始まりと小金持ち









ライアはお昼ご飯を食べ終わり、食器などを分身体に片付けさせ、自分は寝室に移動し、村長に聞いたネタっぽいスキル≪変声≫を取る為に、1人声を変えて声を出す練習をする。



「これってなにか戦闘に役立てれるかな?(低音)」



「まぁ…スキル集めの一環だし、そのうち分身体1人1人で声を変えて、ロールプレイっぽい事をするのも楽しそうだし…いっか!(高音)」



何とも傍から見たら奇妙な光景だが、見られるとしても事情を知っている家族だけなので、気にせず森に向かわせた1,2,7,8号の様子に注意を向ける。



「さぁてさて…森の奥にはぁどんなぁまものがいるのかなぁぁ(息の抜ける声?)」








――――1号side





村の門を抜け、森に入り、奥地を目指しながら歩いて行く分身体4人。



ちなみに他の分身体は朝と同じくお手伝い組である。



今回は山菜の採取はするつもりが無いので、1号の持っている剣以外は、手ぶらである。




森を歩いて行く事15分程で、いつも散策している浅瀬エリアの端に到着する。



「よっし!早速行ってみようか!」




興奮する気持ちを抑えるように声を出し、足を進めていくと、10分程進んだところでゴブリンが現れるようになる。



「――よっと!!」


――メキッ!



「グギャッ!?」



ゴブリン退治は慣れたもので、7号が4匹のゴブリンたちを素早く倒していき、最後のゴブリンもあっさり絶命させる。



(ゴブリン如き、恐れるに足らず!)



そんな調子で歩いて行くと、すぐさままたゴブリンが出てくるが、それも特に苦戦もせづに倒していくが…




(ちょいと多いな…)



最初のゴブリンと遭遇してから、かれこれ30分ほど経つが、すでに倒したゴブリンは30匹にもなる。



「さすがに1分に1匹ゴブリンは面倒だな…」



そのままどうする事も出来ずにゴブリンを倒し続けていくと、おそらくゴブリンの巣のような物を発見する。



(ゴブリンの巣に向かって歩いてたなら、そりゃ出会うゴブリンは多いわなぁ…)



いっその事、ゴブリンの巣を潰してしまえばある程度ゴブリンの出現も減るだろうと考え、ゴブリンの巣の中心に向かって行く。




「「「ギャギャギャアァァギャ!!」」」




「ダリャァ!!」


―――ザンッ!!



おそらく100以上はいるゴブリンの群れに、1号は剣で敵を切り払って行き――




「……フン!!」


―――メコッ!



7号と8号は≪格闘技≫近づきざまに首を蹴り折り――




「“アースボール”!!!」


―――ドガガガガァッー!!!!



2号の魔法で一気に大量のゴブリンをなぎ倒していく。




「…まだまだ、いる…ねっ!」ザンッ!!




魔法である程度一気に、ゴブリンを一掃できるので、まだいいが、これを魔法なしでやるとなったら日が暮れるなと感じてしまう。




「“アースボール”!!」



―――ズガガガガン!!!







――――――――――――――

――――――――――

―――――――







戦闘が始まって10分位経って、やっとのことゴブリンを一掃することに成功する。




(これだけいるんなら、浅瀬であれだけ狩っても居なくならないのはわかるなぁ…)



毎日森で平均5匹くらいは狩っていたが、この巣にいたのは結果的に150匹くらいは倒しているはずだ。




(っと、2号は結構魔力使っちゃってるな…なら2号に剣を移して探索をしよう)



と、ここで魔法が使えるようになって一つわかった事がある。≪分体≫の特性というか、強みである所なのだが、分身体を生み出す際には魔力が5消費されるのだが、分身体自体は魔力がマックスの状態で出てくるっぽいのだ。



なので、おそらく分体を8体出すと、ステータス上で魔力は1万8千以上になり、魔法はほぼ使い放題になるみたいだ。



しかし、分身体が魔力を使い切ったら消えてしまうので、分体の魔力残量を感覚で8体分把握しなければならないので、注意は必要である。



ちなみにこの検証は3,4号が、お昼ご飯を食べている間に、畑近くの空き地で検証していた。







2号に剣を持たせてから、ゴブリンの巣を出発し、さらに森の奥地へ向かって行く。



(……≪索敵≫に反応ありだね…こいつはまた見た事ない感じだけど…)



索敵に反応があった所に、おなじみの≪潜伏≫を使用し、向かってみると…



(おぉぉぉ…あれはオーク!!どこから見てもでっかい豚が二足歩行してるようにしか見えないけど!あれぞオーク!!)



見つけたのはファンタジー物ではゴブリンの次の次に有名な魔物に興奮するライア。



(数は2匹しかいないし…大丈夫そうだし、やってみようかな!)



ちなみに3号からとぉさんに聞いてみると名前は“オーク”であっていて、ツインハンドベアーより弱いが肉は同じくらい美味いらしいので倒したら持って帰ることにする。




それからはすぐさま戦闘に入る為に、一応風上に入らないように気を付けながら、オークの近くまで≪潜伏≫状態で近づいて行く。




「ぶご…ぶひ…」



「ぶほ!ぶほ!」




オークはどうやら何か、小動物の肉を食べていて、こちらに気づいた様子はない。




(よし…気づかれていないのなら一匹は魔法で倒そうか…)



もう一匹は魔法を温存して、他の≪格闘技≫か剣で倒してみることにする。




「“アースニードル”ッッ!!」



―――ザグンッ!!!!




「ぶぎゃあぁぁぁぁ!!」



「ぶひゃ!?」



一匹を串刺しにしたのを確認して、もう一匹に2号が向かう。



―――ダッ!!



「ぶひ!!」



すぐさま残ったオークは敵襲を理解し、2号を見据える。



「ぶひゃああ!!」


――ブンッ!!



「…いよっと!!!」スッ


――ズバッ!




「ぐぅぅひゃぁぁ!!!!」




オークは2号を遊撃しようとそのデカい腕を振り下ろしてくるが、いとも簡単に横に回避しつつ、オークの横の腹を切り裂く。



「んー回避したせいか、思ったより浅かったな…」



「ぶひゃぁぁあ!!!」



2号に傷を付けられ、怒りのままにこちらに向かってくるオーク。



「「―――ドリャァァッ!!!」」


―――ドンッ!!!



「ぶふぅ!?!?」



――その背後から静かに近づいて来ていた7号と8号はオークの側頭部目掛けて、飛び蹴りを放ち、オークは前のめりに倒れる。




「ぶひゃぁぁ…ぶふぅ…」



オークは脳震盪でも起こしているのか、すぐさま起き上がろうとして、そのままバランスを崩す。



しかし、オークの倒れた目の前には剣を持った2号が居るため、その努力むなしく――



「よっと!!」


―――ザクッ!!



「ぶクッ!………」



2号はオークの首元に剣を突き立て、止めを刺す。



「んー!剣なら1対1でも戦えそうだけど、素手だと2人はいりそうだなぁ…」



後ろからの不意打ち気味に、側頭部を強打されても脳震盪なのだと、反省し、今後の課題だなと確認する。




「よっし…この2匹を解体して、村に戻ろうか!」







―――――――――――――

―――――――――

――――――






「1体分のオーク肉全部で銀貨5枚…熊肉より沢山、肉が取れた事を加味してもオーク肉の方がコスパがいいな…」




オークを村へと持ち帰って、肉屋に売ると、オーク1体分で銀貨5枚と(家族とカインの家族分を抜いた)半端なオーク肉が銀貨3枚と小銀貨5枚で、朝のツインハンドベアーの分と合わせた合計で大銀貨1枚、銀貨3枚、小銀貨5枚も稼げてしまった。



(日本円換算で日給、約13万5千円…小金持ちな気分…ヤバい…このまま持ってたら、無駄遣いしそうだ…)




この得たお金の使い道を、夕食時に相談しようと思うライアであった。






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