赤い糸のさきに

アtorica@koinoutas2

1

 まぶたを薄っすらと開けた瞬間、視界に入ったのは奇麗な赤色。

 左手の小指に結ばれた赤い糸に、一瞬で眠気が吹っ飛び、心臓がドクリと跳ねた。


「な、なんじゃこりゃー!!」


 勢いよく席を立てば、目を三角にした先生と目が合う。

 シャーペンを片手に固まった生徒の視線も、突然叫び声を上げた俺に釘付けだった。

 そういえば、今は授業中だっけ。


「す、すみません」


 慌てて席について、自分の小指に絡まった赤い糸をまじまじと見つめた。

 俺が居眠りをしている間に、誰かが結んだのだろうか。

 辺りを見渡すけど、俺の周りにはガリ勉タイプしかいないから、いたずらをされたとは到底思えない。

 黒板に書かれた数式より、俺の小指に絡まった糸の謎が難関すぎて、頭を抱えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る