2
◇
「注目の的だったな、
俺の名を呼んだ友人の
恥をかいた俺を見て面白がる姿に、内心イラつきながらも友樹の小指を見る。
「……ある」
「は?」
友樹の指に絡まっているのは、俺と同じ赤い糸だった。
もちろん俺の赤い糸とは繋がっていないけど、その糸は長く伸び、窓から外へと飛び出ている。
糸の先を視線でたどってみるも果てが見えず、諦めて視線を友樹の冴えない顔に戻した。
もしこれが運命の赤い糸というロマンチックな物だとしたら、現実とは時に残酷だ。
「友樹、高校生の間は彼女が出来ないみたいだぞ」
「はあ!? なんだおまえ。いきなり失礼なヤツだな!」
友樹が机の上に置いていた教科書を掴み、思いきり角で殴られた。
目の前で星が散り、視界が揺れながらも涙目で友樹を睨みつける。
角はダメだろ、一番やっちゃダメだろ。
「俺が毎日彼女欲しいって言ってるのを知っていて、よくもそんな酷いことを……」
「……友樹には、やっぱり見えていないのか」
変な人を見るような目で見られたけど、友樹の視線を気にする余裕はない。
震える指先で赤い糸を掴もうとしたけど、すり抜けてしまい掴めそうになかった。
「まじかよ」
「あのな、何に絶望してるのか知らないけど、お前と違って俺は彼女が出来るからな」
「……そうだ。彼女!」
何故見えるようになったのかは分からないけど、これが運命の赤い糸なら俺にも運命の相手がいるということだ。
不満げな顔をした友樹には悪いけど、今は構っている場合じゃない。
友樹の運命の相手は学校にはいないみたいだけど、俺の場合は違う。
俺の小指に結ばれた赤い糸は廊下に続いていて、同じ校内にいることを示していた。
「紡久……?」
「悪いな。俺のが先に彼女が出来るかも!」
浮かれた声を出しながら、勢いよく教室を飛び出る。
友樹の呆然とした顔が見えたけど、振り返らずに俺の小指から伸びる糸の先を追った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます