はじまりの・・・外?






―――分身体side―――




「よーし、畑でやる事やったら早速森に行ってみるか‼ライアは分身体でちゃんと見えてるか??」



「…うん‼見えてるし聞こえてるよー‼このまま畑手伝いもちゃんとできそう!」



「そうかそうか‼…ライア自身は家に居たまま色々出来るのは便利そうだな‼」



「うーん…でも今はまだ本体はお布団の上で目をつむったままだから…もう少し練習出来たら家の手伝いも出来ると思うけど…」



「ハハハ!ライアは偉いなぁ‼かぁさんも嬉しいだろうな‼」



今現在とぉさんと一緒に畑に向かう分身体ライアだが、今の所分身体の操作で本体は特に何もできていない。

朝起きて、寝室の所から動けていないが、かぁさんが家で色々家事をしている音は聞こえているくらいしかわからない。



(畑仕事の手伝いをする際にでも、両方の視点を見ても大丈夫なように練習でもしようかな…)







――――――――――――――

―――――――――――

――――――――





(うぅ~ん…中々にキツイ…)




畑に着いてからとぉさんは収穫前の野菜の状態を見に行き、その間に自分は収穫時期に使うカゴや、ハサミの準備などをしながら本体の目を開ける練習をしていた。



(同じところで自分と分身体を見合ったりして、脳がバグりそうになるよりはましだが、如何せん脳が追い付かない…)



今はカゴを井戸の水で洗いながら、寝室の枕とにらめっこをするという何とも面白い状態で唸っている。



(これをどれくらい続けて行けばなれるだろうか??…しかも≪分体≫はレベルが上がるごとに分身体が増えるらしいし、気が遠くなりそうだね‼はは)



目標は遠いなぁと楽し気な顔をしつつ、カゴなどの道具の準備を終わらせ、とぉさんの所に向かう。



「とぉさーん‼こっちはおわったよー」



「おぉ!ありがとうな‼こっちも大丈夫そうだし、早速森の方に行ってみるか‼」



「うん‼」



(おぉ…ついに魔物とご対面できるのか…楽しみだなぁ…)



森に行こう!と思っていると、とぉさんは畑近くにある倉庫に向かう。



「あれ?倉庫に何か用事なの?とぉさん」



「あぁ‼魔物退治には武器がいるからな‼」



とぉさんは倉庫の奥にあるとぉさんの個室に入ってからすぐに出てくると、ある程度使い古され年季の入った片手剣を持ってくる。



「これが魔物退治に使ってるとぉさんの剣だ」



「おおおぉぉ!とぉさんかっこいいよ!」



「ははは!そうだろうそうだろう!」



ライアは如何にもファンタジーでしか見ないような剣に興奮し、とぉさんはそんな息子の賞賛に喜びが出る。



「よし!それじゃ森に行くか!」



「いこーう!」



何ともほのぼのとしながら魔物退治に森へと向かう2人だった。






畑を出て、村の中を歩いて行くと、遠目に森と森に行けないようにする為の壁があった。

見た感じでは木で出来た外壁で結構頑丈そうで、一か所に門に近い扉が見える。



(ほぉ…村の規模からしては結構立派な壁だ…こことは反対側の村の出口付近は普通に柵だったから、森側だけ立派にしてるのか…)



ヤヤ村はそこまで大きい村ではないが、魔物の居る森が村のすぐそばにある為そちら側の防衛に力が入っているのだろう。



(他の所は柵なのでそっちに回り込まれたりしないのだろうか?)



「とぉさん?」



「ん?どうした?」



「森のほうの壁はすごいけど、反対の方は普通の柵で大丈夫なの??魔物が回り込んだりしてこないの??」



「あぁそれは一応大丈夫なんだ、というのも村の出口、つまりはこことは反対側だが、そっち側には魔物が嫌がる魔力を放つ魔道具が街道に設置されているんだ」



「そんな魔道具があるんだ??」



「そうだ、ただこの魔道具がめちゃくちゃ高いらしくてな?この村が出来た頃に色々よくしてくれていた商人が設置したものなんだ」



「へぇ…ん?でもそれならなんで森側に置かなかったの?」



「さすがに俺の生まれる前の話だから詳しくは知らないが、魔物の住処とかにこの魔道具を置いても暴れて攻撃的になるからあまり意味はないらしいから、森の一歩手前に設置したんじゃないかな?」



「そうなんだ…」



魔道具にも効果にも色々あるという事しかわからなかったが、そういう物があると知れたので良しとしよう。

そんなこんな考えていると門の前に着くと、門の前に一人門番のような若い男性がいる。




「よぉカイン!少し森に行かせてもらうぞ」



「ゴートンさん?え?その子は?」



「俺の息子だ‼かわいいだろ‼」



「初めまして、息子のライアです。」



「あぁご丁寧にどうも…って違う違う!ゴートンさんこの子連れて行く気ですか!?殺す気ですか!?」




おそらく門番か何かなのだろうカインさんはとぉさんに詰め寄る。

カインさんは見た目は髪が青色で16,7くらいのお兄さんといった見た目である

はたから見たら魔物が出る森に5歳児を連れていく親であるし、止めるのが普通だろう。





「いやな?ライアが昨日5歳になって≪分体≫ってスキルを得たんだが、カインも知ってるだろ?今ここに居るのはそのライアの≪分体≫の分身体だ」



「え…あぁなるほど…安全だから連れて行くんですね…」



「分身体のライアです」



「あぁこれまた丁寧に…あれ?でも分身体って経験値もらえないですよね?どうして森に連れて行くんです?」



「まぁ分身体でも山菜取ったり、色々見たりは出来るからな!だから今日は俺の雄姿を息子に見せたくてな!」



「あぁなるほど…」



実際にはとぉさんに契約している≪経験回収≫が一番の目的だが、それはスキルがバレてしまうので名目上の理由を話す。



スキル構成などは親しい人以外には基本隠すので人のスキルを言うのもあまり褒められた行為ではないというのが暗黙の了解だ。

≪分体≫に関しては、森に入る為に明かさないといけないし、そこはしょうがないが≪経験回収≫の方は隠す。




(≪経験回収≫はそんなにいい印象の受けるスキルでもないからバレない方が良いしね)



「まぁそうゆう事なら大丈夫です。むしろ怪我をするとしたらゴートンさんみたいなので気を付けてくださいね」



「あぁ!それじゃライア?基本的にここからはとぉさんの後ろを付いてくるんだぞ?」



「わかった」



カインさんに門を開けてもらい、いざ魔物たちの住む森へ…







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