第89話 潜伏改め遭難記

潜伏記録改めて遭難記録10日目

エイリアンの巣窟から脱出するも最後に雪崩に巻き込まれるという重大なミスをやらかした。

幸いにもエイリアン製機械は雪崩に巻き込まれても壊れはしなかったから本当に良かった。

それと雪崩の勢いに乗ってかなりの距離を下山したようで施設から立ち上る黒煙が遠くに見えた。


さて、これからどうすべきが移動しながら考えたお陰で方針は定まった。

最優先すべきは生存環境の確立、雨風雪を凌げる場所と食料を確保して落ち着ける環境を構築することが最優先とする……がこれは既にエイリアン製の兵器を多数鹵獲した事で達成されている。

居住性は要改善だが多脚兵器のコックピットであれば雨風雪を防ぎ食料に関しても作り置きしているサソリの干物もあれば、謎の液体食料に加工される前の水もコンテナの中に大量に保管されている。


よって生存環境の確立は達成されているものとして次の目的である電波塔の確保に動く。

先ず前提として強化外骨格に内蔵された救助信号はエリア内を巡回している偵察機が受信することで位置特定されるようになっている。

本来の想定である偵察機のカバー範囲内での遭難であれば現状で充分であった。

だが今いる場所はどう見ても見慣れた周辺地域とは合致しない気象条件と地理であり偵察機のカバー範囲外である可能性が非常に高い。

であれば信号を出しても受信できない可能性が高く、それどころか電波に引き寄せられて変な輩が集まってくる可能性もある。

だからこそ救難信号を確実に届けるためにも電波塔から救難信号を出そうと今は考えている。


とりあえず今はエイリアンの影響範囲から逃れるために下山している。

施設にいたエイリアンは一匹残らず吹き飛んだのは間違いない。

だが近くに他の施設がないとも限らない、それに小規模の追手であれば迎撃できるが戦闘を起こして居場所をエイリアンに知られたくない。

今日は多脚兵器を自動操縦にして移動を続ける事にする。


お休みなさい。






遭難記録11日目

切実にクッションか何かが必要だと朝に身をもって実感した。

脱落した機体は無く今日も元気に多脚兵器達は脚を動かして前に進んでいる。

天候は相も変わらずの雪模様であり視界は少し悪い。


起きて身体を解した後に見通しの良い場所で一群を止めて簡易的なメンテナンスを行う。

機体に異常は見当たらず懸念すべき異常も見つからなかった。

サソリの干物と水をコンテナから幾つか出してコックピットにある隙間に押し込んだ。

これで雪が積もった外に出ずに食事を済ませる事が出来る。

その後は昨日と同じように移動を続けたがコックピットから見える光景は白銀一色である。

今夜も寝ている間に自動操縦で夜通し移動を続けてもらう。

そして明日には何かが見つかってくれることを祈る。


お休みなさい。






遭難記録12日目

集落を見つけたと思ったら廃墟だった。


コックピットから辺り一帯を調べていたら怪しいものを見つけた。

天然物ではなさそうであり少し近づいて確認した時は建物が幾つもある集落の様に見えた。

その後は気持ちが昂って大急ぎで向かった、もしかしたら人に会えるかもと思っていた。


だが近づくにつれて見えていたものが廃墟であると判明、建物の大部分が崩れており雪の中に半場埋もれていた。

期待していただけにショックは大きかった、少しの間コックピットの中で丸まっていたよ。

だけど塞ぎ込んでいても状況は一切好転しないから観念して探索に向かった。

だけど収穫はゼロ、長年の風化と過酷な気象条件よって砕け散っていた。

一部を除雪して調べてみたが本当に何もない廃墟であった。


だが最後に道路らしきものを発見した、これが最大の収穫だろう。

明日からこの道路を辿って移動することにする。


今日は探索で疲れたのでもう寝る。







遭難記録13日目

今日は簡易メンテナンスを行った後にコックピットの改造を行った。

硬くて座り心地の悪い金属製の椅子を投げ捨てて強化外骨格を着込んだ状態で乗り込めるようにする。

今迄は着たままで乗り込めず外骨格を脱いだ状態で乗っていた。

それをコックピットから椅子を取り外し使わない余計な機材を外すことでスペースを確保。

外骨格を椅子兼寝袋として使えるように一日がかりで取り組んだ。

その甲斐はあった、今日から気持ちよく寝られる、お休みなさい。






遭難記録14日目

クソデカい熊?がいた。

いや熊だろう、熊に違いない、兎に角見るからに熊でしかないがサイズがおかしい、立ち上がったら多脚兵器の高さを超えていた。

ヤバかった、距離がなかったらやられていたかもしれない。

火器で足を潰して移動できなくしてからハチの巣にしたがタフだった。

あれか、エイリアン製の生物兵器なのか、それともミュータントの突然変異なのか全くわからない。

これで変な特殊能力や遠距離攻撃手段を持っていたら殺されていたのは自分であっただろう。


それはさておき、戦って生き残った以上小山の様にある死骸をどうにかせねばなるまい。

握る剣がサイズの違いでおもちゃの様にしか見えないが死骸を切り裂いて軽く胃や腸の内容物を見た。

一見した限りではミュータントの白骨がゴロゴロ出てきたから変なものは食べていないと判断する。

あと一瞬人骨と思われる骨を見つけたが詳しく観察するとエイリアンのものだった。

まぁ、あれだ、エイリアンも生命体、生き物だったということだ。


取り敢えず死体から幾らか肉を切り取って食料とする。

あと使うか分からないがサンプルとして肉片も取っておく。

少しばかり不安であった食料問題は解決、今度は腹を壊さない様にしっかり熱を通して食べる事にする。

それで実際にデカ熊の肉を焼いて食ってみた感想のだが、……うん、あれだ、非常にパワフルな味がしたとだけ言っておく。

もし美味しく食べようとするのであれば丁寧な下処理を行った上で確かな調理技術を持つシェフに任せるしかない、あと調味料。

今回は両方ともないので味は諦めて無心になって食べていく、腹が膨れるのでプラスと思う事にする。


残った死体に関しては放置、焼却処分する燃料もないしに自然の成り行きに任せることにする。

今日も非常に疲れた、コックピットに籠って寝ることにする。






遭難記録15日目


ミュータントの大群を発見、最初発見した時はオオカミかと思ったが違った。

何と言えばいいか、……良い例えが思い浮かばないが不細工で毛むくじゃらの四足歩行の生き物だ。

そんな気色の悪いミュータントが遠目から様子を伺っているのはどうしてかと考えたが視線から見てコンテナに積み込んだデカ熊の肉が原因だろう。

味は悪いが貴重な食料なので捨てるつもりない、群れの近くに砲撃を打ち込んで驚かせれば一目散に逃げていった。

これで襲うことが危険だと分かればいいが念のために警戒は続けている。


それと漸く山岳部を抜けたようで雪が一時的に弱まって見えたのは広大な雪原だった。

山と同じような針葉樹が所々に生えてはいるだけであり目印になるようなものは見つからない。

唯一の道標が砕け散ったアスファルトが残る道路跡しかない、何とも心細い道標である。

それでもこの道を辿れば町なり居住地の痕跡が見つかると考えて雪原を進んだ。

だが結果として廃墟などを見つけることが出来なかった。

今日はもう寝る、そして明日に期待する。






遭難記録16日目

漸く廃墟を発見した。

小さな町規模だが無いよりはマシ、中を探索して地図かそれに近い何かないかを探そうとしたミュータントの歓迎を受けてしまった。

廃墟から出てきたのは全身が白っぽい保護色になったグールの亜種?みたいなミュータントである。

如何やら多脚戦車の出した足音で目覚めたらしく廃墟からわらわらと出てきては威嚇したり石ころを投げてくる。


本当は廃墟を探索したかったがこうもミュータントが出てこられては支障が出るどころか袋叩きに遭うのは目に見えている。

よって廃墟が壊れるのは仕方がないが命には代えられないと判断して多脚戦車を前面に出してミュータントを殲滅する事にした。

後で瓦礫を撤去して地下に無事な構造物がある事に期待して今日は終日ミュータント殲滅に努めることにする。


あっ、お前瓦礫投げてきたな、死ね!






遭難記録17日目

廃墟はミュータントの死骸で埋もれて死屍累々の惨状であり廃墟も瓦礫の山と化した。

いや、本当はミュータントをある程度間引いて安全に探索できるようにしようとやっていたら出るわで出るわミュータントが沢山。

一匹一匹は弱いが数で攻められる多脚戦車では対処できなくなる、そうなると機体に纏わりつかれて危険なので最終的には火力の全力投射を行う羽目になった。

襲い掛かってきたミュータントの全滅には成功したが廃墟が更地になってしまい探索は不可能になった。


諦めて廃墟を去って次の町を目指すことにする。

今度は今回の失敗を教訓にしてミュータントを刺激しない様に廃墟に接近することにする。

明日には見つかるといいな。




遭難記録18日目

不可抗力だったんだ。

日が沈む間に何とか次の廃墟を見つけることが出来て、今回は中にいるミュータントを刺激しない様に廃墟には近付かないようにした。

対策はしっかりした、なのに空から急襲を受けたら反撃するしかないでしょう。


撃墜したのはデーモンに似ていたが詳細までは分からない。

だが問題はそこではなくて、仕留めた瞬間にこいつ大声で叫びやがった。

そしたら遠く見える廃墟から出てくるんですよ、デーモンの群れが。

もう悟りました、だから巣がありそうなビルの廃墟に片っ端からミサイルぶち込みました。

燃え盛り炎上するビル、デーモンの叫び声と悲鳴が木霊する中で夜通し機銃を放った歓迎会です。

ちなみに記録を残している今も戦闘中です、デーモンの一匹が空中で汚い花火を咲かせました。

分捕ってきたコンテナの中には予備の砲弾もたっぷりあるがこの調子で持つかな、実弾は節約して光弾とかのエネルギー兵器で対処する。






遭難記録19日目

空飛ぶミュータントは全て墜とした、これで安全になった筈。

廃墟のビルは真っ黒こげになっており中にいたミュータントも死んでいる筈である。

それと日が昇って廃墟を改めてみるとかなり大きな街である事が分かった。

見えている範囲は一部なのでもしかしたら街ではなく都市かもしれない、……正確な情報がないので推測でしかないが。

取り敢えずそれじゃ探索に行こう!と昂る心を抑えて今日一日は多脚戦車のメンテナンスに充てる事にした。


実際にメンテナンス以外は休まず移動を続けたせいか関節部の摩耗が激しかった。

コンテナから予備部品を取り出して修理し、搭載火器のメンテナンスも行えば一日はあっという間に過ぎていった。

本格的な廃墟の探索は明日からにする、今日は強化外骨格と持ち込む武装のメンテナンスも行ってから寝ることにする。

お休みなさい。

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