第37話 ストンヒュー兵団、参上

「はなて!!」

 

 シュカカカカカカ!

 

 衛兵たちが一斉に竜に向かって弓から矢を放つ。

 

「!」

 

「投石!!」

 

 イヌの衛兵たちがその場で回って、竜に遠心力の乗った石を飛ばす。

 

 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!

 

 竜に当たるが利いてるようには見えない。

 

「グウウウウウウウウ!!」

 

 竜はバサッと翼を広げはばたくと森の上へ。

 そして、どこかへ飛んで行ってしまった。

 

『『『おおおおおおおおおおお!!』』』

 

 まるで長い時間をかけて勝利したかのように喜ぶ衛兵たちだった。

 

(……ってストンヒューの衛兵たち?)

 

「何とか追い返せましたね」

 

「ああ、みんなよくやった」

 

「……ハンス衛兵長? それからシャルンス王子?」

 

「やぁロード、怪我はしてないみたいだね」

 

「まさか……オレを助けに?」

 

「たまたまだ。君がここにいるなんて思わなかった。けれど、ほんとに危なかった……もう少しで友人を失うところだった」

 

 辺りの惨状を見渡して言う。

 

「……間に合ってよかった」

 

「はっ、は、はぁ~~~~~~~~」

 

 緊張が解けたせいかその場に力なく座り込むロード。

 

「大丈夫か? 気分が悪いんじゃないか」

 

「ええ、まぁ……」

 

(怖かった~~)

(意識はあるか? 生き残ったのか?)

(夢じゃないな……助かったんだ)

 

「はぁ~~」

 

(あんなに怖い思いしたのは初めてだ)

(何であんなことを……)

 

 竜に立ち向かっていった時のことを思い出す。

 

(そういえば逃げ出さなかったな)

(この身体で竜に戦いを挑んだのか)

(何やってたんだ勝てるわけないだろ)

(まったく危うく命を落とすところだったぞ)

 

 両手を見る。

 

(これ、オレの手か……?)

(自分の身体じゃみたいだ)

(なんか……自分の意識に身体が追いついてないみたいな感覚が……)

(何言ってんだオレは……)

 

 衛兵たちに目を向けると、皆汚れた格好でボロボロだった。

 よく見ればそれは王子も同じだった。

 

(凄い戦いをして来たんだろうな)

 

 まだ森には炎が残っていたが、なんとか広がらずに住んでいた。

 炎を眺めていると、

 一緒に行動していた者たちがこっちに駆け寄ってくる姿が見えた。

 

「ロードォ!!」


 ルロウが叫ぶ。

 

「皆いるチュウ!?」「あっ王子チー」「竜は逃げたのチャア?」

 

「たくさん人がいるくま~~」「ブクマ何してる! 荷物を取りに行くブン!」

 

 座っていると力が戻って来たので、そろそろ立ち上がる。

 

「王子、さっきのが、悪しき竜ですか……?」

 

「その通りだ。残念な話だが、アレを倒す見込みはまだたっていない。今も追い返すことは出来たが、まるで手応えを感じなかった。きっと用が済んだから住処すみかに帰ったんだろう……」

 

「アレは仕方ないチュウ」

 

「王子たちはずっとあの竜と戦いを……?」

 

「ああ、戦いに行っては、追い返されての繰り返しだった」

 

「あんなの敵いっこないチー」

 

「ぎ、犠牲者は……?」

 

「幸いなことに命を落とした者はいない。怪我だけで済んでいる」

 

「それは良かったチャア」

 

「雰囲気……少し変わられましたね」

 

「そうか? ……ここのところ何度も命を懸けたからだろうな」

 

「王子」


ハンス衛兵長が囁く。

 

「ん?」

 

 その時、森の向こうから武装した集団が現れた。

 真ん中にいたのはカリフ王だから、レオリカン王国の衛兵たちに違いない。

 

「悪しき竜はどこだ? ストンヒューの王子」

 

「ここにはもういません。レオリカン王国に戻っていたと思われます」

 

「お前たちが連れて来たのか?」

 

 周りのの惨状と竜の飛び去った空を見て聞いてきた。

 

「いいえ、カリフ王。あの竜は自らこの地を目指していました。私たちはそれを知りここまで追いかけて来ただけです」

 

「悪しき竜が自らこの地を目指して来ただと? 馬鹿な、ありえん」

 

「竜が近づけない山があるからか……?」


 ルロウが話に割って入る。

 

「むっ! それは……」

 

「怪しいチュウ」「何かあるチー」「噂は本当なんだチャア」

 

「……………………」

 

 難しい顔をして黙り込んだ。

 

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