第20話 勇ましき王の道に続け
昨夜はあまり寝付きは良くなかったロードだけど、その日の朝には目を覚ますことが出来た。
ストンヒュー宮殿・玄関広場。
時刻は朝の9時過ぎ。
王子率いるストンヒュー兵団が竜を討伐するためにレオリカン王国へ出発する日だ。
大勢の人や動物たちが集まっている。
旅立つ王子と衛兵たちとそれを見送る王様に大臣たち、使用人の一同が広場に集まっている。
おかげで誰も彼もが動きづらい状況に身を置かれている。
衛兵たちは人、馬、イヌ、サルが主なって、それぞれ専用の装備を身に着けている。
衛兵の内、人やサルが戦いの主力のになるようだ。多くの者が武器を腰につけ、盾を背負っている。
衛兵の内、馬は仲間である人をその背に騎乗させて走る。
素早く目的地に移動することと、戦闘時に人を乗せ共に戦うことが役割だと聞いたことがある。
衛兵の内、イヌはとても小回りが利くので部隊を編成するうえで彼らの存在は欠かせないらしい。
馬に引けを取らない足の速さがあることと鼻が利くため危険を察知しやすいことが理由のようだ。
短剣や投擲する類の武器を身に着けているので戦闘時はそれを使うとのことだ。
他にはキジの衛兵もいる。
衛兵たちの幾人かはストンヒュー王国の国旗を掲げていた。
▼ ▼ ▼
(王子に挨拶しておかなきゃ……)
集まった人と動物たちをすり抜けて目的の人物を探す。
そして見つけた。
「シャルンスよ。よくぞ、竜の討伐に名乗り出た。私はお前を誇りに思うぞ」
「……父上」
馬に跨ったので見つけやすくなっていた。
「生きて帰ってくるのだぞ」
「はい!」
固く誓い合う親子の間に入っていいのか……その時はいつ頃かと見定めてから、
「いってらっしゃいませ、王子」
「ロード、見送りありがとう」
「オレはここで王子たちの勝利を祈っています。どうか悪しき竜を倒してください」
「もちろんだ。私は英雄になって帰ってくると約束しよう」
「王子、そろそろ……」
ハンス衛兵長が催促する。
「ああ、わかった」
王子が馬に合図を送って、背後の衛兵たちに振り返る。
「行くぞ! ストンヒュー兵団! 目指すは悪しき竜のいるレオリカン王国だ!」
【ストンヒュー兵団】
『『『おおおおおおおおお!!』』』
『『『わおーーーーーーん!!』』』
ダッタダ! ダッタダ! ダダ―ン! いくつもの打楽器の音が響く。
パーパパパッパーパー! パーパパパッパーパー! いくつもの喇叭の音が響く。
王子を先頭に兵士たちが広場から続々と正門に向かっていく。
「門を開けーーーー!!」
ガッガガガガ!!と歯車仕掛けの大きな門が開いていく。
正門が開かれるとその先には真っ赤なカーペットがどこまでもひかれたストンヒュー大通りがあり、
『『『ワァァァァァァァァァァァ!!』』』
ストンヒュー王国の人と動物の民たちが赤いカーペットの両側にひしめいていて大歓声が巻き起こった。
王子の乗る馬が一歩、正門を超えて大通りを堂々と進む。後方の馬たち、イヌたちも次々に続いていく。
すると、兵士である馬やイヌやサルやキジたちは自然と歌を口ずさみ始めた。
それはストンヒュー王国の兵士たちの歌。
『勇ましき王の道を征け』
俺たちは勇ましい馬だ~~俺たちは勇ましい馬だ~~
人の民のために今日も走り~~動物の民のために今日も走る
競争が大好きだ~~でも賭け事は大っ嫌いだ~~
俺たちは勇ましい馬だ~~俺たちは勇ましい馬だ~~
国の民のために今日も働き~~世界の民のために今日も働く
ニンジンが大好きだ~~でもキャベツは大っ嫌いだ~~
火に燃える野原を駆けて~~汚い泥沼の大地を駆ける~~
白馬のユニコーンにも~~劣りはしない
天が怒りを降らせても進み~~天が悲しみを降らせても進む~~
白馬のペガサスにも~~劣りはしない
いざ行け~~いざ行け~~
勇ましい王の道につづけ~~
◆ ◆ ◆ ◆
ストンヒュー宮殿のシャルンス王子は前を向き誰よりも先頭を行く。
ストンヒュー王国の国旗を掲げている衛兵たちの列が後ろから続く。
ストンヒュー大通りに敷かれた赤いカーペットを長い行列が進む。
ストンヒューの国民たちは大きな声援と盛大な歓声を彼らに贈る。
ストンヒューの大正門では王様や大臣たちに使用人一同が見送る。
ストンヒュー兵団に見てもらえずともロードは小さく手を振る。
こうして、王子をはじめとしたストンヒュー兵団は、悪しき竜を打ち倒すべくレオリカン王国へ旅立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます