第31話 犯人の手記より抜粋 その5
1
奴らの息子達の遺体の内、二人に私が奴らから受けたいじめ行為の再現をし、一人の首を切断し、首を切られて死んだ二郎に見立てたのは、それなりの理由がある。
それは告発するためだ。私が犯人であるということを、私自身が奴らに告発するのだ。
惨たらしい細工をされた息子たちの遺体と、復讐を暗示した置き紙。
どれだけ奴らが愚かであろうと、いつかはこの事実に気づくはずだ。
自分たちの息子を殺したのは、かつて自分たちがいじめていた名田順太である、と。
しかし気づいた時にはもう遅い。奴らは死ぬまで消えることのない復讐の火に焦がれ続けるのだ。
なぜなら、奴らが真実を知るとき、私は既にこの世を去っているのだから。
私が味わった復讐の火。それを奴らの心にも灯すのだ。
それこそが私の復讐だ。
ただ奴らを殺してしまうのでは、苦痛は一瞬の痛みだけで終わってしまうだろう。
それでは駄目だ。
奴らはこの先の人生を苦しみ続けて生きていかなくてはならない。
大切な存在を理不尽に奪われる悲しみと苦しみ。
命を蹂躙されるその心地を。
そしてその相手――つまり私に、彼らが自らの手で報復をし、復讐の火を消すことは叶わない。
なぜなら私は自ら命を絶つのだから。
他の誰でもない。
私を殺すのは私だ。
復讐する相手を失ってしまった奴らは、死ぬまで私という存在を恨みながら、復讐の火に燃やされ続けるのだ。
私と同じ苦しみを味わえ。
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