第7話 突然のキス

コンコンコン


俺はこのバカでかい城の一番大きくて立派な扉をノックしして、中に入る。

アレンは座っていて、何だか難しそうな書類を重厚感のある机の上で、書いていた。


「失礼します。お食事をお持ちしました」


「…!!ユウ…待ってたよ!!嬉しい!!」


アレンは俺を見ると、嬉しそうに飛びついてきた。モフモフの尻尾が左右に激しく動いている。


「うわわ!!し、食事がこぼれてしまいますよ!!」


「!!すまない……ユウが来てくれたのが嬉しくてつい…。許してくれ…」


しかしアレンは俺を抱きしめる手は離さず、器用に食事が盛られているトレーを俺の手から机の上に置くと、ぎゅうううぅっと一際強く俺抱きしめてくる。


「く、苦しいですよ…アレン……様」


もどかしいような、恥ずかしいような、何とも言えない空気が流れる。


「…ねえユウ、どうして急に敬語になったんだい…?僕は敬語じゃない方が嬉しいんだけど」


「…ミューロさんから聞いたよ。アレンはこの国の王様なんだろ?だとしたら、俺の態度は失礼なんじゃないか?」


「ちっとも失礼じゃないよ!!むしろ、敬語で話される方が嫌だ!!!」


アレンは必死な形相で言うと、頬をプクッと膨らませた。

それに連動するかのように、もふもふの耳もヘニョっと下に垂れ、尻尾も項垂れた。


「ーーっあははははは!可愛いな!」


「な!!僕は真剣に言ってるんだよ!!」


「ーふふっ、ごめんごめん。うん、俺も正直言うと敬語じゃない方が喋りやすいから、その方が嬉しいよ。あ!それより晩御飯暖かい内に早く食べようよ!!ミューロさんが俺の分まで作ってくれたんだ!!」


俺は若干ふてくれされているアレンの頭を撫でた。


ーあ、耳がモフモフして気持ち良いなあ…


もふもふ、もふもふもふもふ、もふもふー


「…ユウもう限界だ…。やめてくれ」


アレンを見ると、顔が真っ赤かになっていた。どうやら自分でも気が付かない内に、アレンのモフモフの耳を撫でくり回してしまっていたらしい…


「ーーーあ!!ごめん!食べよう!」


「……うん」


俺たち2人は書類が置かれている机とは別の、大きな窓の近くにあるテーブルに食事を置き、椅子に腰掛けた。家具のデザインはどれもヨーロッパを感じさせるデザインで、どれもオシャレだ。

 窓から見える風景は色とりどりの氷がキラキラと光っている。


「…綺麗だ…」


「ユウがいた世界では、こんな風景はなかったのかい?」


「氷の大陸?はあったけど、こんな色とりどりの氷はなかったよ。それにしても、外はあんなに寒かったのに、この城の中は暖かいね…」


「室内暖房があるからね」


「そっか。それは俺がいた国と一緒だ…。それにしても、ミューロさんって凄いね!!料理の事めっちゃ詳しいし、このシチューだってパパッと作ってくれたんだ!!」


ミューロが晩御飯に持たせてくれたのは、鮭とじゃがいものシチューとパン、黄色野菜とナッツのサラダ、チーズ、そしてワインだった。

最初は俺が知っている材料は何も無いと思っていたが、ミューロによくよく聞くと、何種類かは俺のいた世界であった食糧もあった。それにしても日本料理をしていた俺からすると、何だかとてもオシャレだ…。


ごっくん


「ん~~~~!!アレン凄いよ!!このシチューめっちゃ美味い!!ジャガイモはホクホクしてて、鮭も新鮮でスープはトロトロで味付けの最高!!食べて!早く食べてみてよ!!」


俺はパンをシチューにつけると、バクバク食べる。だって、美味いんだもん!!


「ふふっ、ミューロ料理が上手なのはよく知っているよ。うん、今日も絶品だな。美味しい」


「だよな~~!!洋食作るの上手いって凄え憧れる!!ミューロさんイケメンだし!!」


「……」


「あんなにカッコイイ上に料理もできるなら、モテるだろうな~~。厨房の道具で使い方解らないヤツがあったけど、それも優しく教えてくれたし!!ミューロさんとなら、楽しく仕事がー「ユウ」


アレンが急に俺の話を遮り、声を発する。


そしてー…


えー…何これ柔らかい…何だこれ…


目の前には、アレンの顔があった。


ーーーーあ、俺キスされてるんだ。アレンにキスされてるんだ。


そう意識した途端、身体中の血液がブワッと沸騰し始める。

ってか息苦しいー…


トントントン、とアレンの胸を叩くとようやく唇を離してくれたーー

そう思ったら、また唇が塞がれる。


「ぷはっ、はーーーーはーーはーー…んあ!」


うわ、変な声漏れた。だってキス気持ち良いー…。

俺の口の中にアレンの舌が侵入し、上顎をくすぐる。

ゾワゾワして、頭がとろとろになる感じがする…。どうしよう、俺キスすんの初めてなのに…


アレン、どうして俺にキスするのーーー…?

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