第2-1話変な毛玉についていってはいけない
天使に謎の羽根をもらった日の翌朝。
原因は今朝のこと。高校生たるもの
(でもなぁ)
大切な第一印象を決める高校生活初日、香水野郎とあだ名がつくよりは欠席の方がはるかにマシだ。そのまま休みたいところだが、昨日聞いた話が頭から離れない。サボりはやはり「悪いこと」なんだろうな、とカウンターの数字を確認しようとすると、不意にどこからか変な声が聞こえた。
「ケケケ、サボりかァ?ワルいコはっけん!」
反射的に振り向くが誰もいない。青ざめるハルトに追い打ちをかけるように、謎の声は
「ゲンテーン、減点だァ!」
ホラーは得意な方だが現実は別だ。ハルトは謎の声を振り切るように駅の階段を走り降り、そのまま学校まで全力で足を動かし続けた。
◇
荒い息を吐きながら教室にたどり着いたのは、ちょうど一時間目の授業が始まる頃だった。教科は数学、ちょうど担任の担当科目らしく、HRからの流れで自己紹介は
「 なんだ、遅刻かい? 君は水島君だね。席は一番後ろだよ」
「あ、はい! すみません」
しばらく廊下で様子を見ていると、ハルトに気がついた担任が教室から顔を出した。いかにもリア充という感じの爽やかな教師だ。教室中の視線を一身に浴びながら、ハルトは唯一空いている廊下側の一番後ろの席へ向かう。しまった、後ろから入ればよかった。
「では、授業を始めようかな」
ハルトが席に座ったのを見て、担任は黒板に数式を書き始めた。ハルトは授業の準備をしながら何気なく左手を見る。昨晩から
「 減った……」
「 なんだい水島君? 引いたら減るのは当たり前だろう?」
思わず
◇
朝には真新しいように聞こえたチャイムの音も、何度目かになると耳に慣れて雑音の一部となる。四時間目のそれが鳴り終わる頃には、ガタガタと机を移動し
しかしハルトはカウンターの数字を気にするあまり、誰かに話しかけるのをためらっていた。昨日から本当に
母親の話に返事をしなかった時、父親とすれ違いざまにぶつかってしまった時、お菓子を食べてゴミをしばらく放置していた時。すうっと黒く
(お昼、どうしようかな……)
さすがにお腹がすいてきた。昼休みの残りはあと十五分ほど、今から
(何だ……?)
視線を合わせると、それは見たこともない黒くて丸い
ハルトは
着いた先は屋上だった。誰も立ち入ることのなさそうな暗く湿った
そうしていつの間にか屋上の端に立った少年は、まるでその先にも空気でできた道が続いているような
途端、ハルトは落ちた。当たり前だ。ジェットコースターよりも速く急降下しながら、人間本当に驚いた時には声なんか出ないのだと、彼は未だ夢見心地のようなぼんやりとした頭で他人事のようにそんなことを考えていた。
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