第3話
「それでは皆さんお楽しみ、自己紹介タイムですよ~?」
入学式が終わりクラスオリエンテーションの時間。
大河のクラスを受け持つナイスバディな担任、
やがて〆子の番が来るのだが。
「………………」
「どうしました? 緊張しちゃいましたか?」
立ったまま黙っている〆子を見て、大森先生が心配そうに声をかける。
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
そう言うと、〆子はチラリと大河を振り向いた。
先程から〆子にニヤついた視線を向けていた大河は。
「早くしろよ。後が使えてるぞ」
ニヤニヤしながらそう告げる。
〆子は「フギッ!?」っと顔を歪めて。
「言っとくけど! あんたに名乗るわけじゃないんだからね!」
ツンデレのテンプレートみたいな台詞を投げてきた。
「わーったから早くしろって」
ヘラヘラする大河に「く、ぎ、ぎ、ぎぃいいい……」と悔しそうに歯噛みすると、〆子は平らな胸で深呼吸し、なんとか怒りを落ち着けた。
キリっと真面目な顔を作り。
「あたしの名前は
と、そこで小町は振り返り。
「バカでスケベな男子!」
ビシッと大河を指さすと、その指でアッカンベーと舌を出した。
「「「おぉぉぉぉ……」」」
勇ましい姿に、女子達が感嘆の声をあげ、パチパチと拍手をする。
小町は得意な顔で「フンッ」と後ろ髪を払うのだが。
「って、なんであんたも拍手してんのよ!?」
「気合の入った自己紹介だと思ってよ」
「余裕ぶって! バカにしてるでしょ!」
「はぁ? してねぇよ。自意識が過剰だぞ」
「ぎぃいいいいいい!?」
言い合う二人を見て、大森先生が止めに入る。
「ストップ、スト~ップ! 喧嘩はダメですよぉ!」
「だってこいつが!」
「俺は拍手してただけだろ」
無罪をアピールするように大河が肩の高さで両手をあげる。
「そうですよ! 先生ちゃんと見てました。佐原君は悪くありません。慣れない男子が入ってきて不安な気持ちは分かりますけど、そんな風に意地悪しちゃいけません。これから一年間一緒にお勉強する大事なクラスメイトなんですから。仲良くしないと」
「でも先生! あたし見たんです! こいつが校庭でエロい顔しながら鼻クンクンさせて、っくぅううううう! たまんねぇえぜ! って言ってるの! 絶対女子の匂い嗅いで興奮してました!」
「そんな、まさか……」
「本当です! 嘘だと思うなら、他の子にも聞いてみてください!」
小町の発言に、あちらこちらで「私も見ました」と手が上がる。
大森先生は困った顔で「えーと……本当ですか?」と大河に聞いた。
「あぁ。本当だぜ」
悪びれずに肯定する大河に、小町は鬼の首を取ったように「ほら! やっぱりこいつ、女子目当てで入学したスケベ男なんですよ! 愛聖の生徒として、こんな奴放っておけません!」
「こ、小町さん、落ち着いて! なにか誤解があったのかもしれませんし、決めつけるのはまだ早いんじゃないかと……」
ですよねぇ……? と、大森先生が縋るような視線を向けて来る。
「いや、俺が愛聖に入学したのは二〇〇パーセント女子目当てだぜ?」
「「二〇〇パーセント!?」」
「おう!」
頷くと、大河は颯爽と立ち上がった。
「順番にはまだ早いが、ついでだから先に自己紹介させて貰うぜ。改めて、俺の名前は佐原大河。小町の言う通り、バカでスケベな男子だ。好きな物は女子! 嫌いな物はモテる男子! 愛聖に入ったのは、元女子校なら俺みたいな奴でもモテると思ったからだ。つーわけで絶賛彼女募集中! みんな気軽に声かけてくれよな! ヨロシクゥ!」
ピッと額の横で指を振ると、大河はやり切った顔で着席した。
大森先生も小町も、その他の女子もみ~んな、大河の発言に魚みたいに口をパクパクさせている。
流石教師と言うべきか、いち早く立ち直ったのは大森先生である。
「えーと……こ、個性的な自己紹介でしたね~。それじゃあ次の人……」
「なにが彼女募集中よ!? あたしの目が黒い内は、あんたの好きになんて絶対にさせないから! 覚悟しなさいよ!」
「望む所だ! 小町こそ、俺に惚れないよう気を付けろよ!」
「誰が惚れるか!? っていうか、気安く下の名前で呼ばないで!?」
「いいだろ? 愛聖で出来た記念すべき女友達第一号だ。可愛い名前だし、下の名前で呼ばせろよ」
大河の言葉に、小町は真っ赤になって顔を押さえた。
「ふぁ!? か、可愛くない! ふ、普通でしょ!? そんな見え透いたお世辞になんか騙されないわよ! っていうか、別にあんたなんかと友達じゃないから!?」
「おいおい、流石にそれはチョロすぎだろ……。男子抗体なさすぎか?」
「し、仕方ないでしょ!? あたしだってねぇ! パパ以外の男とまともに話すのなんか初めてなのよ!?」
「なるほどな。こりゃ明日からの学校生活が楽しみだ! だっはっは!」
「あのぉ、お願いだから先生の話も聞いて下さーい……」
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