第7話 始まりの追憶 3
1時間くらい経っただろうか。
教わる通りにやってみてるけど、感覚でしか分からないっていうのも難しいな。
魔力を変換する属性魔法はハッキリしたイメージが出来たし、実際に火や水に変わって分かりやすいんだけど。
透明な服なんてどうイメージするのやら。まぁとにかくこれは要練習……身を護る以上、真面目に大切な事だし。
まだまだ続けたいけど、だいぶ疲れてきて息も上がってしまってる。
この疲労が魔力の消費による負担なんだな。
今日1日どころかほんの数時間、しかも途中で一息ついてたっていうのに。たったそれだけでもこんなに疲れるのか……なかなかキツイな。
「強化は体の中で完結するから魔力は殆ど減らないけれど、障壁は解いたら魔力が霧散してしまうから気を付けて」
なるほど、強化は燃費が良いと。
んで、障壁の方は多分、維持出来なきゃどうしようもなさそう。なかなか難しそうだ。
「予想はしてたけど、シアは体が弱いから魔力の消費はすぐつらくなっちゃうみたいね」
「うーん……魔力、もっともっとたくさん欲しいな……魔力ってどうやって増やすの?」
「使えば増えるよ。魔力が回復する時に、今までより少しだけ多くなるの。本当に少しずつだし、増えれば増えるほど伸びなくなるけど」
筋トレかい。
限界まで追い込めば効果が上がるのかな。で、際限無くなんてのも無理と。
今でも結構つらいけど、どこが限界なのか知っておくべきだろうか?
「多く使うほど増えやすいけど……使い過ぎは命に係わるから気を付けてね。今みたいに少しでも異常を感じたら止める事。あなたは特に、ね」
労わるように俺と目線を合わせて座って、優しい顔と声で諭すように頭を撫でながら言われる。
でも属性魔法がダメなら、魔力量くらいはどんどん伸ばさないとなんか悲しい。
魔法が当たり前の世界で、最低限の事しか出来ないってのは嫌だ。
かと言って分かりきったリスクを負って心配かけるのも……嫌だ。
「ん……でも私は属性がダメだし……魔力くらいはいっぱいないと……ちょっと無理してでも、どうにかならない……かな?」
心配されている事への後ろめたさで、もにょもにょとワガママを言う。
そう言うと、お母さんはちょっと困ったような顔をした。やっぱり心苦しいな……
「魔力が多くなれば、ちょっと使ったくらいじゃ負担にならないようになるから、増やす事自体はお母さんも賛成よ」
そうか、そもそもの量が増えれば消費するのは相対的に少なくなって、結果的に負担が減るのか。
つまり魔力を使う事自体ではなく、魔力が減ってしまった状態が問題なんだな。
それなら確かに増やす事は大事……というか誰にとっても生命線じゃないか。
そんな事を考えていたら、お母さんは頭を撫でていた手をそのまま頬へ。
両手で俺の頬を挟んで、より真剣な表情で続ける。
「でも、その為に無茶な危険を冒すのは許可できない。シアは頭が良いから……分かってくれるかな?」
「ん……」
「お母さんかお父さんが傍で見てる時に、ちょっとだけ多めに頑張ってみる……くらいだったら良いかな。続ければしっかり効果は出るもの」
「分かった……ワガママ言ってごめんなさい……」
まぁそうだよね、少しずつ頑張ろう。
無理して一気に増やしていく必要があるわけじゃない。
「良いの。小さくてもあなたはあなたで考えてるんだって分かってるから。大丈夫、焦らないでゆっくりやろう。私達の大事な娘なんだから……シアに危険が無い範囲なら、何だってしてあげる」
そうして、ぎゅっと抱きしめながら言うものだから。
「んぅ……」
なんだかポカポカとあったかくて。
焦って無茶しようなんて考えは解けて消えていった。
そんな事に気持ちを持っていかれるよりも、こうして家族と居る今を楽しむ方がずっとずっと良いなって。
疲れて眠くなってきた頭で思ったんだ。
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