はじまりのまもの!






―――現在は、門を出て森に入り、20分程たったくらいであろうか、と言ったタイミングでとぉさんが立ち止まりながら話しかけてくる。




「…よしライア!ここら辺には魔物も出てくるだろうし、警戒はしてなきゃいけないが必ず出てくるわけでもない」



「うん」



「かといって、これ以上森の先に行くと魔物の巣があったり、山の強い魔物がいたりするからここから先は分身体でも行っちゃだめだ…というよりとぉさんが怪我をしてしまう!ハハハ!」



「わかった!なら行かないほうがいい!」



「おう!ありがとうなライア!」



森の中で立ち止まった場所はとぉさんが安全に魔物を狩れる安全圏の端のエリアだった。



「それでここで魔物を探すわけだが、探すだけじゃなく、いつもは家の為に山菜を取って行きながら行うんだ!」



「家で食べた山菜のことだね!」



「そうだ!そして今日は魔物探ししながら、ライアに山菜の種類や取り方を教えようと思う」



「わかったー!これから分身体一人で森に行っても山菜を取れるようにだね!」



「そうだな!そしたらかぁさんも喜ぶだろうしな!…ただライアが森に行けるようになるのは魔物を倒せるようになってからだからな?」



「うん、頑張る!」



5歳児が魔物を狩れるとしたら、その魔物は魔物と恐れられるのだろうか?とかなり疑問だが、ライアは≪分体≫で安全に戦えるし、早く倒せるようになるぞ!と意気込む。



「よしじゃぁ…ん?」



「どうしたのとぉさん?」



いきなり喋りかけた口を閉じたとぉさんに疑問を投げかけるととぉさんは少し遠くを見て



「ライア、今日はある意味ついているな…あそこに魔物だ…」



とぉさんに言われた方向を見てみるとかなり遠くに何か動く緑っぽい何かが見える。




「なんか緑っぽいの?が動いてるのがそう?」



「そうだ、あれが魔物で一番弱い、ゴブリンって奴だ」



「ゴブリン!」



(ほほう…あれがゴブリン…ファンタジー物の中で出ないことの方が少ないと言われる魔物の代表さんだな‼‼‼……まぁまだ影しか見えていないが…)




「よし…ライアはとぉさんの少し後ろから隠れながらついてきなさい」



「わかった」



ゴブリンの名前にちょっぴり興奮するライアだったが、とぉさんに指示を受けて、心を落ち着かせながら、指示通りにとぉさんの後を追う。


ゴブリンはどうやらこっちには気づいてはいないようだが、とぉさんは別段隠れながら近づく訳でもないが、極力音を鳴らさないように近づいて行く。




「ライア、この辺は基本ゴブリンともう一種類のラットルという大きいネズミみたいな魔物しか出ないんだが、人に危害を出すのはゴブリンだけだ…ラットルは基本こちらが何もしなければ木の実なんかを食ってるだけだから、見かけても倒そうとしなくていい」



とぉさんはゴブリンに近づきつつ魔物の豆知識を披露していくが、もうゴブリンのかなり近くでいつバレてもおかしくない距離で普通に話している。



(ラットル…大きいネズミで木の実を食べるって事はリスみたいなもんかな??…ってそうじゃなくて)



「そうなんだ…でもとぉさん?普通に話してていいの?ゴブリンに気づかれない??」



「ん?あぁゴブリンなんかはなぁ…別に奇襲じゃないと倒せないというほどでもないし、とぉさんは剣だからな、これで弓使いとからなら奇襲が強いってわかるんだが、どうにもとぉさんは奇襲をするというのがあまり得意じゃないんだ…」



「そうなんだ…というかそんなにゴブリンって弱いんだ…」



「そうだな…多分ライアが1対1で殴り合えばギリギリで倒せるくらいだと思うぞ?」



(ゴブリンの強さ=5歳児かい!?そりゃ奇襲なんてしてらんないわ…)



「ギャギャ?ギャギャギャ!!」



そんな話をしていたらさすがにゴブリンも話し声が聞こえる訳で、ゴブリンたちは自分たちのすぐ近くに人間が居る事に驚き、声を上げ威嚇をしているが、とぉさんは剣を鞘から抜き放ちながら一番近くのゴブリンに切りかかる。




「…フンッ」


―――ザンッ


「グギャァ!」




一番近くに居たゴブリンは抵抗も何もできずにとぉさんの振り下ろした剣に斬られあっさり沈む。




「ギャギャ!」



「ギャギャギャ!」



他のゴブリンは仲間がやられているのがムカついたのか声をあげながらとぉさんに向かって襲い掛かって来る。




「…よし、こいつは死んでるな…っと!」


―――ザンッ


「ギャァー!」



「よっしょ!」


―――ザンッ


「クペェ!」




とぉさんは最初に倒したゴブリンの死をきっちり確認しつつ、余裕を持ちながら近づいてくるゴブリン2匹を切り払いながら、あっさり倒してしまう。



(おおぉぉぉぉぉぉ!!)



その姿は転生者のライアには中々見れることはない剣劇であり、命のやり取りをしているのだが、余りの興奮にライアの中には自分もこうなりたい、かっこよくなりたいといった感情が強くなる。



「よし!全部死んでるな…ライアーもういいぞー!」



「とぉさん!めっちゃかっこよかった!!」



「お!?おおおぉぉぉぉぉ?!そうか?とぉさんかっこよかったか!?」



「うん!!ゴブリンをこうズバッって切り倒して、余裕もあって…めっちゃかっこよかった!!」



「そうかそうか!!ハハハ!」



息子に尊敬の念で見られるのは歓喜物だろう。

とぉさんはデレデレとした顔で嬉しそうに笑っているが、おそらく第3者がその顔を見たら“キモイ”と言われるくらい、顔面が崩れていたが、それを指摘する者は此処にはいない。





「あ!かぁさんごめんごめん!違うの…とぉさんがゴブリン倒すの見て興奮して声出しちゃっただけなの…」



「ん??ライアどうした??」



「あ、あ、ちょっとかぁさん待ってて…ごめんねとぉさん…興奮しちゃって本体と一緒に声出してちゃってたからかぁさんになんかあったのか心配されちゃって…」



「そうかそうか!そんなにとぉさんの雄姿に感動したか!」



「うん!…ちょっとかぁさんにも説明してくるからちょっと黙るね!動けはするから!」



「わかったぞ!…こっちは山菜の取れるとこを探すか!ライアはとぉさんについておいで」



「………」




それからはかぁさんに事情を説明して、かぁさんは家事が終わりライアたちが返ってくる時間まで、ライア本体からとぉさんたちの行動を聞きたいのかせがまれ、現状を実況しながら、山菜を取りつつ、ゴブリンが居れば狩るというのをお昼時まで続けた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る