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「……確かに、運命の赤い糸だとは思う」
小さな声で呟けば、雷に打たれたような表情を浮かべながら、希輝が俺を睨んだ。
この顔、絶対に俺が何かしたと思っているな。
どうしても誤解を解きたくて、音が聞こえるぐらい勢いよく、顔の前で手を振る。
「違うって! 俺も昨日突然見えるようになった被害者仲間だから!」
「俺の手を握って、俺の運命って呟いたよな」
「違う! いや、違くはないけど。そうじゃなくて」
益々疑いの色を濃くした希輝の視線に耐えられなくて、下唇をグッと噛んで俯いた。
美形への免疫がなさすぎて、ちょっとした表情も迫力があるから怯んじまう。
「俺も、この呪いをときたいと思ってる」
「……は?」
「信じないかもしんねーけど、俺は女子が好きなんだ!」
叫ぶように訴えれば、何故か廊下からキャーという甲高い叫び声が聞こえ、パタパタと走っていく音がした。
嫌な予感がして希輝を見れば、俺と同じように青ざめた顔が目の前にある。
「今の、もしかして」
「……聞かれたな。さっきまでは居なかった筈だから、今来たんだろう。多分、聞いたのも紡久の最後の言葉だけだろうな」
額に手を当てて深く息を吐いた希輝に、なんと言えばいいのか分からなくなる。
「おまえ、やっぱり絶対にワザとだろ」
「違うって!」
「外堀を埋めようとか、そういう……」
「なにいってんだ!」
凄まじい形相で一生懸命訴えるも、氷のような視線で俺を見る希輝には、もう何も届きそうにはなかった。
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