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「酷い目にあった」

「悪かったって」


 昨日お世話になった空き教室の窓際で、風に背中を押されるように頭を下げた。

 恐る恐る視線をあげれば、ジト目と目があって慌ててまた下げる。


「……もういいよ。あれは正直、事故みたいなものだ。それに盗み聞きするやつが悪い」


 頭上から降って来た溜息に視線を上げれば、不機嫌そうな表情があった。

 いつもは作り笑いを浮かべているのに、そんな余裕もないなんて、これは相当嫌な目にあったらしい。

 いつもは人の輪の中にいない俺ですら、あれだけの人数に囲まれたんだ。

 この爽やかイケメン君がどんな目にあったのか、考えただけでも恐怖でちびりそうになる。


「あのさ、噂についてなんだけど」

「それならもういい。噂の内容にはかなり不満があるけど、俺にとっては良いタイミングだったのかも」

「良いタイミング……?」


 首をコテリと横に倒せば、希輝が苦笑いを浮かべた。

 きっと、誰にも言うつもりはなかったのだろう。


「俺、人が嫌いなんだ」

「え」


 笑顔と共に爽やかな風が吹いた気がしたけど、言ってる内容は全然爽やかじゃない。

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