第113話 口説き落とす

 朝を迎えた事を知らせる鐘の音と共にグレゴリーの一日が始まる。

 ベッドから身体を起こし、寝間着から着替えると空腹で倒れない程度の食事を水と共に腹に流し込む。

 そして鏡の前に立ち最低限の身嗜みを整えると駅の中で自分達に割り当てられた部屋から出ようとする。

 だが、特に理由も無くふと振り返れば扉が閉まったままの娘の部屋が目に入った。

 そして何かに惹かれる様に娘の部屋の前に立ち、扉を開いた。

 部屋の中には誰もいない、部屋もそのままで放置されていたせいか少しばかり埃が積もっていた。


「……あいつめ、まだ捨ててなかったのか」


 娘の机の上には古びた人形があった。

 手に取った人形がモチーフにしているのは動物ではなく兵隊、同年代の子供達が持っていたものに比べれば可愛らしさは殆ど無い。

 だが娘、アンナはこの人形がお気に入りだった。

 幼い頃は何処に行くにも常に持ち歩き、大人になった今でも捨てずに部屋に飾っている。

 それ程までに思い入れのある人形、そして娘は人形の様に兵隊となった。

 プスコフに生まれたからには兵隊にならなければいけない、そんな決まりは当の昔に廃れている。

 それでもプスコフに生まれた多くの人間が兵隊を志すのはそれしか知らないからだ。


 ──だが幸か不幸か娘には才能があった。


 射撃技術、軍隊格闘、指揮能力、全てが最高水準の成果を叩き出したのだ。

 銃を撃てば百発百中、体格差を物ともせずに屈強な男を締め落し、的確な采配で作戦を遂行する。

 だからこそグレゴリーは悲しかった。

 自らの娘は生まれる時代を間違えた、世界を間違えたのだ。

 メトロにおいて娘の才能が活かせる環境は無い、生きる事だけが目的化した暗く湿った地下に彼女が輝ける舞台は無いのだ。


 ──そして娘は消えた。


 それを知らされたグレゴリーは一瞬何を言われたのか理解できなかった。

 だが予定された時間になっても娘が所属していた部隊が戻る様子は無く、最悪の可能性を考えて地上の捜索に出れば予感は的中してしまった。

『禁忌の地』に向って進む娘がいた部隊の痕跡、その先は考えるまでも無い。

 それは己の犯した過ちに他ならない、例え娘に嫌われようとも行かせるべきではなかった。

 だが決断するには、行動を起こすには遅すぎた、時間は戻ってくれないのだ。

 其処から先のグレゴリーの記憶は朧げになり、日々を惰性に任して過ごしてく日々が続いた。

 そして今日も昨日と同じ惰性の日々が続いていくだけだった。


「……グレゴリー、お前の娘が見つかった。生きてはいる、念の為に休ませているが会いに来るか?」


 ──だが其処に嘗ての戦友が再びグレゴリーの前に現れ、そう告げた事で全てが変わった。


 その瞬間にグレゴリーは冷静な判断を投げ捨てセルゲイの胸倉を掴んでいた。

 自分達が、プスコフが必死になって探しそれでも見つからなかった娘と部隊である。

 それが前回の面談から数日も経っていないのに行方不明になっていた娘と部隊を発見し保護している、その情報が齎した荒れ狂う感情のままグレゴリーはセルゲイに詰め寄った。


「セルゲイ、もしお前の話が嘘であったら私がお前を殺す。もう一度聞く、部隊は、娘は生きているのか!」


「気持ちは痛い程分かる。だからこそ証拠としてドッグタグを預かっている。お前の娘以外もいるから確認してくれ」


 セルゲイから渡されたドッグタグは間違いなく本物、それが意味するものは彼らが生きているという事だ。

 グレゴリーは行方不明になっている隊員の家族にも知らせると共に地上に行ける人員を可能な限り伴いセルゲイの案内に従って移動した。


 そしてグレゴリー達は地上で行方不明になった家族と再会すると共に地上で動き出しているノヴァの計画の一端を知る事になった。






 ◆






「此処にいたのか。娘の見舞いはいいのか?」


「……先程までいた、げっそりと痩せていた事を心配された。だが俺よりもお前の息子の方が大事らしい」


「……そうか」


 ノヴァが拠点を構えているキャンプ、行方不明になったプスコフの隊員が収容されている建物の入口の近く置かれたベンチにグレゴリーは座っていた。

 セルゲイはグレゴリーを探していたのだが問い掛けの返答に返す言葉が思い浮かばず、一先ずグレゴリーとは別のベンチに座った。


「……」


「……」


 二人の間には気まずい沈黙があった。

 過去に色々とあり袂が分かたれた二人であったが嘗ては互いを戦友と呼び認め合っていた仲である。

 だがそれは昔の話、袂が分かたれた今の二人の間にあるのは一言では言い表せない複雑な関係であり、それが会話を妨げていた。

 だが何時までも続くと思われた沈黙にセルゲイは耐え切れず先に口を開いた。


「……言っておくが俺も知らなかった」


「だろうな」


 出てきた言葉は言い訳であった、だがグレゴリーにはそれで良かった。

 相変わらずの口下手振りにグレゴリーは小さく笑うと共に顔を上げ、空を見た。

 メトロの閉ざされた空間とは違う何処までも果ての見えない空、天候は曇っていたがそれでも見ているだけで不思議と頭に巣食っていた色々な物が空に解けていく。


「何時か来るとは思っていた、だが実際に目の当たりにすると胸に来るものがある」


 自分の娘もいつか誰かに恋心を抱き、その人を愛するようになるのだろう。

 生まれた時に妻から散々聞かされていた事だが実際に目の当たりすると理性では納得出来ても父親として否定したいという気持ちがあったのに気付かされたのだ。

 それも相手が選りによってセルゲイの息子である、胸に沸き上がる感情は複雑怪奇であり自分でも理解できないものだらけであった。


「此処にいましたか、グレゴリーさん」


 そんな時にノヴァはグレゴリーの下に訪れた。

 そしてグレゴリーはノヴァの姿を見た事でまだ感謝を言っていない事を思い出しベンチから勢いよく立ち上がると帝国軍式の最敬礼を行う。


「ノヴァ先生でよろしいでしょうか、お礼が遅くなりましたが娘を、部隊を助けていただきありがとうございます」


「謝意は受け取りました。ですが私も思惑があって彼らを助けました。それに関してはセルゲイさんから聞きましたか?」


「聞きました。そして我々を雇用したい理由がこの建築物群ですね」


 そう言ってグレゴリーが視線を向けた先にあるのは廃墟を利用した建築物である。

 元々は巨大なショッピングモールであった建物は様々な増改築が施され原型を最早留めておらず今も巨大な機械が内部で稼働している。


「そうです回収したスクラップやゴミを再資源化する為に建設しました。大雑把に言えばゴミを利用可能な資源に変換できるプラント群ですね。稼働率は10%も無いですが人が増え次第上げていく予定です」


 ノヴァが得意とするのは物を作る事であるが何かを作ろうにも原料や素材がなければ幾ら優れた道具だろうが絵空事にしかならない。

 そして崩壊した世界において原材料や素材を収集するのは簡単な事ではない、ゲームの様に操作一つで回収出来ないのだ。

 だからこそノヴァは連邦にいた時から常に資源の回収・再資源化の設備については時間と手間暇を惜しまなかった。

 そうして建造されたプラントは日々改良を加えられ、稼働実績と運用データを積み重ね、適応範囲を広げ効率化を推し進めていった。

 ノヴァの研鑽が生み出した結果が今、グレゴリーが見ている施設の正体である。


「これが持つ意味はグレゴリーさんなら分かるでしょう」


「分かりますが正気を疑います。この施設群を動かす電力だけでもメトロ中から買い手が集まります。加えてこの施設の能力が知れ渡れば悪意を持って奪おうとする輩が出てきます」


 施設を動かす電力、そして生み出される再利用が可能になった大量の資源。

 どれも慢性的にメトロに不足している物であり、その存在が知れ渡れば組織の大小に関わらず誰もが手を伸ばしてくるのは確実だ。


「知れ渡るのは織り込み済みです。その上で欲に目が眩んだ愚か者達の対処を貴方達が得意とする方法で任せたいのです。そういえばプスコフは解散予定と前回聞きましたがどうでしょう、部隊丸ごと雇われてみませんか?」


 だがグレゴリーが言う事など初めから想定しているのだろう、ノヴァは慌てる事も取り乱す事も無く話を最後まで聞き続け、その上で改めてグレゴリーに提案をしてきた。

 そして実際に目の前にいるノヴァはプスコフ全てを雇用できるだけの財力が、力がある。


「……武器がありません。それに襲撃規模を考えれば軽武装ではなく重武装は欠かせません。しかし今のメトロにある重火器の数は限られどれも貴重な代物です」


 だがノヴァからの仕事を受けるには今のプスコフには不足している物が多すぎた。

 携行火器でさえ長年騙し騙しで使い続けて耐用年数はとっくの昔に過ぎているのだ。

 壊れればメトロで入手可能な質の低い部品で補修し何とか稼働している状態に過ぎない。

 そして重火器に至っては現存する数そのものが少なく市場で出回る事はない貴重品なのだ。

 グレゴリーの目にはノヴァはプスコフの戦闘能力を過大評価しているようにしか見えなかったのだ。


「二人とも少し移動しませんか、見せたいものがあります」


 だがノヴァはグレゴリーの指摘を聞くと今度は二人を伴ってキャンプの一角を目指して歩き出した。

 そうして辿り着いたのはキャンプの中心から少し離れた場所にある廃墟。

 外観はボロボロだが入口を塞いでいるのは新品同然の大きく分厚い金属製の扉である。


「この中です」


 ノヴァが扉を開き中に入るのに続いて二人も中に入る。

 すると薄暗い外とは違い十分な光量が確保され多くの工作機械が稼働し、その間を真新しい作業着を付けた男達が働いていた。


「……これは」


「特別製の製造装置とガンスミスとして働いていた移住希望者達が働く武器工房です」


 其処は資源化プラントと同時並行でノヴァが建造した施設。

 再資源化した原料、素材を用いてネジ一本、一から製造可能であり銃器生産に特化させた武器工房である

 また働いている従業員は最近になって来るようになった移住希望者の中から銃器製造や保守に関わった人材を積極的に登用している。


「帝国軍の正式アサルトライフルAG-48、その後継機として研究、製造された次世代アサルトライフルAG-89に手直しを加えた物です。近代化改修並びにモジュラー化を加えており、現在プスコフが保有している全ての携行火器に置き換える事が可能です。此方は設置式のKSV重機関銃、基礎設計が優秀であったため手は加えていません。他にも試作として幾つか作っていますが見たいものはありますか?」


 軍人として生き続けてきたグレゴリーは無意識に渡された武器を構え、薬室が空である事を確認してから引き金を引く。

 淀みの無い澄んだ金属音、作動も滑らかでありガタつきもない、それは今迄使っていた銃が全て使い古された骨董品にしか見えなくなるほどの出来栄えであった。


「……貴方は戦争でも起こすつもりなのか」


 ノヴァは工房で製作した武器に関する説明を行うがグレゴリーの耳に届かない。

 それ以前に武器ではなく大量の武器が製造可能な工房を見てグレゴリーの口は本人の嘘偽りのない本音を呟いていた。


「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ。平和を願う者は、戦争の準備をせねばならない。勝利を望む者は、兵士を厳しく訓練しなければならない。結果を出したい者は、技量に依って戦うべきであり、偶然に依って戦うべきではない。古い諺ですが今の時代でも通用する便利な言葉です。結論から言えば私から戦争を仕掛ける事はありません。そんな無駄な事をする意味がありませんから。ですが此処を狙うものは多く、彼らが伸ばす手を打ち払う力が必要なのです」


「貴方の目的は電波塔を修理し遠くにいる家族と連絡を取る事だと聞いています。その為だけに此処までするのですか」


「必要とあればしますよ」


 ノヴァはグレゴリーの本心に対して嘘偽りのない本音を返した。

 その根底にあるのは必要だから作っただけ、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 グレゴリーが考える様に他の駅に対して侵略する意思などは一切なく、それ以前に何故そんな無意味な事をしなければいけないのか、それがノヴァの嘘偽りのない本音である。


「もう一度言います。私ことノヴァは貴方がたプスコフをキャンプの防衛戦力として、戦時には敵を撃滅させる戦力として雇いたいのです」


 グレゴリーの抱く懸念に答えたノヴァは再び向かい合い、視線が重なる。

 するとノヴァの目には一目で分かる程緊張し張り詰めた表情をしているグレゴリーがいる。 

 其処には初めて面会した時に纏っていた陰鬱な雰囲気はない、それは今まで見た事がない其処の知れない何かを注意深く観察している一人の兵士がいた。

 それを感じ取ったノヴァは最後に止めの言葉を口にした。


「武器がなければ用意しましょう、補給が足りなければ補充しましょう、情報がなければ提供し、プスコフが持てる力を全力で発揮できる環境と装備を整えましょう。その対価として貴方方には戦場で戦ってもらいます」


 兵士であろうとし、兵士になれなかった者達。

 彼らがその存在意義を余すことなく発揮できるようにする事がプスコフに示したノヴァの報酬である。

 そしてノヴァの言葉はプスコフを率いるグレゴリーに響き、胸の内から沸き上がる様々な感情が綯交ぜになった表情を何とか取り繕おうとした。


「……とは言ってもいきなり返事をするのは厳しいでしょう。お試しで小規模な部隊を雇用する方向で始めていきたいと考えていますがどうですか?」


 だがノヴァもプスコフが明日から大部隊を派遣する事が出来ない事を理解している。

 プスコフ内部の多くが解散方向に動き出している以上グレゴリーの一声であっても方針転換をするには時間が必要になるだろう。

 だからこそ間を取って先ずは小規模な部隊の派遣から始めてみようとノヴァはグレゴリーに提案をした。

 そして提案を聞いたグレゴリーは改めてノヴァに最敬礼をすると共に迷いのない声で宣言した。


「よろしくお願いしますノヴァ先生、いや、ボスと呼ばせて頂きたい。プスコフ大隊臨時指揮官グレゴリー以下実働可能部隊の指揮を預けます」






 ◆






「先生、それでプスコフはどうなりましたか?」


「何とか口説き落とせたよ」


 ノヴァはグレゴリーとの間に大まかな契約内容の素案を作成、細かな調節はプスコフの上層部と合同で詰めていく約束を結んだ。

 そして今までに無い程に活力の漲った表情でグレゴリーがメトロに帰るのを先程見送ったばかりであった。

 そうして一人になってキャンプ内を移動していた所を診療所から出てきたアルチョムと合流したのだ。


「それより彼女の傍に居なくて大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。彼女は強いですし、余りベタベタし過ぎても嫌われるだけですから」


 そう話すアルチョムの表情は明るく、一目で浮かれているのが分かる。

 だがそれも仕方がないだろう、今迄父親達との間にある複雑な関係に配慮して隠れる様に付き合っていた二人なのだ。

 それが『禁忌の地』からの救出した事を契機に打ち明け、二人に認めさせたのだ。

 色恋事情という専門外の分野であるため詳しくは話からないがベンチに座っていた二人の父親の様子からして反対はされなかったのだろう。

 その後の関係構築は二人の努力次第だが今までの隠れて付き合っていた時に比べれば大きな進展であり、遠くない内に二人の父親も認めるしかなくなるだろう。


「それよりも先生はどうしてこのコンテナに?」


「まぁ、確認の為だ」


 そうノヴァは告げてキャンプの一角に山と積まれたコンテナ群に移動。

 端末を操作し目的のコンテナを見つけると中に入ると同時に薄暗いコンテナ内部を手持ちのライトで照らした。


「……やっちゃったな」


「先生、これ全て前哨基地にあったポッドですよね……」


「そうだ。エイリアンにしてみれば人間も資源の一種でしかない。此処に山と積まれたコールドスリープポッドの中にいる人間はエイリアンを生み出すための素材でしかない」


 ライトで照らした先にあったのはコンテナの中に隙間なく詰められたポッド。

 エイリアンの前哨基地で見つけたものと同一な装置であり、今も稼働を続けているポッドの中には冬眠状態にある人間が眠っていた。


「根こそぎ持ってきたが前哨基地に行くまで忘れていたよ」


 吹き飛ばしたエイリアンの基地から根こそぎ分捕ってきた大量の物資。

 だが今迄は武器や弾薬、消耗品である機械部品や製造装置ばかりに注目していたせいで用途の分からないコンテナの中身をノヴァは放置していた。

 忙しかったこともあるが、コンテナの量からしてノヴァ一人で把握できる量でもないのだ。

 ならば他の人に任せようにも信頼できる人がおらず、それから色々な出来事が立て続けに起きたせいで後回しにするどころかコンテナの存在を忘れかけていた。

 もし前哨基地を襲撃しなければノヴァは遠からずコンテナの存在を完全に忘れ去っていただろう。


「先生は彼らも蘇生するのですか?」


「今すぐは無理だ。キャンプの拡張に合わせて少しずつ蘇生するしかない。それに此処に来た本来の目的は不要だと考えていた電源ユニットの回収だ」


 電気は幾らあっても困らない。

 一に電力、二に電力、三に電力で四、五番目に水と言われる程であると最初期の連邦で電源確保に奔走したノヴァが辿り着いた考えだ。

 現状のキャンプはエイリアンから奪った発電ユニットを転用して電気を賄っているが工作機械を大量に稼働させるのであれば発電容量はギリギリ、此処に住民の生活インフラも重なれば超過してしまう。

 今はまだ施設群が本格的に稼働していない為に電力にも余裕がある状況だがノヴァとしては今後を見据えて電源に余裕が欲しい。

 その為にコンテナから見つけていない発電ユニットを探し、その最中に大量のポットを発見したのだ。

 これでもしポットの存在を知らずにいれば、疑問を抱くことなくポットを動かしている発電ユニットを抜き取ってノヴァは意図しない大量殺害を行っていただろう。

 その可能性を考えるだけでノヴァの肝は凄まじく冷えた。


「ですが中で眠っている人は……」


「あぁ、分捕ってきた場所が場所だからメトロの住人じゃない可能性が高い。もしかしたら戦時中の帝国兵か、もしくは当時の帝国で生活していた一般人かもしれないな。だけど目覚めた後にどの様に生きるのかを決めるのは当人次第で、その時に手助けが出来ればするだけ。それ以上の責任は負えない」


 そう言ってノヴァは一番近くにあったポッドを操作する。

 中で眠っている人間の状態を確認するだけで蘇生はまだ先の話である。

 だがノヴァの苦難を他所にポットの中で眠っている人の表情は安らかなものであった。

 この人はポッドの外に広がる惨状に関して全く知らない、ならば知らずにこのまま眠らせていた方が良いのではないか、いっそこのまま永遠の眠りに──


「……変な考えを起こすな。今するべき事は現状を落ち着かせて早期に電波塔の修理を再開させることだ、それを忘れるな」


 不穏な考えをノヴァは脳内から弾き出し、ポッドの操作に専念する。

 余計な事を考えない様に、不穏な思考から逃れる為に。




 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 ・放送局を占拠しました。

 ・施設を完全に制圧しきれていません。

 ・ランダムでミュータントが襲撃してきます。

 ・簡易陣地(改)を作成:ミュータント迎撃効率10%向上、

 ・迎撃用の罠を多数設置:迎撃効率20%向上

 ・放送設備は使用不能です。

 ・労働可能人員:1+10人+村からの一時的な避難民+??? 

 *大量の移住希望者が向かっている

 *コールドスリープ状態の人が大量に保管されていたぞ! 

 →キャンプには彼らを収容する余剰は無い! 


 ・放送局制圧進行率 :98%→駆除はほぼ完了している

 ・放送設備修復率  :0%→被害状況の調査を予定している


 ・仮設キャンプ:稼働中

 ・食料生産設備:稼働中・自給率は低い

 ・武器製造:火炎放射器 生産完了:予備以外の追加生産の予定は無し

 ・道具製造:汚染除去フィルター(マスク用)市場流通分の追加生産を予定

 ・バイオ燃料:生産中


 ・新規施設建造中

 資源回収・再資源化施設:稼働率10%以下

 武器工房:稼働中


 ・プスコフ:口説き落とせた、小規模部隊を派遣予定


 ・ノヴァ:余計な事を考えるな、目前の課題をまず解決するんだ(自己暗示)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る