第2-2話変な毛玉についていってはいけない
映画やお芝居で場面が変わるように、一瞬の暗闇のあと、ハルトはあのトイレにいた。
鏡に真顔の自分が見える。しかし先程までの
「 ………え?」
なにが、いつ、だれが、どうなって、こうなった? 疑問符でいっぱいになりながらもどうにか半身を起こす。こんな時にもとりあえずスマホ、とポケットを探るのは現代人の
(あれ?)
ハルトは制服のポケットに手を突っ込んだまま首を
(羽根はどこいった?)
今朝まではしっかり持っていたはずの白い羽根が消えている。どこかに落としただろうか。今朝からの行動を思い起こしてみると、ふとあの天使と名乗った少女の言葉が頭を
『この羽根には、私の力が宿っています。きっとお役に立つでしょう』
「ああぁぁぁ!」
ハルトは
(さて、どうしよう)
ハルトはゆっくりと立ちあがった。いくら誰も使っている
「え……?」
その瞬間、ハルトは先程屋上から落ちた時以上の
-991391
左手には、黒く
——コツ、コツ、コツ
何かの間違いだろうとじっと左手を見ていると、ドアの向こうから靴音が近づいてくるのが聞こえた。誰かくるのかもしれない。とりあえずここから出ようと
驚いて
決して
「今
薄く整った唇から、低く落ち着いた声が放たれる。
黒い短髪に
ただ立っているだけなのにその存在感と
「……いつまで見ている」
「あ、あの。すみません」
いくら圧倒されたからと言って、初対面の人を正面から見つめていたら不快に思うのは当たり前だ。もしかしたら何発か
顔は
「顔色が悪いな。具合が悪いか?どうした」
何から話したらいいのか、いや何を話したらいけないのか。上手い言い訳も思いつかず酸欠の金魚のように口をぱくぱくしているハルトを、男はじっと見た。そしてわずかに驚くように目を見開いたあと、ぐっと
不良も泣いて逃げ出すような厳しい視線に
「 おまえは何者だ」
「 あの…高校生?……ですけど」
「 人を殺したことは」
「 い、いえ…どうしてそんな事……」
「無いんだな? 」
男が身をかがめて
その大きさに似つかわしくないほど
しかし悲しいかな、産まれたての子鹿はすぐには動けなかった。
「うわっ」
短く悲鳴をあげて倒れ込んだハルトの身体には、しかし覚悟した
「何をしている。行くぞ」
子鹿もといハルトを床に立たせながら短く息を
「あ、おいっ!!」
男の焦ったような声を最後に、ハルトの意識はぷつりと切れた。
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