第5話 ゲームアレルギー+アイスキャンディーがトラウマ=本の虫⁉︎

草をかき分けながら躊躇いなく進む委員は、ついに立ち止まった。


「ここです。本を読め委員会の本拠地は」


3人は見上げた。聳え立つ本拠地は、本当に電波塔だったのだ!

改装されているらしい。


そして、電線に紙が大量に貼られていた。


「すまん、あれはなんだ?」


ハンマードが電線を指差して聞く。


「えぇ、あれはそのまんま電線ですが、紙を大量に貼って物理的に電気を止めています。

今の時代、本を読む人が少なくなってしまいましたからね。皆さんスマホやパソコンに支配されています。

そんな哀れな人々を救おうとしたのが本の虫様です。

彼は紙で電気をき止めて、スマホの支配から人民を解放しようとしたのです」


「「「(間違いなくその本の虫って奴だ)」」」


「これから委員長との面会をいたしますね」


モコローたちは待合室に入らされると、そこから2時間近く待たされた。


「まだ………?」


あまりの暇さにモコローの元の姿に戻った。


「まぁなんつーか、あれなんじゃねーの?めっちゃ志望者がいるとか」


「こんな委員会にそんな志望者いて良いんかい」

「つまんな」


「おい腹減った!飯くれ!」


ハンマードが子供のように叫ぶ。


「お前もうキャラ作りどうでも良さそうだな」


「面会のお時間です。どうぞ」


委員がドアを開けて入ってき、3人を電波塔の1番高い部屋へ案内する。


ほんの少し緊張感がある。






「こちらが委員長のお部屋でございます」


ガチャ



ドアを開けると、風通しの良い(壁がない)部屋に出た。


そして、真ん中のソファに誰か座って、本を読んでいる。


「委員長、こちらが志望者でございます」

「……………おけ」


本を閉じた委員長は、肘をソファの肘かけにつけて、言った。



「ようこそようこそ。我が委員会へ。

わったしーーーーの名前はホン・ノ・ムシ。委員長だ。

本の虫と呼んでおくれ」


彼は、本がまるまるくっついていて、その上から目を出しているような顔をした、虫と蛇を融合したようなモンスターだった。


「あ、君は下がってな。4人きりで話したい」


本の虫は案内人を退室させると、3人に問いかけた。


「さぁ、君らはぁ、本を読め委員会に入りたいようだけど、1日にどんくらい本を読んでいるんだい?」


「え、本?」

モコローは聞き返す。


「そうだ、本。

我らが神であるブックオフナノニ・ホンネージャー様は言った!

『本読め。本読んどきゃ人生得する』。

この通り本は、人生をより良くするための、まさに宝!人生のお宝!

魔法?剣?ハーレム?スキル?金?金……金も確かにそうだが、本は金を買うのに使う!

つまり、本の方が価値がある!


私の夢は全生命体が本を読む世界にすること。

私にとって、図書館はハーレム!君たちもそう思うだろう?

さぁ、どんくらい本読んでいるのかね!!!!!!」


モコローは困惑した。実は………いや、なんとなくわかるだろうが、彼はあまり本を読まない。


「どうしよ、僕あんま本読まない」


彼はロックに小声で相談した。


「ど、どんくらい読んでんだよ……」

「2分」


「え、1日?」

「1年」

「は????????????」



ロックは自分の耳を疑った。


「(1年で2分しか読んでない?


……まさか、大学生だぞこいつはぁ。さすがにもう少し読んでるだろ………。


俺ですら1ヶ月に20分くらいは読んでる。


俺は高卒。彼は大学生。


差は酷いくらい大きい。しかし、読書量は俺が勝ってるだと?)」


「おい本ってなんだっけ」


ハンマードがロックに小声で相談した。


「お前モコローの下位互換か⁉︎本って………本って………………………………………本ってなんだ?」



本とはなんなのか?


哲学になりそうだが………。




文明と本は、密接な関わりがある。


文明が文字を生み出して、文字を紙に写すという技術も編み出された。


その文字が、のちに文明を生み出す鍵となった。




ロックは諦めた。



「……………いや、俺にはわからん」

「わかんねーのかよ」


「おいおい、3人とも。本、どんくらい読んでんの?

まさか読んでないとでも言いたいのかね?

読書してないくせに、この委員会に入れるとでも思ってんのかい?」


本の虫は急かす。モコローは叫んだ。








「本読んでません!!!!!!」



「⁉︎………………え?」


「「(こいつマジで言いやがった!)」」




「………え、君………?


読書してないの?……神にあらがうのか?


神は言った。『本=神』と」


「さすがに無理あんだろ」


「本に不可能という文字はない。


ゲームを作るのにプログラミング能力や機械が必要だが、本は違う。

文字や絵を書けば完成。ストーリーや構成に専念できる、まさに神の化身!

全知全能の神に等しき存在は本なのだ!文学なのだ!

………念のため聞いておくが、君、趣味は?」



「YouTube」



「ぐわっっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


本の虫は吐血した!


「電子系にアレルギー反応が出てるぞこいつ!」


ロックも慌ててツッコむ!



「あぁ、あとゲームも好きだねぇ」


「おえぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」



とぼとぼと、彼は血液を口から吐く。


「げ、ゲーム⁉︎………YouTube⁉︎⁉︎………な、なぜぇぇ」


「本が好きなんじゃなくてゲームが嫌いなんじゃねーのこいつ」


「げ、げ、げげげのゲーム⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


「遊んでね??????」


「あとねぇ、アイスキャンディー食べるのが1番好きかなぁ」



「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ⁉︎⁉︎ア、アイス、キャンディー⁉︎」



↓こっから本の虫の回想。







暑い夏だった。暑すぎて夜になってもセミが鳴くくらいだ。



私は本を読み、弟はアイスキャンディーを食べていた。


「兄ちゃんまだ本読んでんの?」


「悪いか?……お前こそまたアイスキャンディーか」


「そうだよ。神の食べ物だからねっ!」

「お前はアイスキャンディー教か」



弟がソファの上に立って、踊りながらアイスキャンディーを食べる。


その時だった。



グチャッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!


「⁉︎」「⁉︎」


アイスキャンディーが、私が読んでいる本のページに落下したのだった!


「⁉︎……………に、兄ちゃん…………」



「………前」

「え?」





「お、お前…………」




アイスキャンディーをひたすら憎んだのは、この夏からだった。

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