始まりとほうしゅう






―――2号8号side




「―――≪解体≫!!」



ライアは熊の魔物を倒し、今までほとんど練習する事の出来なかった≪解体≫のスキルを使って、熊の魔物を解体していく。



≪解体≫は村で育てた畜産の動物たちを偶に、解体させてもらって手に入れたスキルだが。毎日動物を絞める訳でもないので、あまり育てれていないスキルである。



「…皮…爪、魔石と…肉も食べられるかもだし、取っておこうかな…?」



ちなみに魔物には魔石が必ず持っているが、ゴブリンから取れる魔石は使い道がないほど、小さいので取ったりはしない。



「…よし!解体も出来たし、今日はもう、村に持って行こうかな?」



熊の肉や、皮、魔石などが、かなりの量になる為、こちらのフォローで近くまで来ていた1号と7号にも、素材を持ってもらう。



「結果、2号と8号だけで討伐できたけど、1号の持ってる“剣”で戦えるかも試しては見たかったけど…」



実はステータスにも表記はされていたが、≪剣術≫のスキルは持っているため、それでの戦闘も考えたが、1本しかない剣を所持しているのは、1号だったので、今回は魔法のみで倒した。



(まぁどっちにしても、今の≪剣術≫レベルの剣なら倒しきれないと思うし、しょうがないか!)




≪剣術≫を取得してからは、とぉさんに買ってもらった剣で訓練と森での実践で、レベル上げをしているが。やはり一振りしかないので、効率は悪く、レベルは3までしか上がっていない。




「っと、それより一応とぉさんに報告しとこうかな?」








―――――3号side




「とぉさん!ちょっといい?」



「んー?どうした?」



畑仕事を手伝っている3号と4号のうち、とぉさんの近くに居る3号からとぉさんに呼びかける。



「えっと森の中に、腕が4本ある熊の魔物を見つけたんだけど…」



「なに!?“ツインハンドベアー”か??」



どうやらあの魔物はツインハンドベアーというらしい。なんとも名は体を表すという言葉にぴったりだと感心しつつ、話を続ける。



「その魔物を倒しちゃっても良かったよね?普通に襲い掛かって来たから人に襲い掛かる魔物だと思うけど」



「あぁ、そいつは倒せるなら倒した方が良い魔物だが…倒せたのか?怪我はあるか??」



「大丈夫!2号と8号の2人で倒せたよ!」



「そりゃぁすごいぞ!ライア!ツインハンドベアーはとぉさんでも一人じゃ倒せないし、冒険者達も苦戦する魔物だ!」



「えへへー魔法の力で倒したんだ!」



とぉさんに倒したときの状態やどう対処したかなどを話し、処理の事をとぉさんにどうすればいいのか確認する。



「魔物の肉は普通の動物より基本的には美味しいから、その熊肉は食えるし、売ればまぁまぁな値段で買い取ってもらえるぞ?」



熊肉は採取していてよかったようだ。



「皮なんかも取ったのは正解だな、鞣して使えば、皮の鎧なんかにも使える…が、爪なんかは形が独特だから、精々小物の材料位にしかならないから、それはいらないだろう」



「そっかぁ…んじゃ今言ったのは持って帰るね!…魔石はどこで売ればいい?」



「魔石は冒険者ギルドや魔道具屋で買い取ってもらうんだが、この村なら、月に一度来る商人に売るしかないな」



「わかった!なら家の倉庫に仕舞っておくね!」



熊の材料に関して、確認を済ませて、要らない材料は捨て、残りの材料を村に運ぶことにする。








――――2号達side




「ツインハンドベアー!?」



2号達4人は素材を村へと持ち帰り、門に居たカインに持ってきた素材の正体を話すと大声で、驚かれる。



「…はぁぁ…ライア君はすごいってわかってたけど、まさか10歳未満の子がそんな魔物を狩っちゃうとは思えないよね…」



「ハハハ…狩れちゃいました!」



今一度よくよく考えると、自分は9歳だったな…と考えるが、そこはもう自重するつもりが無いので開き直る。



「素材は全部売るのかい?」



「肉はある程度家族と一緒に食べて、後は全部売るつもりです!」



「そっか…こりゃゴートンさんも鼻が高いだろうねぇ!」



「えへへ!カインさんにも熊肉、おすそ分けしますね?」



「ホントかい?そりゃ嬉しいよ」



熊肉は絶対に食べきれないだろうし、ほとんどは売ることになるだろうけど、いつも顔を見合わせているカインさんくらいに、おすそ分けしても罰は当たらないだろう。





それからは皮を鍛冶屋に売りに行き、熊肉を肉屋に売りに行く。



今更だが、村にはお店というお店は、鍛冶屋と肉屋、畑で取れたものを売る八百屋、あとは小さい宿屋くらいしかなく、物を売りに行く際は、ほとんどが商店だ。




うちで取れた野菜も八百屋に卸しているが、野菜を売るのも自分でやれば儲かると思うだろう。しかし、基本この村は他にも農家はいるし、農業と商店の兼業は時間的にも無理なので、八百屋さんがちゃんと機能しているわけだ。





(おぉぉぉ熊の素材を売って銀貨5枚…中々な収入になるね…)




お金に関してもついでに説明していくと、お金は…



銅貨…10円


大銅貨…100円


小銀貨…1000円


銀貨…10000円


大銀貨…10万円


小金貨…100万円


金貨…1000万円



と、日本と同じ10進法の法則で大きい硬貨になって行く。




つまり、ライアはあの熊を倒して、5万円の報酬という事だ。



「これで銀貨5枚で、まだ魔石の売買もあるんだもんね!…そう考えたら結構いい稼ぎになりそうだなぁ…もっと熊いないかな??」



普通はツインハンドベアーの討伐に命を落とす危険もあって、命を懸けて5万円は割に合わないと感じそうなものだが、ライアに命の危険はないので、とても魅力的な獲物に感じている。



「うーん…森のさらに奥にいく事って許してもらえないかなぁ…?」




今までは森の奥には行かず、浅瀬でゴブリン退治ばっかりしていたが、森の奥に行けばもっと強くて、お金になりそうな魔物もいるはずなので、どうにかとぉさんに許可が貰えないかと思考する。









―――――――――――――――

―――――――――――

―――――――






「いいぞ?」



「え?いいの?」




家に着き、魔石を大事に倉庫に仕舞ってから、分身体に食事の準備を手伝わせて、ライア本人は森に行きたいという考えをとぉさんに伝えると、あっさり許可が下りる。



「そんな簡単でいいの??」



「まぁ元々10歳くらいからは森の奥に行ってもいいだろうとは思っていたが、ツインハンドベアーを倒せるなら、もう森の奥に行っても大丈夫だろって事だな!むしろもう俺より強いんだ!止める理由はないさ!」



とぉさんは息子の成長が嬉しそうに機嫌よくそう言ってくれる。



「それに許可って言っても≪分体≫のスキルありきで、ライアが危険な目に合わない前提の話だからな!」



「それでも分身体達が消えちゃうような事が続くのならかぁさんは止めるからね??」



「あぁ…そうだな!それは約束するんだぞ?」



「えっと…わかった!気を付ける!」



その返事をして、両親の許可をもらうことが出来たので、お昼から早速、森の奥地の探索に行こうと、テンションを上げつつ、お昼ご飯にする。





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