はじまりのかいし‼







「ただいまぁー‼」



「あらおかえりなさい…遅かったわね?どこかでスキルの練習でもしてきたのかしら?フフ」



家に帰るとかぁさんは食事の準備を始めており、台所からこちらをからかうように話しかけてくる。



「うん‼たのしかったよ‼色々試してきた‼」



「おぉずいぶん機嫌がいいなぁ‼…ライアはずっとスキルを楽しみにしてたもんな‼よっぽどいいスキルが貰えたのか??」



家のリビングにはテーブルに座りながら、こちらを微笑ましく見るとぉさんが居る。



「いいスキルだったのかはこれから試してみないとだけど…村長に聞いたら当たりでもハズレでもないってー‼」



「おおぉぉ…村長はかなり微妙な返しをしたんだな??その割にはめちゃくちゃ機嫌が良さそうだが…」



「≪分体≫ってやつと≪経験回収≫ってスキル‼」



「≪分体≫かぁ…よくたまに冒険者が使う囮に使ったりしてるやつか‼…≪経験回収≫はとぉさん知らんな?」




とぉさんは基本貴族や金持ちしか使わない≪経験回収≫は知らないようだったので、村長と話した事やスキルの説明をしていく。



「ほぉー‼中々に使い方があれなスキルだな…」



「ライアは≪分体≫を試してきたのかしら??なら≪経験回収≫はかぁさんに使って試してみる??」



料理をテーブルに置きながらとぉさんとの話を聞いていたであろうかぁさんが話に入ってくる。



「かぁさんにも試させて欲しいんだけど…ちょっとだけ発見したことがあるんだ‼」



「「???」」



とぉさんとかぁさんに空き地で色々試した事を話して出来た事や、確認した事を話す。





「……って感じでね?もしかしたら家に居ながら、魔物とか倒して安全に経験値とかとれるかもなんだよ‼」



「おぉぉ‼って事はあれか‼ライアは危ない事をしなくても、沢山冒険が出来るって事か‼」



「あらあら‼ライアが怪我しないのはいいわね‼」



「そうなの‼…ん?うんまぁそうだけど…?」



何とも論点が“ライア自身が危険な目に合わず”に色々出来るって言う所に感心してるようだ。



(うーん…愛されてるって嬉しいけど…まぁまだ5歳だしね‼大事にされることは悪い事じゃないし‼)



「えっと…でもまだ魔物を倒したりはしてないし、分身体以外の経験はどんな感じかわかって無くて…だからとぉさんかかぁさんに一回手伝って欲しいんだけど…」



まだ≪経験回収≫は分身体の情報しかない、実際に人間相手には色々違う結果が出るかもしれないので頼んでみる。



「よし‼なら明日一日はとぉさんの経験を回収してみなさい‼」



「あらそうね…お父さんだったら畑で力仕事もするし、たまにゴブリンなんかの魔物が山からはぐれで降りてくるのを退治してるものね」



「あれ?そうなの??畑で出た事なんてあったの??」



「いや、畑に来ないように、山の麓ではぐれのゴブリンは村の住人で持ち回りで退治してるぞ?ライアは朝方から昼くらいまでしか畑を手伝わせてないし、山の麓の森側には行くなって言ってるだろ??そっちでいつもな‼」



(なるほど…ある程度一人行動が許されてから森側に行く事を禁止されていたが、魔物が出るから禁止されていたんだな)



一応、禁止されているから危険なのはわかっていたが、とぉさんたちが魔物を退治していたのは知らなかった。



「丁度とぉさんの畑は明日は昼くらいまでしかやる事は無いしな‼ライアの為に魔物の1体や10体‼」



「いや…無理しないでよとぉさん…怪我されたらいやだし…」



「ラ…ライアぁぁぁぁぁぁ‼父さんがそんなに大好きかぁぁぁ‼‼」



「あらあら~」



とぉさんの暑苦しい子煩悩を目の当たりにし、かぁさんの作った夕ご飯を食べて、片付けと皿洗いをしてから≪分体≫の練習がてら寝室で両方の視点を見る練習をしてから眠りにつく。



ちなみに寝室はとぉさんとかぁさんと一緒のお布団なので、寝る時間にまで分身体を出していると、とぉさんとかぁさんが「息子が増えたー‼」と何が嬉しいのか、2人になった自分を片方づつ抱きしめながら眠ることになった。



(ちょっと狭い…)



ライアにとってはとぉさんに抱きしめられながらかぁさんに抱きしめられている感覚があったので若干の違和感があったが、≪分体≫に慣れる為、そのまま眠りについた。










―――――――――――――――

―――――――――――

―――――――








―――翌日



「よし‼それじゃぁ父さんにスキルを使ってみてくれ‼」



「はーい‼」




朝、起きて目が覚めて畑の仕事に行く前にとぉさんにスキルを使い、昨日の夜に出したままの≪分体≫の分身体をそのまま畑仕事に行かせてみることにした。

ちなみに本体は家でお留守番だ。一応、両方の視点を見れるようになってきたら、家ではかぁさんの仕事を手伝う予定ではあるが…しばらくは無理だと思っている。



「≪経験回収≫‼‼」



フォン

「おおぉぉぉ‼‼これがそうか‼これを了承すればいいんだな??」



「うん‼お願い‼」



「よし‼」


ポチッ!




「…これでいいのか??」



「うん‼これで契約されてると思う‼昨日もこんな感じだったし‼」



仕様なのかもしれないが確認画面がないと出来てるかわからず不安になってしまう。




「よし‼それじゃ畑に行って経験貯めてくるから父さんに任せろ‼」



「ありがと‼…まぁ分身体でとぉさんに付いて行くけどね‼」



「あらぁわたしのライアがぁ…」



起きてからずっと分身体を抱きしめていたかぁさんは芝居がかった様子で悲しみながら分身体とお別れしている。



「それじゃぁ行ってくる‼」



「行ってらっしゃーい!」



「頑張ってねぇお父さん」








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