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◇
「酷い目にあった」
「悪かったって」
昨日お世話になった空き教室の窓際で、風に背中を押されるように頭を下げた。
恐る恐る視線をあげれば、ジト目と目があって慌ててまた下げる。
「……もういいよ。あれは正直、事故みたいなものだ。それに盗み聞きするやつが悪い」
頭上から降って来た溜息に視線を上げれば、不機嫌そうな表情があった。
いつもは作り笑いを浮かべているのに、そんな余裕もないなんて、これは相当嫌な目にあったらしい。
いつもは人の輪の中にいない俺ですら、あれだけの人数に囲まれたんだ。
この爽やかイケメン君がどんな目にあったのか、考えただけでも恐怖でちびりそうになる。
「あのさ、噂についてなんだけど」
「それならもういい。噂の内容にはかなり不満があるけど、俺にとっては良いタイミングだったのかも」
「良いタイミング……?」
首をコテリと横に倒せば、希輝が苦笑いを浮かべた。
きっと、誰にも言うつもりはなかったのだろう。
「俺、人が嫌いなんだ」
「え」
笑顔と共に爽やかな風が吹いた気がしたけど、言ってる内容は全然爽やかじゃない。
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