はじまりともくひょう
そうして、歩いて行く事10分ほどで、いつもゴブリン退治をしている森の中腹エリアにたどり着く。
「それじゃぁとぉさん、1号は辺りの警戒しつつ、2号で山菜を取って行くね!」
「あぁ、役割分担もやれるならそうした方が良いだろうな!」
分体2号が山菜を取りながら、辺りを警戒しつつ、移動していく事20分程経った頃。
「……とぉさん…ゴブリンが居た…」
「あぁ、何匹かわかるか?」
「んーと…見える数だけなら2匹かな?」
「合ってるな…ライアはどうやってゴブリンを倒す?」
「ボクは折角≪潜伏≫が取れてるし、分身体も2人いるから、安全に≪潜伏≫をつかいながら、分身体2人で奇襲するよ!」
「そうか、最初は安全に行動するのは偉いぞ?」
「うん…≪潜伏≫…」
自分の作戦をとぉさんに確認がてら、報告し、そのまま1,2号は山菜のカゴを置いて、≪潜伏≫を使い、静かにゴブリンの所に向かう。
ちなみに余談だが、≪潜伏≫のスキルは別に発声しなくても使えるっぽいのだが、意識の切り替えをする為にライアは発声して発動させている。
≪潜伏≫のスキルがいつの間にか取れていたのだが、スキルを得たと感じるほどの実感はなかった。
おそらく知らないうちに使用してはいたのかもしれないが、その効果は“相手に気づかれにくくなる”という物なので自分視点では気づきにくかったというのもある。
「……」
「ギャギャギャ」
「ギャギャ」
(ゴブリンが気づいている様子はない…これはスキルのおかげかな?)
もうすでにライアは5メートルほど離れただけの木の陰に居るのだがゴブリンは気づいた様子はない。
そのままジリジリと低い姿勢で背後から近寄って行き、残り3メートルまで近づく
(よし……今ッ!!)
気づかれていない状態から1号と2号は同時に飛び出し、近い方のゴブリンには1号が、もう1匹には2号が襲い掛かる。
「ッセイッ!!」
――ドゴッ
「ギギャッ!?」
1号が振り向きざまのゴブリンの側頭部に振りかぶった拳で殴りつけ、ゴブリンを殴り飛ばす。
「ギャギャ!!」
すぐさまもう一匹のゴブリンが事態に気づいて声を上げるが、すぐそばにいる2号がゴブリンの後頭部目掛け、飛び膝蹴りをかます。
「―――セリャァ!!」
―――メキッ
「ギィッ!!……」
後頭部をへこむ程の威力で蹴られたゴブリンはそのまま絶命し、もう一方のゴブリンはまだ生きていたが、意識が飛んでいたので、1号が追い打ちで頭に蹴り込み止めを刺す。
「…ふう…どっちも死んでるのを確認!大丈夫!…とぉさーん!倒したー!」
「おう!見ていたが普通によかったぞ?…それに教えた通りにしっかり死んでいるのを確認したのも偉いな!」
「えへへ!これならボクだけでも大丈夫そう??」
「んー…大丈夫なんだろうが、一応しばらくは様子見だな?」
「そっか、わかった!」
その日は最高で3匹のゴブリンとも戦うことが出来て、ライア自身はとても満足のいく結果であった。
それからお昼ごろまで森で過ごした後家に帰って来て、寝室に2号だけ待機させた状態で昼食を済ませる。
「よし!それじゃぁ今日はもう一つの確認で分身体にかけた≪経験回収≫がちゃんと機能するのかを確認します!」
「おぉぉぉ!」
「わーパチパチパチ~」
今日は魔物を倒すだけではなく、今までずっととぉさんにかけていた≪経験回収≫が分身体でも魔物を倒した際にもらえる、経験値が取れるのかの確認も出来る。
(だから今日は分身体2体に≪経験回収≫を掛けていたので、その成果を今から確認するのだ)
「それじゃ…回収!!」
(分身体1号)
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
経験値
□攻撃力:僅か
□防御力:僅か
□器用さ:僅か
□≪潜伏≫:僅か
□≪格闘技≫:僅か
□経験値:4
経験
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
(分身体2号)
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
経験値
□攻撃力:僅か
□素早さ:僅か
□器用さ:僅か
□≪潜伏≫:僅か
□≪格闘技≫:僅か
□経験値:3
経験
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「あれ!?」
「ど、どうした?ライア?」
「もしかして経験値は入らなかったのかしら?」
「えっと…経験値は入ってるんだけど…その他に≪潜伏≫と≪格闘技≫のスキルの…経験値?が回収できるみたい…」
「あら?そうなの?……それって分身体がスキルを使っても経験値が入るって事なのね?」
「そりゃぁ便利だが、それならどうしてとぉさんと契約してた時に≪剣術≫や≪農業≫は入っていないんだ?」
「わかんないけど…もしかしたらそのスキルを持ってたら、回収できるのかも??多分…」
おそらく、自分の持っていないスキルの経験値まで回収出来るのだとしたら、スキルを取り放題だろうし、特殊スキルまで取れてしまう可能性もある。
そんなスキルなら如何に人気の少ない≪経験回収≫でも欲しがる人は大量に出てくるだろうし、もっと有名なスキルになっているはずだ。
だから今立てた、自分の持っているスキルの経験値のみが回収できるという仮説はおそらくあっていると思う。
「しかし、それならますます、ライア自身は家から出なくても良くなっていくな!」
「あらそうね…ライアはずっとお家に居てくれるとかぁさんも嬉しいけれど♪」
(確かにこのスキルの組み合わせは凶悪と言ってもしょうがない気はする)
「でも、最初にスキルを取るのは本人じゃないとダメだと思うから、ボク自身は色々スキルを取る事を目標にするね!」
(しかし、それでもあれだな、このままいけばほとんど家から出ない俗にいう引きこもり一直線のような気もするが…)
「それならかぁさんが知ってる、家でも取れるスキルとかは教えてあげるわね?フフフ♪」
「そうだな…ならとぉさんも空き地とかで取れるスキルを教えるし、他にも取れるスキルがないかとぉさんの知り合いなんかにも聞いてこよう!」
「え、ほんとに?ありがたいけど、あんまり迷惑じゃない??」
さすがに一子供の為に、おそらく多大な時間と労力が失われそうなほど、話が大きくなっているので、少々申し訳なさが出てくる。
「大丈夫よ~!かぁさんたちもなんだかんだで楽しみではあるし、ライアがすごくなってくれるなら嬉しい限りなんだから♪」
「それにライアの分身体がこの先増えて、出来ることが増えて行ったらむしろとぉさん達を助けてくれそうだしな?…もしそんな時が来たら頼むな!ライア!」
「…うん!!」
助けてくれる、などはおそらく自分に負担を掛けさせないように言った冗談のような物だろうが、ライアはそれがわかっていても心が温かく感じ、素直に喜ぶことにした。
「それじゃぁ明日からもライアは特訓だな!」
「かぁさんも色々ライアに教えてあげるからね♪」
家族の絆が深まったと感じながら、この日からスキルの取得や、分身体によるスキルの修練、魔物狩りなど様々な事を過ごしていく。
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