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「この話では、どんなに避けようとしても結局は結ばれる運命らしい」
「……まじか」
「赤い縄が醜い幼女と結ばれてるって聞いて不満を感じた男が、召使に殺すように命じたらしいぞ。その結果、眉間を一突きされながらも生き残った幼女と、十四年後には結ばれたらしい」
「ええっ……なんで!?」
もっとロマンチックな物を想像していただけに、あまりにも理解しがたいエピソードを聞いて顔から血の気が引いた。
本から希輝へと視線を上げれば、希輝の表情も強張っていて、同じ感想を抱いたことが分かる。
「ハッピーエンドみたいだけどな」
「……わけがわからない」
過去とはいえ、自分を殺そうとした男とだなんて、自分だったら絶対に無理だ。
それなのに結ばれたということは、やっぱり赤い糸は何をしても切れないのではないだろうか。
「なんか、いきなり希望を失った感じ……」
「他にも色んな話があるみたいだけど。そっちは糸をしかけて、たどっていく話だったし、俺たちに一番近いのはコレだろうな」
開いたページに描かれた赤い縄で結ばれた男女のイラストを、人差し指で軽くトントンと叩いた希輝に、なにも言えなくなる。
「そんな……殺意マックスで襲った過去があっても、最終的には結ばれるような代物で俺たちは結ばれているのか」
自分の小指を見れば、変わらず奇麗な赤い糸が希輝の小指と繋がっていて、口を噤んだ。
希輝も何と言えばいいのか分からなくなったのか、赤い糸をジッと見つめて黙り込む。
「これ以上は、何も載ってないみたいだな」
「そう……だな。とりあえず図書室から出るか」
希輝が運んだ本を数冊手にとり、二人で本棚に本をしまう間、俺の右側で赤い糸がちらついて、なんとも言えない気持ちになる。
本を片付けている間も、図書室を出る際も、女子の未練たらたらな視線が俺たちの背中を追っている気がして、なんだか凄く居心地が悪かった。
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