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「人が……嫌いって」

「あいつら、人の上辺だけを見て寄ってくるからさ。嫌いにならない筈がないだろ?」


 心底嫌そうに顔を歪めた希輝に、もう何と声をかけたらいいのかすら分からない。


「だから、これで人が寄り付かなくなるなら良いかなって」

「なっ……」


 確かに、初めて会った時も皆の誘いから逃げるように帰っていったけど。

 まさか、そんな理由があったとは思いもよらなかった。

 折角オモテになる要素しかもっていないというのに、人が嫌いだなんて勿体ない。


「……なんて」


 大きなお世話だよな、多分。

 深く息を吐いて、希輝の胸板を軽くトンと叩いた。


「嫌いなら嫌いで別にいいと思う。ただ、噂についてはごめん。希輝の思い通りにはいかなくなったかも」


 希輝の瞳が驚きで大きく見開かれたけど、気にせず扉へと足を向けた。


「ま、待てよ。幻滅したとか色々と言わないのか?」

「は? 幻滅?」

「見た目爽やか詐欺とか、中身はイカ墨で出来てるのかよとか」


 俺の反応が、希輝の予想とは百八十度違ったのか、狼狽えた姿に吹き出す。

 過去にそんな酷いことを言われてきたのなら、人嫌いに拍車がかかるのも分かる気がするな。

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