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「紡久、あの有名人に告白されたって本当か!?」

「ショック……希輝くんって男が好きだったんだ」

「どうりで……いくら可愛い女子が遊びに誘っても、逃げるように帰っていくわけだ」


 教室に帰った途端、今までにない勢いでクラスメイトに囲まれてたじろぐ。

 この短時間で、もう俺のクラスにまで噂が広まっているのか。


「というか、なんでそんなことに」

「なんでもなにも、俺は女が好きだからってフッたんだろ?」

「はあ!?」


 希輝が青ざめたのは、こうなることが分かっていたからか。

 俺のクラスで、これだけのお祭り騒ぎになるぐらいだ。今の希輝がどんな目にあっているのか、想像するだけでも背中を冷たい汗が伝っていく。


「昨日は男をふったって聞いたから、安心してたのに」

「昨日……?」


 まさかそれって、俺が希輝の手を握り運命と呟いたものの、逃げるように帰られた件だろうか。

 希輝との出来事は全て噂になるのかと思うと、頭が痛くなってくる。


「先生がきたぞー!」


 クラスメイトの声を合図に、皆が後ろ髪を引かれるような表情を浮かべつつも席へと戻っていった。

 まだまだ聞きたいことがあったのだろう。正直、誤解だと訴えることしか出来なかったから、助かった。

 大人しく授業をうけている場合じゃないんだろうけど、今から行っても迷惑をかけるだけな気がする。


「昼休みに謝りに行くか……」


 きっと、出会った頃より冷たくなった視線が俺を出迎えるんだろう。

 今回の件で、マイナスから始まった関係が、さらに悪化した気がする。

 ストレスで胃がやられていくのを感じながらも、重い足取りで自分の席についた。

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