15


「人嫌いの人気者と、赤い糸で結ばれてるのか」


 昼休みでの出来事を思い浮かべて、深く溜息を吐く。

 放課後とは思えない明るい光が、教室内を明るく照らしていたけど、俺の心が晴れることはなかった。


「自分だけでなんとかするって言ったけど、絶望的だよなあ」


 一体どうすれば赤い糸が消えるのか、見当もつかない。

 小指に繋がれた、ゆらゆらと揺れる赤い糸を眺めながら深くため息を吐く。


「俺が魔法使いだったらなあ」


 赤い糸が見えるだけでも十分ファンタジー物だ。

 ついでに、それぐらいのオプションがついていても良いと思うんだけど。


「ファイアー! ウォーター!」


 一生懸命手を振ってみても、ただただ赤い糸が揺れるだけで一向に炎も水も出る気配はない。


「……くそ。凡人かあ」


 深く溜息を吐いて、再び固い机へと額をつける。

 そのまま視線を横にずらして、小指に繋がれた赤い糸に消えろと念じながら、ジッと見つめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る