第26話 ドキドキ新エリア探索……前の準備!
流石にノヴァと言えども都市へいきなり乗り込むような事は無く武装や食料といった事前準備を行ってから行くつもりであった。
だが一号はそれだけでは不十分と考えてノヴァと共に都市へ向かう部隊の編成を行った。
レストアしたトラックを三両、それぞれに武装や設備、燃料を満載した車両部隊を結成。
ミュータントに襲われノヴァの安全が確保できなくなった最悪の場合は資材を全て投棄してノヴァを保護してアンドロイド達と共に帰る事が出来るようにした。
それだけでなく此方もレストアした小型バイクで編成した先行偵察部隊で都市の事前調査を行い情報収集も念入りに行った。
その甲斐もあり拠点から出発したノヴァと部隊は安全に都市の郊外に到着する事が出来た。
「さすが地方都市というだけあって建物密度が凄いな、拠点のある町が田舎と呼ばれるわけだ」
「連邦の中央行政機関も置かれていた百万人の都市です、拠点の元となった町と比べるまでもありませんよ」
ノヴァの呟きに二号からの指摘が入るがそれが耳に入らない程目の前に広がる景色にノヴァの眼は奪われていた。
ハードと当時のデータ容量からゲームでの都市はそこそこ高いビルが立ち並んだ廃墟であり規模に至っては現実での街程度でしかなかった。
だがトラックから降りたノヴァの視線の先には幾つもの高層ビルが隙間がない程建ち並んでいる。
日本の都市部と遜色がない規模であり、其処に連邦の建築様式が加わって未来都市の様相を呈している。
「今すぐ突入したいけど先ずは拠点を作らないとね」
遠足に行く前の小学生の様な逸る気持ちを抑え、ノヴァは遠くに見える都市ではなくトラックの停車位置から程近い建物群へ視線を向ける。
視線の先にあるのは都市から離れた所にある広大な敷地に建てられた倉庫群、都市に複数ある物流拠点の一つである廃墟だ。
「此方の倉庫群を先行偵察隊が発見しました。幹線道路に沿って建設されているので交通の便も良いですし敷地面積も広いです。何より都市から程よい距離にあります」
二号の指摘通り物流拠点は都市へ繋がる幹線道路に沿うように建設されており拠点からの物資搬入や輸送も容易に出来る。
敷地面積も広く回収した資材の一時保管に、アンドロイド達の機体整備用の装置を設置する事も可能だろう。
都市への資源回収を支える前哨基地を建設するのに最適な立地である。
「他にも先行偵察隊が目星を付けた建物はあります。ですが拠点に最適な立地は此処に限られますが……」
「ガッツリ警戒装置が生きてるね~」
物流拠点入口の監視カメラは稼働している事を示すライトが点灯しており、物流拠点内では自走可能な警戒ロボットが巡回をしていた。
このまま物流拠点にトラックで接近すれば監視カメラに察知され警告されるだろう。
従えば何も起きない筈ではあるが、長年放置されていた監視装置が正常に起動する保証はない。
誤作動を起こして警告という名の反撃をする可能性も無くは無いのだ。
「中央制御室に乗り込んで機能を掌握しないと使えないね!」
拠点を使えるようにするには拠点内部にある制御室に侵入して監視システムを停止させ、制御システムを書き換える必要がある。
そんな高度な作業が可能なのはノヴァ以外にいない。
「……現状の戦力でも掌握は可能です、それでも危険を承知で侵入するのですか」
「犠牲が前提の行動は認めないよ。それに、これ位の警戒装置なら一人でどうにかできるよ」
二号が言った武力制圧は可能かもしれないが損害がどの程度になるか予想できない。
大型・高火力の警備機械やロボットが拠点内に配備されていた場合、部隊の全滅もあり得るのだ。
そんな博打じみた行動をノヴァは認めないしさせるつもりはない。
何より物流拠点を観察した限りでは一人で潜入する方がやりやすいのだ。
「制御室を掌握したら合図出すから」
「……お気をつけて下さい」
二号は納得できていないようだがこればかりは仕方がない。
今の二号の機体は戦闘を最優先に作られた機体で機体出力と頑丈さが特徴であり隠密行動を想定して設計されていないのだ。
隠密をしようにも機体の駆動音や精密作業が出来ない事で簡単に見つかってしまう。
だからノヴァ一人に任せるしかないのだ。
「大丈夫だよ、コソコソとステルスするのは得意なんだよね」
思いつめているように見える二号を励ますようにノヴァは軽口を言う。
そうして装備の点検を行い侵入準備を整えてから警戒装置に察知されないよう物流拠点に向かって行った。
◆
ステルス基本其の一、正面入り口ではなく裏口や排気口から侵入すべし。
ゲームでは何度もプレイしてきたステルス状態での侵入、敵や警戒装置に察知されないよう繰り返してきた動作はノヴァの身体に染み込んでいる。
立ち止まることなく警戒装置の死角を縫うように進み、巡回している警戒ロボットは隠れて通り過ぎるのを待つ。
その繰り返しで拠点の奥底まで警戒システムに捉えられることも無く容易く侵入出来た。
「裏口は何処かな~」
制御室がありそうな建物に近付いて裏口を探す。
無ければ通気口や排水管を登って屋根から侵入するつもりではあったが裏口は簡単に見つかった。
「電子錠が生きているか」
確認したところ扉は電子ロックされておりカードを差し込んで解錠するタイプである。
「はい、ハッキングからのロック解除、見取り図入手、そして……制御室は此処か!」
ノヴァは端末に繋がれた特製のカードを差し込み容易く物流拠点のセキュリティを突破、内部情報の取得にも成功する。
ここまでくれば後は簡単で制御室に侵入してシステムを停止させればお仕事終了である。
「ほほいのほいっと!」
裏口から侵入して監視カメラと警戒ロボットの死角を縫うようにして内部を迅速に進んで行く。
「ザルだな」
警戒ロボットや固定銃座に実弾が込められていようと見つからないのであれば動かないので案山子と変わらない。
過度に恐れるような事もなく進んで行ったノヴァは目的地である中央制御室に辿り着いた。
「お邪魔します~」
制御室前の扉も解錠し中に入れば其処は無人であり、地面に積もった埃から人が侵入した形跡は全く見つからない。
つまり無人の状態で物流拠点の警戒システムは稼働し続けていたのだ。
「今日から君たちの主は俺だ~よ」
人に見つかる心配がない以上隠れる必要はもうない。
制御室に入ったノヴァは中を調査して物流拠点のメインシステムを探し出す。
そして見つけ出したシステムに端末を繋いで全体のシステムの掌握、警戒システムの停止などを行っていき無力化をしていく。
「掌握完了、さて外にいる二号達にメッセージを送らないと」
システムの完全掌握は手古摺る事もなく迅速に行われた。
その過程で物流拠点で使用可能な機械設備の一覧が判明し、その中にあるスピーカーを起動させ外で待つ二号達に知らせる。
『施設を掌握した。入口を開けるから入ってきてくれ』
「分かりました。それと怪我はありませんか」
『大丈夫だよ、でも心配してくれてありがとう』
連絡をした後は物流拠点の正面入り口を解放、制御下に置いた警戒ロボットを動かして車両を受け入れる体制を整える。
それに合わせメインシステムに物流拠点の作業員として部隊にいるアンドロイド達を登録していき間違って警戒システムが作動しない様に書き換える。
「これで一通りの作業は完了したかな」
全ての作業を終わらせてノヴァは背筋を伸ばしていく。
この後はアンドロイド達に働いてもらって物流拠点を資源回収用の前線拠点に替えていく作業がある。
簡易なメンテナンス設備に、一時保管倉庫などやることが多いが複雑な機械の設置以外は任せられるので残る仕事はあと僅かだ。
そうしてある程度前線拠点が出来てから都市への探索に進む事が出来る。
「都市の中には何があるかな~」
今迄とは比べ物にならない規模の廃墟だ。
資源回収だけでなく、もしかしたら貴重な設備や機械、連邦最新の機械が見つかるかもしれないと逸る心をノヴァは何とか落ち付かせると二号達に合流する為に制御室を離れた。
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