東京都豊島区の現状3

2人の男が足音を抑えながら裏路地を歩いている。二人は共に黒いコートを着ており一人の髪は青くもう一人は赤い。彼等はどこを目指しているのか知らないが、明確な目的地のある人特有のあゆみをしている。二人はなぜだか極限まで音を抑えた行動をしているようだ。不意に髪の赤い男が口を開く。


「なぁ 実際この作戦どの位勝率あると思ってる。」


赤髪の声音は強面な見た目に反して随分と弱気だった。どうやら人は見た目に寄らないを体現した性格らしい。


「なぁに 大丈夫だよ。コッチにはあの人がいるんだからよ。」


青髪の瞳に怪しい光が宿る。それは信頼というより心酔という様子だった。そんな青髪の様子に赤髪は引き気味な様子だ。どうやら二人は単純な仲間関係というわけではないらしい。


「だけど、相手は相当手強くて規模もデカいって話だ。それに比べてこっちは、たった100人そこそこなんだぜ? それも大半はチンピラのガキだって話じゃないか。 正直俺は、いくらあの人がいるとはいえ無理だと思っちまうんだよ。」


「ハァ お前マジでそんなナリして弱気すぎだろ。だから大丈夫だってんだよ。あのガキどもだって唯のガキじゃなくて、あの人が選んだ立派な戦闘要員なんだからよ。全く、ウダウダ言ってねぇでさっさと行くぞ、赤坂。」


「おい…待てよ 青木」


どうやら青木というらしい男が話を切り上げて小走りでさっさと行ってしまった。赤坂というらしい男はすぐにそれを追う。




「君たち、分かってると思うけど、そろそろ作戦は最終段階に入る。各自、やることをやってその日に備えてくれたまえ。あぁ勿論覚悟も忘れずにね。」


真っ黒のスーツを着た男の声が薄暗い室内に響く。男の年は10代後半から20代前半くらいだろう。真っ黒な短髪黒髪に整った顔立ちをしていて、身長は175センチくらいだろうか?少し吊り目気味なのが印象的だ。男がいるのはビルの地下の一室だった。だからだろうか、そのキザったらしい喋り方が嫌に反響してくる。それも相待ってか、その部屋の雰囲気は異様だった。喋り出した男の声を囲むようにして話を聞いている凡そ100人程度のほとんど全員がトロンとした危ない光をその瞳に宿して男を見ている。その目をした者たちが発する狂気がその部屋の異様な雰囲気の原因らしい。目にその光が宿っていない人はといえば、喋り出したキザな男と先程路地裏で喋っていた赤坂という男の二人だけだ。近くに青木という男の姿もあることからどうやら二人の目的地はここだったらしい。


「まぁ 脅すような事を言ったがね、僕らにとって豊島区を乗っ取ることなんて前哨戦にすぎないんだから、気負わずに行こうじゃないか。なんたって、僕等の野望はゆくゆくはかつてこの僕を拒絶したこの国を乗っ取り僕の王国にすることなんだからね。君らもその為の犠牲になれるなら本望だろう?」

「その通りだ。」

「アンタについてくぜ。」

「我々の命はあなた様のためのものです。」

「ヤッホー 目に物見せてやるぜ。」


部屋の大多数は男の自分本位の塊のような発言にも肯定的だ。寧ろ男に頼られて嬉しいという反応が大多数だろう。例外といえば、何の感情も感じさせない顔で裏の方から周りを観察している赤坂唯一人だった。


「そうかい、そうかい。大人気で僕も嬉しいよ。君たちのような仲間をもてて僕は幸せ者だ。」


表情どころか男の雰囲気そのものが一瞬にして変わった。その一瞬、そこに先程まで自分本位な発言をしていた人物はどこにもいなかったまるで別人の心底仲間のことを思っている善人の男だけがいた。先程の発言を考えればそんな事思ってもないだろうに不思議とその表情にまるで違和感を感じられない。演技とも違うまるで男が本当にそう思っているような表情だ。別人に変わったと言われても違和感がない。しかし周りはその違和感にはやはり目が入っていないようだ。彼等はそれを嬉しそうに聴いている。中には涙を流しているものすらいた。


「じゃぁ そういうわけだから。準備よろしくね。 解散」


また、一瞬にして男の雰囲気が元に戻って、この会は終了した。後は波乱の戦場が開かれる時を待つばかりだ。




ベットに寝転びながら天井を見上げる。いつも見上げている天井だが、今日はそれだけで青空を見上げているように清々しい気分になれた。地下の部屋であるのに青空とは少々センスがないかもしれないが、ともかくそのくらいキザったらしい男・心握こあく 堕人だびとは今気分が良かった。何故かと言われれば、それはもう直ぐ自分の目的に大きく一歩近づくことができるからだった。 堕人にとって豊島区の一件は全て想定通りに動いていた。いや,もっと言えば あの力に目覚めた日から全てが想定通りに上手く回っていた。堕人は彼が仲間と呼ぶ物たちの前であたかも自分が復讐者のような口調で目的を語ったがあれは全くの嘘だった。かと言ってただ黒幕気取りの悪党であるわけでもない。確かに、自分の手のひらの上で状況が踊るのはたまらなく楽しかったし、自分より遥かに強い人間たちが自分の言葉で一喜一憂して自分を神のように崇めてくるのは気持ちが良かった。だが彼にとってその全ては所詮は戯れにすぎない。彼の真の目的はこの国を乗っ取って、その上で彼の天賦 洗脳侵食 で全ての人を仲間にすることなのだから。


堕人は寝転がりながら右手を天井に向けて伸ばす。その瞳はドロリとした呪いのような何かを帯びながらも何処か遠くをみている。


「もう直ぐだよ。 もう直ぐみんな仲間になるよ、父さん」


そう呟いた堕人の姿は昼間のキザッたらしい人物とは思えないほど酷く悲しげだった。







ごめんなさい🙏 あんま上手く書けんかった。










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