第164話 引っ張り出す(1)

 彼らは自分達が選ばれた人間であると考えていた。


 戦争による大規模な環境汚染と気候変動から生き残る為に、連邦政府が策定した人類生存計画の一つとして地下に作られた巨大シェルター。

 其処はミュータントが闊歩する荒れ果てた地上とは違い、清潔で安全な地下世界。

 しかし、建造された画一化されたシェルターとは違い、彼らが住む場所は数あるシェルターの中でも特別な場所だった。

 当時の大企業が主導、資産家を始めとした名だたる富裕層が出資。

 そればかりか他のシェルター建造計画から人手と物資を横流しまで行って作り上げた特別製のシェルターでありゲーテッドコミュニティそのものであった。

 その敷地面積は広大であり、地下でありながら地上と遜色のない生活を選ばれた富裕層は享受する事が出来た。


 だが贅沢が許されたのはシェルター運用開始から100年が限界であった。


 確かにシェルターは長年に渡り地上の荒廃から住民達を守り続けた。

 だが、それは予め設定された耐用年数内での話であり、シェルター内部の生活が100年以上も続く事は想定されていなかった。

 その結果として、100年を境目にしてシェルター内部において様々な問題が発生する。

 食糧問題、水不足、居住空間の不足、資源不足、インフラの整備不良、各種装置の劣化。閉鎖区間であった事が祟り緩やかに増加する居住者をシェルターは抱えきれなくなった。

 シェルター内部のインフラも定期的なメンテナンスを実施しているが装置自体の寿命を誤魔化すのも限界に近付いていた。

 アーコロジーを目指したシェルターであってもシェルターそのものの限界はどうしようもなかった。

 そして、肝心の連邦政府からの迎えは来ず、そればかりか何時の間にか地上から姿を消していた。


 その結果としてシェルターの有力者達は目前に迫る危機に際し、従来の方針を変更せざる得なくなった。

 つまり、シェルター内部に引きこもり続けるのではなく外への進出を選択した。

 だが、長年に渡りシェルター内部に引き籠っていた居住者達にとって外は余りにも過酷な世界だった。

 荒れ果て汚染された環境、地上に跋扈する数多くの凶悪なミュータント、狡猾で残酷な野盗と化した地上人類。

 地上に蔓延る脅威は彼らの想定を超え、多くの犠牲が生まれた。

 それでも地上への進出を辞める訳にはいかない、シェルターを生かすには地上の物資が必要なのだ。

 そうして地下のシェルターでは数多くの犠牲と試行錯誤の果てに地上での活動において一つの方法を編み出した。


 それは破棄、破壊されたアンドロイドの再利用。

 アンドロイドが人間に変わって地上における危険な活動を代替しようと彼らは考えた。

 幸いにもシェルター建造に出資した企業の中にはアンドロイドの生産を行う企業もあり、シェルター内部にはアンドロイドの生産設備も小規模だが備えていた。

 これで問題は解決されたと当時の有力者達は考え──たが、それは甘い見通しであった。


 当時の連邦で発生したアンドロイドの暴走の影響もありシェルター内部でのアンドロイドの配備数は少なく、また単純労働等で限定的に使用されるに留まっていた。

 また、当時の暴走事故を踏まえてシェルターで利用されるアンドロイドには高度な人工知能を搭載しなかった。

 その結果としてシェルターで使われるアンドロイドの能力は非常に低いものとなり、過酷な地上での活動には耐えられなかった。


 つまり彼らの画期的な計画は出だして躓く事になったのだ。


 それでも彼らにはアンドロイドを利用するしか手段は残されていなかった。

 よってシェルター内部では総力を上げてアンドロイドの再開発が行われた。

 人工知能は地上で廃棄されていた個体から利用可能な物を拾い集めて流用し、機体も既製品を何とか組み合わせて製造。

 そして出来上がったばかりの共食い上等のアンドロイドを彼らは地上へ向かわせた。


 結果から言えばアンドロイドは可もなく不可もない中途半端な成績を出した。

 だが色々とコストの高い人間と比べれば十分な成果であり、費用対効果は高いと彼らは結論付けた。

 これを機にシェルターではアンドロイドの再開発を続け、更なる成果を求めて地上へ投入を続けた。

 だが、アンドロイドから得られる成果は次第に頭打ちになり始める。

 幾ら出力とセンサー強化しようとも上がらぬ成果、運悪くミュータントや地上の野蛮人達に破壊される時もあった。

 だが時間の経過と共に地上ではアンドロイドを狙う人間が増え始めた。

 目的はアンドロイドが集めた物資であり、地上の人間からしてみれば比較的安全な方法で資源を得られるからだ。

 それから、アンドロイドが立て続けに破壊される時期が続いたシェルターは物資不足になり掛けた。

 そして、彼らは危機感を前にして悪魔の様な考えを閃いた。


 ──地上から攫ってきた人間と寸分違わないアンドロイドを作り、地上へ送る。

 ──攫った人間に成り代わったアンドロイドを通じて地上にいる野蛮人達の組織内部に入り込めば効率的に成果を得られるのではないか。


 人を人とも思わぬような計画は誰も止める事が無かった為に実行に移された。

 それからシェルターで製造されたアンドロイドは高度な人間への擬態を実現すべく特異な変化を遂げる事になった。

 本物と違わない偽物を、地上に溶け込みながら我々の先兵たる優秀な人形を。

 攫ってきた地上の人間を同じ人間と認識せず、彼らの名前、顔、記憶も姿も、何もかもを複製した。

 そして、本物と寸分も違わない偽物である<イミテーション>を彼らは作り出した。

 生み出された<イミテーション>は自分が人間であると疑わずに地上の社会に溶け込み、シェルターに住む人間達の求める情報や資源を回収する優秀な装置となった。


 シェルター運用から150年、<イミテーション>を利用した物資回収のシステムを確立した地下に住む人々は危機を脱した。

 そして、歪な成功体験はシェルター建設当初から既に存在した歪な選民思想を更に成長させることになった。


 ──地上に蔓延る野蛮な人類と選別され高度な教育を受けた我々、滅び去った文明を維持する遂行な役目を持つ我々。

 ──であるなら、我々は無知蒙昧である地上の人々を正しい道に導くのだ。


 歪に成長し、歪んだ思想を以て彼らは地上への介入を決意する。

 組織の重要人物を<イミテーション>と入れ替え、地下の人々が望み信じる環境に近づけようと地上のコミュニティーへ介入する。

 その行動の果てにある世界が真の楽園であると、世界を正しい姿に戻す崇高な行いであると彼らは息まいた。


 ──だが、彼らの荒唐無稽な計画は途中で破綻を迎える。


 自分達と同じ様にアンドロイドを利用するのではなく、自我を獲得したアンドロイドによる大規模介入はかれらにとって想定外にも程がある出来事であった。

 そして地下の人々の混乱を他所にアンドロイド達は活動範囲を広め、同時に彼らの持つ先進的な装備、技術等の情報が地上に潜伏させた<イミテーション>を通して地下へと伝わった。

 最初は誰も信じなかった、いや、信じたくなかった。

 自分達が維持するのに精一杯であった品々を何故、どうして、如何やってアンドロイドが手に入れて運用しているのか?

 下手にアンドロイドに関する知識があったからこそ彼らは信じられなかった。

 だが集積される情報は全てが本当であると、事実であると告げている。


 そしてアンドロイド達が急に活動理由がたった一人に人間を探す為だと彼らは知った。


 アンドロイドによる世界征服でも人間に対する復讐でもなく、たった一人の人間を捜し出す為に彼らは活動範囲を広げ、影響力を広げていた。

 その余りにも荒唐無稽な理由にシェルター指導層は混乱し──、だが一人の人間が先進的な装備に加え、大量の物資を映したアンドロイドの映像を見て呟いた。


「機械は人間に奉仕する為に作られた存在であり、主を失ったのであれば我々が新たな主となり彼らを有意義に使役するべきなのではないか?」


 集めた情報からアンドロイドが誰かを探している事は既に判明している。

 ならば自分達が主を失ったアンドロイドの新たな主となり、彼らを有効に活用するべきであると。

 シェルターの人々はその考えに異議を唱えなかった。

 それ程までに歪な思想が地下には蔓延していた。

 そして新勢力であるアンドロイドに対する方針は統一され、主なきアンドロイドを支配するべく彼らは暗躍を始めた。

 地上に潜伏させた<イミテーション>を通じて情報を集め、アンドロイドに敵意を持つ人々に接触して利用し、アンドロイド達の現在の指揮系統の中心が何処にあるか調査した。

 そして全ての準備を整えた彼らの計画──アンドロイド達が探し求める人間に整形したシェルターの人間を内部に入り込ませ、組織を乗っ取る──は動き出した。


 ──だが計画は失敗した。


 それは彼らがアンドロイドに恨みを持つ人間(犯罪組織の生き残りや結託して賄賂を受け取っていた人物等)の憎悪を見誤った結果であった。

 その後も、整形を始めとして高いコストを掛けた潜入要員を爆破処理する時期を見誤る。

 連鎖して中枢に入り込ませた<イミテーション>の正体が露見し、そればかりか地上で潜伏した<イミテーション>の一部も破壊された。

 その結果として他の武装勢力に介入する糸口を与え、肝心のアンドロイドは逃亡するなど散々な結果であった。


 ──だが、今更諦めるわけにはいかない。


 確かに計画が失敗したが、再起が出来ない程の損失を被った訳ではない。

 ならば、新たな計画を立案し、更なるコストを掛け、より入念な調査と準備を行えばいい。

 それだけのコストを掛けるのに十分な価値がアンドロイドにはあったのだ。


 ──だが彼らの悪巧みが実現する事は無かった。


 朝日と昇ると同時に始まったシェルターへの攻撃。

 それらアンドロイド達の大切な宝物であるたった一人の少女を泣かせた人間への報復であった。






 ◆






 この日、地下シェルターの管制室ではシフト交代が行われているところであった。

 管制室は文字通りシェルター全体のインフラをはじめとしたシステムの監視を行う。

 そして異常があれば関係部署に連絡を入れ、対応を指示する重要な部署でもある。

 ……とは言っても、シェルターの運営は安定しており、また現在に至るまでシェルターは物資不足による危機を除いて大きな問題に見舞われたことがない。

 ありていに言えば、管制室の空気は緩み切っており、職員達は今日もモニターの画面を眺めるだけの楽で単調な仕事が始まったと考えていた。

 責任ある仕事ではあるが、監視業務と言うものは変化の無い事が大切である。

 よって、誰もが変化の無い単調な一日が終わり、始まると引継ぎの最中に考えていた。


「防衛装置4番から13番まで大破! 続けて23番、26番も沈黙!」


「地上部への飽和攻撃、依然継続中! 防衛装置が次々を破壊されていきます!」


「振動によってシェルター内部の送電設備に異常発生! 5、6、8区で停電が発生!」


「寝ている職員は全員叩き起こせ! 第一級の非常事態だ!」


 ──そんな弛緩した空気に盛大に冷や水を浴びせたのがアンドロイド達によるシェルターへの攻撃であった


 朝日が昇ったと同時に始まった攻撃によって管制室にある各種センサーは異常値を叩き出し、シェルター全体では危険を知らせるサイレンが響き渡っていた。

 その規模は過去に例が無い程であり、現時点で発生している問題だけでもシェルターの運用が始まって以来の危機的状況である。

 そして管制室では引継ぎを放り出して職員達が事態に対応しようと慌ただしく駆け回る。

 それ程までに管制室に努める職員達の誰もが経験したことがない異常事態であり、誰もが落ち着きを失い、浮足立っていた。


「これはこれは」


「なんとも騒がしいな」


「だ、代表の皆様! どうして此処へ!?」


「どうしても何も、トップの役割として我々は此処に来たのだ」


 だが、混乱していた管制室の空気は突如として入室した三人いるシェルターの代表達によって変わり始めた。

 そして、男達の正体はシェルターの統治を任された代表達であり、突如として発生した緊急事態に錯綜する情報に対処する為に管制室に乗り込んできたのだ。


「攻撃です! 何者かが我々のシェルターを攻撃しています!」


「落ち着き給え。君は此処が元々何のために作られたのか忘れたのか」


「た、確かに……」


「この慌てようでは情報が錯綜してしますのも致し方ありませんな」


「だが、これ程の異常事態は私でも遭遇したことがないぞ」


 三人の代表はシェルターの成立に貢献した富裕層達の子孫である。

 彼らは様々な利権の絡んだ巨大シェルターにおいて権力を三分割しながら合議制によりシェルターを現在まで運営を続けてきた。

 そんな彼らは自分達が暮らすシェルターが如何に頑強であるのか聞きながら育ち、事実としてシェルターは過去一度も外部からの侵入を許した事は無い。

 それは今回も同様であり、幾ら地上部分破壊されようと本体である地下シェルターへの侵入が無いのであれば慌てる様な事はないのだ。


「市民が混乱しています! 一部では事情の説明を求めて市民が押し寄せ──」


「鎮まれ! 先ずは報道官に現状を通達、その後は混乱を抑える為に主要施設の警備を厳重にしろ!」


「左様、経験した事の無い異常事態に混乱するのも分かるが冷静になりたまえ。それと、非番の人間も動員して治安維持に出しなさい」


「市民達も君達と同様に不安なのだ。だからこそ我々は率先して毅然とした態度を示さなければならない。理解できたのなら落ち着いて職務に就きなさい」


「は、はい!」


 冷静に指示を繰り出す代表達によって管制室は落ち着きを取り戻していく。

 それに伴って滞っていた業務が回り始め、シェルターも落ち着きを取り戻していく。

 だが、現在進行形でシェルターに撃ち込まれる攻撃が止まった訳ではない。


「なんとまぁ、いくら攻撃を撃ち込もうと無駄なのが分からないか」


「ああ、幾ら地上部分を攻撃しようと地下深くにある此処を破棄する事など不可能。敵は貴重な砲弾を無意味に消費しているだけだ」


「だが一体何処の組織が攻撃を? 監視カメラを通して敵の正体を掴めないのか?」


「は、はい、此方が現在も利用可能な予備の監視カメラが捉えた映像です。映っている映像を分析したところ攻撃を行っているのは“例のアンドロイド”であると推測されます」


「ほう!」


 管制室にあるモニターには地上に設置された監視カメラからの映像が映されていた。

 設置場所と機材の調子が悪いのか画質は荒い、だが映像の端にはアンドロイドが使用する灰色の外骨格が複数映っていた。


「なんと、これ程の戦力を持っていたとは。猶更、此方で有効活用しなければ」


「然り然り」


「し、しかし、攻撃は今も続いて──」


「先程も言ったが落ち着きなさい。地上が幾ら耕されようと地下深くにあるシェルターを破壊する事は出来ないのだよ」


「何より核兵器の爆発にも耐える強固な隔壁がある。奴らには突破することは不可能だ」


 三人は未だに攻撃に対して不安を感じている職員達を宥めながら、内心ではアンドロイドに対する価値を更に上げていた。

 確かに市民達が恐怖を覚える程に危険な存在ではある。

 だからこそ、主を失った人形達を我々が有効に活用しなければならないと三人は改めて自分達の認識が正しかった事を再確認した。


「なら、ワシは不安を感じる市民への説明に行こうか」


「ええ、任せます。この様な馬鹿騒ぎも直ぐに終わるでしょう」


 三人の表情は敵がアンドロイドであると知っても変わらない。

 何故なら此処は天然の山を巨額の費用を掛けて掘り進め、地下に作られたのがシェルターなのだ。

 幾ら攻撃を撃ち込もうと全ては途上にある山を崩す事しか出来ず、核兵器による攻撃さえ防ぐ巨大かつ強固な隔壁が三重となって地下への侵入を防いでいるのだ。

 確かに強力な砲撃が続いているが、当時の連邦軍ですら攻略は困難と判断されたシェルターに挑むには火力不足である。

 だからこそ代表達は余裕を以て事態の推移を見守っており──。


「観測機器が、何だ、これは、一体何なんだ!?」


「落ち着きなさい、一体何を観測したのです?」


「分かりません! センサーが振り切れる程の高熱を──」


 ──だが、その余裕を剥がす程の攻撃がシェルターに突き刺さる。


 複数の観測機器が異常な高熱を検知した直後にシェルター全体が揺れる。

 それは今まで感じていた散発的な微振動とは違う。

 何か致命的な攻撃を受けたのだと、誰もが理解させられる程のものであった。


「何が……、一体何が起こった!?」


「は、破壊されています!?」


 職員の言葉は短く、何が破壊されたのか代表達には全く分からなかった。

 だが職員が見詰める画面には信じられないような映像が映されていた。


「か、隔壁が、そんな馬鹿な……」


 核兵器の圧倒的な破壊力、凶悪なミュータント、有害な雨風からシェルターを守り続けてきた盾。

 誰もが破られる事は無いと信じていた隔壁の第一層目、地上と地下を強固に隔てていた三重の隔壁の一枚に大穴が空いていた。


 ──だが、アンドロイドの攻撃はそれで終わりでは無かった。


「ふ、再び高熱原体を観測!?」


「何でもいい! 稼働していている全ての兵器を熱源に撃ち込め!」


「駄目です! 間に合い──」


 再び計測機器が異常な高熱を検知した時、代表達は二射目を撃たせまいと急いで指示を出した。

 だが、間に合わなかった。

 再び放たれた攻撃、それはモニターを真っ白に染める程の光であった。

 その光の正体を管制室にいる人々は答えられない、答えられないがモニターを真っ白に染める強烈な光が攻撃であることは理解出来た。

 だがモニターに映る映像は直ぐに途切れ、代わりには監視カメラに異常が発生したと告げるテロップが映し出された。

 職員達は急いで隔壁の映像を映そうと必死になって機材を操作した。

 だがモニターに映像は映らずテロップが映し出されるばかり。

 しかし、監視カメラ以外の機器は破壊を免れたのか稼働しており、各種数値の計測は引き続き可能であった。

 そして、計測機器から得られた数値が示すのは残酷な事実を余さずに示していた。


「第二、第三隔壁破壊! 全ての隔壁が破壊されました!?」


「計測ミスではないのか!」


「間違いありません! 残されていた第二第、第三隔壁が破壊されています!」


「物資搬入用斜行エレベーターの監視カメラが使用可能、映像映します!」


 物資搬入用斜行エレベーターはシェルター建設の為に使用される大量の機材や建材を地下に送る大型エレベーターであり現在は封鎖されていた。

 だが、エレベーターが稼働停止であっても監視カメラは変わらずに使用可能であり、またカメラを動かせば第三隔壁を映す事が可能であった。

 そして、職員の機転によりモニターには代わりの映像が映された。


「ば、馬鹿な……」


「て、敵アンドロイド、シェルターへ侵入します……」


 監視カメラが映したのは隔壁だったモノ、核兵器の攻撃にも耐えると言われた隔壁の中央には大穴が空いていた。

 その空いた大穴から地上の風景を見る事が出来た。

 そして大穴を通じて完全武装したアンドロイドが進軍している。

 瓦礫を踏み潰し、隔壁だった残骸を更に切り刻み侵入口を広げながら。

 それはまるで出来の悪いSF映画を見ている様であった。

 B級映画にありがちな荒唐無稽なストーリー、暴走したアンドロイドが人間を滅ぼす手垢のついた物語。

 だがこれは映画ではなく現実に起こっている、現在進行形でアンドロイド達は迅速にシェルターへと迫っていた。


「──我々は、一体、何に手を出した?」


 管制室にいる誰かが口に出した疑問。

 それに応えらえる人間は一人もいなかった。

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