第37話 レア魔物討伐でお宝ゲット!

 なんてこと。ブーツだけじゃなく、ピアスと指輪が特別だってことにも気づいたなんて。


「安心して、盗もうだなんて考えてないわ」

「……信用していいのよね?」


 私は念のため聞いてみた。


「あなたの装備を盗んだら、命がいくつあっても足りないから」


 彼女も諦めたような口調で話した。私の強さは嫌でもわかっているみたいね。


「エルフの冒険者って、あなた以外にいないの?」


 私は話題を変えることにした。


「もちろんいるわよ。だけど、エルフ族はしきたりが強い種族だから、基本里から出ないエルフがほとんどよ」

「あなたは例外ってこと?」


 彼女は若干渋い顔を見せた。


「……冒険者になるエルフは世界を旅したいから、という理由で外の世界に出たがるけど、私は違うわ」

「違うって、何か別の目的があるの?」


 彼女はすぐに返事をしなかった。ちょっと暗い感じの顔を見せる。


 もしかして、聞いちゃいけない感じのことを言ったかしら。


「ごめんなさい、答えづらかった?」

「……お金が必要なのよ。それも大量に」

「へぇ、どのくらい?」

「……百万くらい」


 ボソッと言ったその言葉に私は思わず耳を疑った。


「百万!? 百万ゴールドってこと!?」


 私が聞き返しても、彼女は頷かなかった。


「……ごめんなさい。やっぱりあなたに話すようなことじゃないわ、今の話は忘れて」


 無理矢理話を終わらせようとした。余計に気になる。


 でも詮索しようとした私も私ね。あんまりプライバシーに踏み込むのは駄目、公爵令嬢時代に教え込まれたんだっけ。


「わかったわ。でも、助けが必要なら遠慮なく言いなさい」

「ありがとう、その気持ちだけ受け止めておくわ」


 そのまま歩き続けること三十分が経過して、目的地であるキノエ海岸に着いた。


 昨日来た時と全く変わらない風景だ。相変わらず海風が気持ちい、海水浴したい気分だわ。


 スライム退治が終わったら、海水浴でもしようかな。でもすぐに、魔物の気配を感じた。


「……近いわね」

「そうよ。ほら、あそこの岩礁見て」


 ウィンディが指差した先を見ると、水面からいくつも岩が飛び出した岩礁が見えた。


 波が押し寄せていただけど、特に何もいないように見える。魚が数匹飛び出していた。


「ただの魚?」

「違うわ、よーく見て」


 その直後、飛び出した魚が何かに捕えられた。岩と岩の隙間から飛び出したのは、青色のロープだ。


 でもロープじゃなかった。魚はぐるぐるに巻き取られ、やがて岩と岩の隙間に吸い込まれた。


「今のは?」

「あれが討伐対象よ」


 岩の一部が崩れ落ちた。そこから出てきたのは、粘々の液体の塊だ。さっきのロープと同じ青色、やがて岩全体を覆いつくすほどの大きさまで膨れ上がる。


「普通のスライムじゃないわね」

「その通り。正式名称はアクアリウムスライム、Aランク魔物だけど、このキノエ海岸にだけ出現する超レアな個体なの」

「なるほど。確かに厄介そうね」


 体の大きさもさることながら、その見た目通りスライムということもあって、魔法攻撃以外だと対処が難しい。


 でもただの魔法でも駄目そうね。理由はあのスライムの体の輝き方にある。


「昔教わった知識だけど、スライムは粘液の表面の輝き方がいいほど、魔法防御が高いって聞いたわ」

「その通り、よく知ってるわね」


 あのスライム、太陽光の反射が凄い。これはただの魔法攻撃でも通用しないわ。


「でも、あなたなら弱点が突けるから関係ないわ」

「なるほど。確かにそうね」

「因みにあいつの弱点は雷よ」


 雷か。ならばさっき見せたライトニングバレットの出番ね。


 威力の調整が難しいけど、奴の魔法防御の高さなら、手加減しなくていいかも。


「じゃあ行くわよ!」

「ちょっと、さすがに手加減して!」


 ウィンディが忠告しても遅かった。すでに私の人差し指から、雷の弾丸は発射されアクアリウムスライムに直撃した。


「……あれ? まさか効いてない?」


 アクアリウムスライムは全く動かなくなった。様子がおかしい。


「違うわ。多分、一撃ね」


 直後、アクアリウムスライムの体がぶるぶる震えたかと思うと、なんと一気に破裂した。


 破裂してスライムの肉片は四方八方に飛び散った。でもその中に、キラキラと妙な色に光る破片も混じっていた。


「もしかして宝石?」

「違うわ。あれがさっき言ってたコアよ」

「え? あれがコア?」

「もう、だから手加減してって言ったのに」


 ウィンディの意図がやっとわかった。ライトニングバレットでコアがバラバラに砕かれたんだ。


「もっと早く言ってよね」

「そうね。まぁ、バラバラになっても価値はあるから、回収しましょう」


 岩礁のそばまで歩こうとしたけど、濡れるのが嫌だとウィンディが風魔法を起こし、水面を押し上げて道を作った。


 浅瀬だったから、そこまで深くなかった。岩礁の周辺に散らばったコアの破片を一通り拾って、砂浜まで戻った。


 コアの破片をよく見ると、かなり濃い青色を呈していた。公爵令嬢時代にも、こんな濃い青色の宝石は見たことない。思わず見とれてしまった。


「綺麗……宝石商に売ったらかなり金になるわね」

「そうよ。多分、一万ゴールドはくだらないわ」

「一万!? 凄いわね、この大きさで?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る