第6話 美少年ロレインとヤキモチ

「そういう事だからユウー「アレン様ーーーー!アレン様ーーーーー!!どこにいらっしゃいますかーーー!?御来客ですよーーー!!」


俺が驚きすぎて魂が抜けていると、遠くの方から声が聞こえてくる。確かこの声は、美少年の声だ。


「ロレイン!!僕は厨房にいるよ!!」


「厨房!?何故そんな場所にいらっしゃるのですか!!」


美少年は、走ってこちらの方に向かってやって来る。なんせ、この城はデカい。俺が最初にいた寝室から厨房までも、かなりの距離があった。


「ー!!!な、泥棒!?まだ、いたのか!?アレン様、こんな素性の知れない奴は早く追い返した方が身の為ですよ!!」


美少年は俺の方を睨み付け、尻尾を立たせて威嚇の仕草をしている。シャーという音が、聞こえてきそうである。


「こらこらロレイン、そんな言い方はよしなさい。こちらはユウだ。ここの料理人として、この厨房で働く事になってくれたんだ。」


「なっ!!?正気ですか!!?もし、こやつがアレン様のお食事に毒でも入れたら、どうなさるつもりですか!?もっと慎重になって下さい!!」


「ロレインありがとう…心配してくれて。でも、ユウはそんな事するような奴じゃないよ」

アレンは真っ直ぐとロレインの目を見つめて、言葉を発した。妙な力強さがあった。


「ユウ、紹介が遅れたけど、こちらがロレインだ。ロレインは医者で、君が目を覚さない間はずっと看病してくれていたんだよ。」


「!!」


知らなかった。目を覚ました時には罵詈雑言の嵐だったから。しかしよくよく考えてみると、目を覚ました時にいたという事は、確かにずっと看病してくれていたという事である。


「~~~~っ、ありがとうございました!!本当に助かったよ!!命の恩人だ!!」


あのまま極寒の氷の世界にいたら、確実に俺は野垂れ死んでいたはずだ。それをアレンと、ロレインが救ってくれたのだ。


「~~~~~っ///////、べ、別に、アレン様が言ったから、助けただけですから!!あなたの為に助けた訳ではありませんから!!/////」


ロレインは顔を赤らめながら、白色のモフモフの尻尾を上下に揺らしながら答える。なんだ、こいつ…ツンデレかよ!!可愛いな!!


「あははっ、ありがとうな」


「な、何を笑っているんですか!!//////馬鹿にしてますね!?」


「ごめんごめん、してないよ。本当に感謝しているよ」


「そんな事ー「それよりロレイン、来客は大丈夫なのかな?」


少しムスッとした表情で、アレンが尋ねる。


ーーーーん?なんか怒ってない……?


「!!そうでした!!さあアレン様、応接室に早く来て下さい!!」


ロレインは急に慌てだした。

 はは、ロレインって何て素直な奴なんだろう。行動に全て出て、嘘が全く付けないタイプに違いない。


 「…ユウ、今日の晩御飯は君が持ってきてくれないか。まだ話したい事があるんだ」

「…?勿論良いよ」


話したいことって何だろうか…あ!そういや家とかまだないから、それ関連の話とか…?何のお金も持っていないから、給料を前借りしたりすることって可能なのだろうか…?

なんて現実的なことを考えていると、いつの間にかミューロとアレンは居なくなっていた。

 残されたのは、俺と料理長であるミューロだけである。


「王様さっそく、おめえさんの事連れ込むみたいだな~~!やるぜ~~~」


「…?何でですか?話、するだけですよね…?」


「いやいやいや~~、一目惚れって言ってたじゃないか!!」


「あははは。あれには俺も驚きましたけど、よくよく考えてたら多分、金目鯛の煮付けに惚れたって事ですよ!!!アレンの言い方って紛らわしいですよね!!流石は王様って言われるだけの事はありますよね~~~!!キザ過ぎますよ!」


「…お、お前、色々と言いたい事はあるが、あのお方は本当に王様だぞ。」


「………へ?」


「このにゃんにゃん王国を収めるトップだ!!正真正銘の王様だ!!」


ー嘘…。ただのあだ名だと思ってた…。だって、あまりにもフランクな感じだったし。俺が思う王様って偉そうなイメージだったし…。


「こりゃ王様は苦労すんな~~~~。落とすのベリーハードモードだぜ~~~」


ミューロが何か隣で言っていたけど、俺には王様ショックで何も聞こえない。


 どうしよう、俺…王様にアレンとか呼び捨てにしちゃったよ!!!!!

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