初めてのキス 2人用台本
ちぃねぇ
第1話 初めてのキス
奏多:ちづちゃん、おかえり~今日もお疲れ様!
千鶴:ただいま~
奏多:留守のお家はしっかり守ってたよ!
千鶴:守ったって…泥棒が入ってきても、奏多じゃ何にもできないでしょ?
奏多:そんなことないよ!ポルターガイスト引き起こして驚かして追い出してあげる
千鶴:奏多って物に触れるっけ?
奏多:地縛霊舐めないでね?ちょっとした物なら持ち上げられるんだよーコツがあるんだ。見たいならやってあげようか
千鶴:結構です。奏多って地縛霊何年目?
奏多:ん~…10年?15年?20年?長いこと居過ぎてわかんないや
千鶴:じゃああたしと同じ大学生に見えてるけど…結構おじさん?…やだあたし、おじさんと同居してんの?
奏多:普通はおじさん同居よりも幽霊と同居の方を嫌がると思うけど
千鶴:だって、ここのアパートの家賃、他に比べてずっと安いんだもん!
奏多:ちづちゃんはホント肝が据わってるよね
千鶴:そかな?最初金縛りにあった時は驚いたよ?大家さんが「ここ、出るのよ」とか言ってたけど、全然信じてなかったから
奏多:ちづちゃん、僕に会った最初の一言が「あ、幽霊にも足あるんだ」だったよ?あれで驚いてたの?あんな反応されたの初めてで僕の方が驚いたんだけど
千鶴:別に敵意感じなかったし、いいかなぁって
奏多:いいかなって…夜寝てるときに男に覆い被されたんだよ?ちょっとは危機感持ってよ。おおらかすぎるよ
千鶴:やった本人が言うなよ。てか…奏多はどうして地縛霊なんてやってるの?
奏多:ジョブみたいに聞かないでよ。僕だって好きで成仏してないわけじゃないんだけど
千鶴:成仏したいの?
奏多:…昔はね。毎度毎度僕の顔見て腰抜かす人見てきたし。……でも今は消えたくないかなぁ
千鶴:なんで?
奏多:そりゃー!こんな可愛いちづちゃんと同居できるからだよ!僕、生きてる間は女の子に全然縁が無くて…女の子と一緒に暮らすだなんて全く想像してなかったから…今、毎日が楽しいんだ!
千鶴:なんで?奏多結構かっこよくない?奏多の周りの子、よっぽど見る目が無かったんだね
奏多:やだ…ちづちゃん好き
千鶴:何、白い顔赤らめてんのさ。あーあたしお風呂入ってくるね
奏多:あ、じゃあ僕も
千鶴:覗いたら塩撒くよ?
奏多:…大人しく待ってまーす
0:千鶴退場。
奏多:ずっと…一緒にいたいなぁ…
0:1週間後。
奏多:今日もお疲れ、ちづちゃん
千鶴:あ~…疲れた…
奏多:このところかなり大変そうだね?
千鶴:レポートが鬼なのよ…グループ課題だって締め切り間近だってのに誰も焦んないしっ…!
奏多:ちづちゃんは何でも一人でやっちゃうから…抱え込んじゃだめだよ?頑張り屋さんのはちづちゃんのいいところだけど、頑張りすぎるのはちづちゃんの悪い癖
千鶴:どうしよう、奏多に惚れそう
奏多:いいよ、僕を好きになって
千鶴:いやねーよ。幽霊に恋とかねーよ
奏多:なんでよー僕ナシ?ちづちゃん的にはカッコいい部類に入るんでしょう?
千鶴:調子乗んな。あたしはね、仕事のできる大人の男が好きなの。奏多はどっちかって言うと…ニートじゃん
奏多:ぐさっ!今のかなり刺さったんだけど!?
千鶴:自分でぐさっとか言うんだw
奏多:…笑った
千鶴:え?
奏多:ちづちゃんは笑顔の方が可愛いよ
千鶴:……奏多のくせに生意気
奏多:ええ?ひどーい
0:2週間後。
奏多:ちづちゃん、大丈夫?熱測った?
千鶴:うん
奏多:何度?
千鶴:…37.2℃
奏多:……ホントは?
千鶴:…38.8℃
奏多:どうしてそういう嘘を吐くかな
千鶴:熱があるって認めたらその瞬間から病人になっちゃうのよ!
奏多:もう十分病人だよ!
千鶴:ねぇ奏多…おかゆ食べたい。卵がゆ。…作ってよ
奏多:…卵掴むところまではいけそう
千鶴:ちぇっ
奏多:…ごめん
千鶴:…ふふっ。なんで謝るのさ
奏多:僕…何もできないから
千鶴:わかってないなぁ。…いてくれるだけで嬉しいんだよ?病気の時に独りきりって、寂しいじゃん
奏多:……最近、ちづちゃん食欲減ったよね
千鶴:そうかな
奏多:うん
千鶴:ダイエット成功?
奏多:十分細いのに何言ってるの
千鶴:脱いだら結構お肉ついてるよ?
奏多:ついてなかったよ?
千鶴:……いつ見たのかな?塩、取ってくれる?
奏多:ごめんなさい
千鶴:ふふっ。やっぱ独りじゃなくてよかった
奏多:ちづちゃん……ねぇ僕、ちづちゃんに言わなきゃいけないことがあって
千鶴:ごめん奏多、あたし…そろそろ眠いや。寝てもいい?
奏多:ああ、うん。…おやすみ、ちづちゃん
0:2日後。
千鶴:おっかしいなぁ…熱、全然下がらないや。もう3日よ?インフルエンザは陰性だったし…
奏多:ちづちゃん
千鶴:ごめんね、奏多。全然相手できなくて。つまんないよね
奏多:ちづちゃん
千鶴:風邪なんか滅多に引かないから…治り方も忘れちゃったのかな…
奏多:ちづちゃん、聞いて
千鶴:…どしたの?泣きそうな顔して
奏多:ちづちゃんの体調不良、多分僕のせいだ
千鶴:え?
奏多:昔もあったんだ。僕のこと怖がらないでちょっとの間、傍にいてくれた人。でも、その人もだんだん弱っていって…最終的に、入院した
千鶴:入院
奏多:うん。あ、でも入院したらすぐ回復して…多分、幽霊なんかと一緒に住んでたから…僕、知らず知らず元気を貰っちゃってたんじゃないかな
奏多:だから、僕と離れたことでその人は元気になった。その人は退院してすぐ引っ越しを決めたよ。僕は何も言えなかった
千鶴:奏多
奏多:ちづちゃんの熱も、僕のせいだと思う
千鶴:考えすぎよ。これは単なる風邪
奏多:ちづちゃん、聞いて。…今すぐに引っ越して
千鶴:嫌よ。ここ安いんだもん
奏多:ちづちゃん!
千鶴:…なによ。あたしと暮らすの、嫌なの?
奏多:嫌なわけないだろ!?僕は…僕はっ…ちづちゃんと一緒にいたいのに…!
千鶴:じゃあいようよ
奏多:だって…ちづちゃんが
千鶴:考えすぎだよ。幽霊が生気吸い取るとか、出来過ぎだって
奏多:ちづちゃん!
千鶴:あたしが奏多といたいの!だから…一緒にいてよ
奏多:……ちづちゃん。…僕のこと、好き?
千鶴:全然
奏多:そっか…僕は好きだよ
千鶴:あっそ
奏多:ねぇ、ちづちゃん。…キスしていい?
千鶴:やだ
奏多:お願い…キスさせて
千鶴:嫌ったら嫌!もうあたし寝るから!それ以上喋ったら塩撒くわよっ
奏多:…わかった。おやすみ、ちづちゃん
0:2日後。
奏多:熱、下がらないね
千鶴:こんなの…寝れば治るわよ
奏多:もう何日も寝たよ
千鶴:まだ寝足りないのよ
奏多:それ以上寝たら目が溶けちゃうよ
千鶴:ふふっ…なにそれ
奏多:ちづちゃん、聞いて
千鶴:やだ
奏多:まだ何も言ってないのに
千鶴:どうせ碌なこと言わないんだもん
奏多:僕…本当は成仏する方法知ってるんだ
千鶴:喋んないで
奏多:僕ね、本当に生きてる間ずっと女の子に縁がなかったから
千鶴:喋んないでっ!
奏多:僕、一度でいいから恋がしてみたかったんだ。誰かを好きになって、誰かに好きになってもらいたかった
千鶴:黙って
奏多:ねぇ、ちづちゃん。…ちづちゃんが好きだよ
千鶴:黙ってってばっ!
奏多:ちづちゃんは僕のこと、好き?
千鶴:嫌いよ!奏多なんで大っ嫌い!
奏多:…ごめんね、ちづちゃん。でも僕これ以上、ちづちゃんを苦しめたくない
千鶴:苦しんでなんかない!これはただの風邪!奏多には関係ないの!
奏多:大っ嫌いな僕に…ごめんね、ちづちゃん。僕は、たった一度だけでいいから…キスしてみたかったんだ。僕の未練はこんなどうでもいいことだったんだよ
千鶴:やだ
奏多:ごめん
千鶴:来ないで
奏多:ごめんね、ちづちゃん
千鶴:来たら殺す
奏多:もう死んでるよ
千鶴:全身塩まみれにするわよっ
奏多:いいよ
千鶴:やだ…
奏多:ちづちゃん
千鶴:やだ…消えないでよ
奏多:ちづちゃん…
千鶴:もっとずっと、一緒にいてよ。成仏なんてしないでよっ!あたしの傍にいてよっ
奏多:ちづちゃん……
千鶴:好きよ!とっくの昔に…大好きよ!奏多なんて…大好きよ…!
奏多:うん。…ちづちゃん、大好きだよ
千鶴:治すから!こんな風邪、さっさと治すから!だから…ね?また二人でバカみたいな話しようよ!消えるだなんて…言わないでよっ
奏多:ちづちゃん…僕、初めてのキスだから…歯とか当たったらごめん。震えてて不格好でみっともないけど、許して
千鶴:やだ、来ないで
奏多:ごめんね、ちづちゃん…好きだよ
千鶴:やだ…やだぁ
奏多:好きになったのがちづちゃんでよかった
千鶴:やだぁ…!
奏多:ねぇ、ちづちゃん。笑って?ちづちゃんの笑顔が、僕は世界で一番好きなんだ
千鶴:無理だよ…笑えないよ
奏多:ごめんね、いままでありがとう
千鶴:やめてよ…奏多…
奏多:無理しすぎたらダメだよ。ちゃんと周りを頼ってね
千鶴:奏多…
奏多:いつか、いい人と結ばれてね。…大好きだよ、ちづちゃん(リップ音)
0:ぼぅっと淡い光が奏多を包む。千鶴が目を閉じた瞬間、奏多の姿は霧散していった。
千鶴:……バ奏多。あたしのファーストキス…勝手に奪わないでよ…
0:数日後。
千鶴:本当に…嘘みたいに身体軽くなったな…でも、よかったのに。調子が悪いくらい、どうってことなかったのに…勝手よ
千鶴:……安かったけど、ここ引っ越すか。…ここは、奏多の匂いがきつすぎる
千鶴:……………うんと長生きして、会いに行く。そんで張り倒す。塩まみれにしてグーパンするから。…空で見てる?奏多。首長くして待ってなさい!
0:空から微かな笑い声が聞こえた気がした。
初めてのキス 2人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
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