材を鍛冶屋にも売りに来ているので、肉屋に大量に持ち込まれる様子を簡単に想像できた。



「ありがとうございます!…あのぉ…また剣と防具を作ってもらってもいいですか?また必要になっちゃって…」



「ん?もう駄目にでもしたのか?…完全に折れたとかじゃない限り、打ち直したりもできるが?」



この子が最初に来てから、少ししてからなぜか、4人分の防具と、剣を3本を注文していたが、そのどれかが壊れたのかと、疑問に思う。



「えっと、すいません、壊れたとかじゃなくて、スキルの関係で必要になったとかなので」



「あぁ…そうか、わかった。大きさは前と一緒で、君と同じ大きさでいいのかい?」



「はい!それでお願いします」



前に作ってから、まだ日が経っていないから、大きさは変わっていないだろうが、一応採寸をしてからライアを帰す。



「しっかし、ゴートンの奴は、自分の子に森に行かせて、心配じゃねーのか?…単純にスキルが良くて、安心して行かせれるって感じなのかね?」



スキルの事は特に話していないので、鍛冶屋の親父は勝手に想像で、めちゃくちゃ強いスキルを取ったのだろうと考えることにする。



「だが、あんだけ可愛いなんだし、無理に森で戦わせたりしないでも、いいと思うんだがな?」




実はライアは、鍛冶屋の親父さんに自分の性別に関しては特に明言をしていなかったので、ライアは女の子だという勘違いをされていた。



その間違いは、ライアの防具にも影響しており、少しだけ胸元に成長しても大丈夫な余裕を持たせたり、下半身はスカートのようにひらひらとした、フリルが付いた、女の子仕様になっていたりするのだが、それが普通なんだとなぜか、ライアは気づいていない。



「…よし、どうゆう訳で新しい防具と剣が要るかはわからんが、早く作ってやるか…」



そんな勘違いをそのままに、新たな女の子仕様の防具が作成されていく。






ちなみに、カインは防具が女の子仕様なのをわかっているが、似合っているし、かわいいと思っていたので、特に指摘はしていない。







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