始まりのピンチ?






(魔法があっさり出来てしまった…)




家の寝室で魔法を試してみるとあっけなく成功させ、布団を軽く濡らしてしまうという出来事から、証拠隠滅と言った勢いでわずか3分で雑巾を持ってきて染み抜きを終わらせ考えに耽る。




(なんでこんなあっさり魔法が出来たんだ?…俺が特別な事はしていないと思うけどやったことは2つだけ)



ライアが行ったのは≪魔力操作≫を手に入れる為の練習でいつも行っていた魔力の移動とそれを変換させるイメージ、それに魔法自体のイメージを考えながらやっただけである。



(その中で他の人がやってなさそうなのは、魔力を水に変換させるイメージかな?)



ただこれは思いつけば誰でも出来ると思うし、現にライアは普通にそのイメージが必要なのかと思ってやってみたらできている。



(ちょっと一回畑にいて、今仕事が少ない4号で魔法を試してみよう)







―――分体4号side




「ッふ!」


――ジャパァ


4号は先ほどと同じイメージで水を出してみて、分身体でも出せるのを確認する。



「…ここから魔力を変換するイメージを無くして…」



――――……




「出ない…という事は変換するイメージは必要ではあることは確かだね」




一応、他にも試してみるが基本的に必要なイメージは最初と変わらず…



魔力の行使場所までの移動+魔力を使う属性に変換(水や火など)+魔法が行使された際の動きや、大きさのイメージ=魔法(結果)



が起きるようなのは変わらないようだ。







――――ライアside




「うーん…だとしたらなんで他の人はこれを出来ないんだろ?…というより、僕の他の要因で、簡単に出来てるのかな?」



一応、ライア自身で特別な事と言えば、特殊スキルを持ち、他にもたくさんのスキルを保持している事もあるが、スキルの効果的には関係はなさそうである。



「だとしたら…ステータスのパラメーターか??」



ライアのパラメーターは最初以外はどれくらい増えたかなど色々記憶している。



「その中で高い数値は圧倒的に器用さだ…もしかしてこれか?」



ライアは頭を大変酷使する≪分体≫を使い続ける影響か、器用さのパラメーターだけ51と一際高い。



村長の話では一般的な大人の平均値は3~40とからしいので、器用さは断トツで高い数値である。



一応、知識力も35はあるのだが他の大人でもそれ位は居るだろうから今回の原因からは省く。




(なら、器用さが魔法の発動を補助した…的な仮定が今の所はしっくりくるかな?)



「まぁここで考えてても、詳しくはわからないだろうし、魔法が使える事だけを喜ぼう!」




と、自分の考察を一旦やめて、そろそろかぁさんと1号が作っている、夜ご飯の準備を手伝おうとリビングに向かう。








―――――翌日





「よし、今日は分身体4人で森に行って、2人は畑でもう2人は家で手伝いをさせておいて…僕は空き地で魔法の訓練かな?」



分身体が4人に増えてからは毎日寝る前にすべての分身体の経験値を回収して消してから眠っている。



さすがに全員出したまま寝るのは狭いし何より色んな感覚があって眠れなくなる。



かぁさんは寝る時に1体は出していて欲しいみたいだが、今は何とか一人で寝れている。



そうして朝起きてから、分身体を8体生み出すとそれぞれ、家の手伝いやスキルの鍛錬に向かわせて、ライア本人は空き地で、魔法の練習をする。



ちなみに分身体達は1号2号は髪留めで見分けれるようにして、3,4号は畑仕事で使う麦わら帽子を色違いで被り、5,6号はツインテールとポニーテールの女装、7,8号は毎朝髪を切って短髪少年になるようにしている(分身体の髪は体から切り離されると消える)。







(…一応魔力を使っていて気分が悪くなったりしてもすぐ横に寝っ転がれるように芝生の方で練習しよう…)



まず手始めに練習するのは危険が少なさそうな水属性の魔法だ。



(アニメやゲームなんかで見た魔法をイメージしてやってみよう)



昨日試した3つを明確にイメージしながら集中する。



「……ふぅぅ……“ウォーターボール”!」



――――バシャァン!!



「うおおおおおおおお!!」



手のひらから水の塊が現れ、自分から5メートルほど離れた木に勢いよく飛んでいき、はじける。



「くぅぅぅ!これこそ魔法だよね!…かっこいいなぁ!!」



目をキラキラさせながらライアはその勢いのまま他の属性も試してゆく。




「“ファイアーボール”!!…なんか思ったより小さいかな?」

―――ボッ




「“ウインドボール”!……は出ない…適正は無しかな…?」

―――……




「“アースボール”!!!」

―――ドゴォン!!




「うわ!?」



土属性を試すと予想より威力の大きい魔法が木をなぎ倒してしまい大きな音を立てて木が倒れる。




「これは…僕の適正が一番が土でその次が水で…火がかろうじてある程度…でも風はないって事かな?」





元々この空き地は誰も使っていなく、ライアの訓練場みたいなものなので、木を倒しても気になりはしない。



それ以上に自分の属性を把握し、自分は何が出来るのだろうかと色々考えて忙しいライアだったが少しの異常を感知する。




「ん?森でゴブリンでもラットルでも無い魔物???」



それは森に魔物狩りを担当していた2号の≪索敵≫に引っかかる、普段のゴブリンより大きい魔物の反応だった。





――――2号、8号side




「んー??なんだこいつ…結構でかいな…」



魔物狩りをしつつ、山菜を取っていた2号と8号だったが、周りを≪索敵≫しながら歩いていた2号はその反応を見つける。



「まずは相手がどんな魔物かわからないとな…≪潜伏≫」



一旦、山菜を取るのをやめて、2号と8号はまだ200メートルは先に居る魔物に気づかれないように≪潜伏≫を発動させながら近づいて行く。



(大きさ的には多分ゴブリンの3倍くらいはありそうだけど…)



魔物まであと50メートルといった距離まで近づいて行くとその魔物を視界に捉える。




(いや、熊の魔物はだめでしょ?絶対強いじゃん…)



森の中を悠々と歩いていたのは大きさ3メートル以上はある熊の魔物だった。



(腕も4本あるし、絶対≪格闘技≫じゃ倒せないよねぇ)



これは村に連絡して、討伐隊か森に入るのを規制してもらう方が良いかなと考えるがそこでライアは考える。



(森に入れなくなっちゃうと分身体での山菜採取と、スキルの鍛錬、ゴブリンの経験値全部がしばらくなくなっちゃう…それはダメだなぁ…)



今や毎日森に出入りしているライアにとっては森が立ち入り禁止にでもなったら困る。



(それに…今僕の攻撃手段には…“魔法”もあるんだよなぁ……うん……!!)



実はぶっちゃけると今のライアは、デカい熊の魔物が出てくれて若干の喜びすら感じてしまっている。



折角魔法が使えるというのに、ゴブリンなんかに使ってはオーバーキルもいい所だろう。



丁度いいタイミングに丁度良さそうな魔物でかい熊が現れるなんて、何とも好都合。



(やってみようか…倒せなかったらしょうがない…素直にとぉさん達に頼って森に討伐隊か、出入り禁止にしてもらい、対策してもらおう…)



すでに仕掛けるのは決まっているらしいライアは、ひとまずより討伐成功率を高めるために、少し離れたところで別行動をしていた1号と7号もこちらのフォローに来てもらう。





来るまでにもう少し近づいておこうと、近づいて行き、残り20メートルほど。




「グガァ…?」



(おっとと…)



熊の魔物はゴブリンと違い嗅覚もあるのを忘れて近づいていた為、魔物は鼻を引くつかせながら辺りを警戒している。



(そうですよねーゴブリンは鼻が利かないから忘れてた…)



熊はのし…のし…と2号の方へと近づいてくるとより匂いがわかるようになって来たのかこちらを威嚇してくる。



「ガァァァッ!!」



(もうちょい待ってねぇ?熊さんや……もうちょい…)



熊の魔物がこちらに警戒しながら近づいてきて、距離10メートルくらいで2号は動く。




「しゃぁー!!こっちだよ熊さん!!」



―――ダッ!!!

「ガァァァァァ!!!」



熊の魔物は木の陰から飛び出してきた2号に狙いを付けて突進してくる。



「“アースボール”!!!」


―――ビュン!!




「ガァァ!!」



魔物は目の前に飛んできた岩を寸でのところで躱すも突進途中で避けたため、二の足を踏む。







「―――そこで止まったら的だよ?熊公?」




「“アース…ニードル”!!!!」


――――ザグンッ!!



「グガァぁぁ!?」




少し魔物の近くで隠れていた8号が2号の魔法を避ける為に止まった一瞬のスキを突き、魔法を叩き込む。



今の魔法は、熊の魔物を≪索敵≫で補足してから、急ピッチで出来るかをライア自身が考えて、検証した魔法で、地面から石のトゲを突き上げ、熊の魔物を串刺しにする“アースニードル”だ。




「グ…グガァァ…」



アースニードルは綺麗に決まったが、まだ熊の魔物は絶命してはいないようだ。



しかし、致命傷ではあるだろうし、何よりアースニードルのトゲで身動きが取れない状態だ。



もう大丈夫ではあると思うが、安全の為、魔法で止めを刺す。




「ありがと、楽しかったよ…“アースボール”!!」







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