第8話 始まりの追憶 4
この世界は、属性に合わせた7日を1週間、30日で1月、12ヶ月で1年になってる。
1年が5日短いけど、四季もあるしやっぱ地球に似てるね。
大まかに3か月毎に季節が移る感じかな。いや、地域によるか。
今は春……新年、1月になったばかり。
微妙に前世の感覚と違うのが少しややこしいけど慣れた。
そして気付けば魔法を学んでから、早くも2年ほど経ってる。
俺――いや私はもう7歳だ。
身体能力の強化はやっぱりというか……なかなか負担が大きかったから放置してる。後でまともに動けなくなるほどの筋肉痛と疲労がヤバイんだ。
つまり私に出来るのは障壁のみ。
しかも魔力の消費自体でも疲れやすいから、まず前提として魔力量を伸ばしていかなきゃ話にならなかった。
なんだろう……せっかくこんな世界に生まれたというのに、残念な性能した自分が憎い……悲しい……
更に追い打ちをかけるように、虚弱な体は思ったより改善されず成長すら遅い始末。
ただしこれに関しては理由は想像出来てる。
だって体が弱いのに頻繁に鍛錬を続けてたら、例えその時は無理してないつもりでも積み重なっていくもんだ。
元々食が細いし、運動が減って疲労が重なるんだから。
まぁそれに思い至ったのはつい先日だけどね……私って馬鹿。
でも成長を犠牲にするほど打ち込んだお陰で、私の魔力量はしっかり伸びているし障壁もなかなかのものだ。
まぁ1つの事だけに集中していれば伸びて当たり前か。
そして考えている事があるんだけど、この障壁……魔力をぎゅっと固めて纏うというのは、他に何か出来ないだろうか。
例えば、魔力で武器を作ることが出来るのか?
例えば、目の前に壁として障壁を作ることは出来るのか?
例えば、魔力だけをぐわーっと飛ばしたり出来るのか?
まぁ、もしそんな事が出来るのならとっくにそういった技術が広まっているはずだけどね。
広まってない以上、存在しないか使われない理由がある訳だし。
そういった事を考えつつも、ひとまず鍛錬はかなり軽くする事にして遊びに行く事が増えた。
流石に体が弱くて成長も遅いのは不服だからね。体を動かせば変わると思いたい。
学校もあるみたいだし、入学までは遊びまくるつもり。
一応中身は大人だから、本来学校へ行くまでに学ぶ事が短縮出来てるんだ。だからその分好きなように時間が使えるわけ。
そのお陰で頭が良いと勘違いされちゃってるんだけどね。ズルしてるみたいでなんか恥ずかしい。
まぁそんな感じで、好奇心の赴くままとにかく毎日を楽しんでる。
まだ子供だけど、既に前世より満たされている気がするんだ。
興味と言えば街の外も気になるけど、子供が勝手に出れる訳が無い。
魔物を退ける結界の発生装置を中心に円状に作られた街は、更に外周を壁で覆って護ってる。
そして外で日々魔物と戦ってくれている、狩人――ハンターという職の人。
両親もハンターだけど、お母さんは私が生まれてから家に居る。
魔物。私は見た事無いし、人から聞いたり本で読んだ程度の知識しかない。
人が魔力を放出すると、負のマナと呼ばれるものが生まれて……それが集まって何らかの生物の姿を模して魔物になるんだとか。
魔力の使用を控えれば良いんじゃないかって思うけど、生きているだけで魔力を生んで溢れていくから変わらない。
それなら上手い具合に使っていこうという事らしい。魔法という技術も捨てられる物ではないし。
そんな魔物は放っておくと少しずつ力を増してしまうから、街の外で戦って処理する必要がある。その為のハンター達だ。
だから彼らは最も重要な職業と言っていい。
適正も無い貧弱な私はハンターにはなれないって早々に悟ってる。別になる必要は無いんだけど……じゃあ将来何をしようなんて思ったりもする。
誰でも当たり前に魔法を使ってるから、魔法に頼らない仕事なんてそれこそ前世の感覚で言う普通な物だ。
ファンタジーな世界に生まれ変わって普通に働くのもなぁ……面白くない。
世界を旅する人もいて、そういう本も多いから……出来るなら旅をしてみたい。
街から街へ移動するだけじゃない。山や森といった街の外だって冒険するんだ。
旅人――シーカーと呼ばれる彼らは行く先々で何かしら収入を得て、国や街に囚われず自由に生きている。
せっかくこんな世界に生まれ変わったのだから、私も旅をして沢山の物を見て経験してみたい。思いっきり楽しんでみたい。
だから私が目指すならシーカーかなと思ったんだけど……やっぱり戦えないというのが大きな問題。
敵だらけの危険な旅なんて、実力も相当高いからこそ出来るんだ。
集団に混ぜて貰えばなんとかなるだろうけど、誰が足手まといを連れていくと言うのか。
そんな考えから、少しでも魔力で何か出来ることは無いかと試行錯誤したりと藻掻いているわけだけどね。
ま、私はまだまだ子供だし……今は毎日楽しく遊んで、家族と幸せに暮らしていればいいよね。
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