きっと世界は知るだろう
呪骨杖の作成から数日が経った。テンジュはこの数日間、おそらく大きく変容しただろう外の世界に出るために店中の物をかき集めている物といない物を見分けたり、時には天賦を使って何かを作り出したりして準備していたのだが、それもようやく整い、後は一歩外に踏み出すだけとなった。
嗚呼 ようやくだ、ようやくなのだ。熱い高揚が血液のように体に駆け巡る。それほど今のテンジュにとって外に出るということは大きなことだった。ようやく本当に自由な何にも縛られない生き方をかつて自分を飼い殺した世界に体現し証明する一歩を踏み出すことができるのだから。確かに店長やあの迷惑客を殺した時から枷は外れていたのかもしれない。だが,この店はかつての不自由な自分の象徴とも言える場所であった。だからこそ、この店を出た時からようやく新たな生き方を真に始められるという区切りのような感覚がどこかでしていた。
全ての準備を終えたテンジュは店の出口に立つ。不思議と先程まで猛烈に感じた高揚感は今はしなかった。ただ
そうして外への一歩を踏み出す時、テンジュは嗤った。嗤いながら世界に吠える。
さぁ、かつて常識と普通という言葉で俺を飼い殺した世界よ、ナニカが変わった世界よ、これから俺が
そう思いを馳せてテンジュは出口の扉を潜った。きっとその時の表情を見れば誰も彼がイカれた怪物だとは思わないだろう、それほど満面の笑顔を浮かべていたのだ。まるでプレゼントをもらった少年のような笑顔を。
この日 この瞬間 五逆天授という怪物が小さな鳥籠から世界に降り立った。これから彼がこのナニカが変わった世界でどんなことを成すのかは誰も知らない。ただ一つ言えるなら、きっと世界は知るだろう 自由という名の 異端と狂気の在り方を。
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これでこの章は終わりです。
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