21
「なんでここにいるんだよ。折角、人目につかない場所に連れていってやったのに」
「……やっぱりそういうことか」
本をぱらぱらと捲りながら、俺をちらりと見た希輝の視線にドキリとする。
良かれと思ってした行動だったけど、希輝にとってはお節介だったのだろうか。
「正直、紡久の気持ちは嬉しかった。……でも、やっぱりこれじゃ駄目だと思ったんだ」
「駄目?」
「そう。俺も一緒に探すって言っただろ。それなのに、こんな風に護られてばっかだと、ただのお荷物だ」
俺に向けていた視線を、再び本へと落としてポツリと呟いた希輝に口を噤んだ。
「……そんなこと、気にしなくて良いのに」
「気にする」
俺たちのために、容赦なく飛んでくる視線から頑張って耐えようとする姿に、何故か胸が締め付けられた。
希輝がやると決めたのなら見守るのも一つの選択だと思うけど、強張った表情を見てしまった以上、放っておくことなど俺には出来ない。
「あのさ、適材適所って言葉があるだろ。今は俺が動くとき! 逆に希輝の出番がきたときは遠慮なく頼らせてもらうから、それまで大人しく隅で待機!」
図書室の隅をビシッと指差せば、何も言い返せないと思ったのか、下唇を噛み締めながら戻っていった。
せめてと思ったのか、本を五冊ほど抱えて去っていく後ろ姿はしょんぼりとしていて、いつもの爽やかさは見る影もない。
「……可愛いとこもあんじゃん」
吹き出しそうになりながらも、目的のものを見つけ出すために本を手に取った。
「紡久!」
何冊目か分からない本を手に取ったところで、隅から俺の名を小さく呼ぶ声が聞こえて、顔を上げる。
「解き方とかは書いてないけど、運命の赤い糸について書かれた本があったぞ」
「!」
手に取った本を本棚に戻し、慌てて希輝のもとへと向かえば、目の前にズイッと開いた本を突きつけられる。
そこでは、足首の赤い縄と書かれていたけど、俺たちの小指に結ばれた赤い糸と同じ意味合いのような内容が書かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます